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クズ

ドンドン

ドンドン

朝っぱらからドアを叩かれていい迷惑。

こっちはミツキちゃんを隠すのに必死で対応できないって言うのに。

仕方ない。ここは寝ぼけた振りでもするか。


ドアを少しだけ開け光だと確認。

朝から騒がしいのは勘弁してよと不機嫌顔で対応。

「おい元気大変だ! 」

「どうしたんだよ光。まだ休み時間だろう? 」

「寝ぼけるな! 今は一大事なんだ! 」

血相を変える。何かあったのか? それはたぶんミツキちゃんのことだろうな。

「ごめんごめん。でも眠くて。昨晩は雪女の幻影にやられて寝不足なんだよ。

お前んところにもお邪魔しただろう? ほらドアを叩いてさ」

寝不足で感情を込められない。でも恐怖と驚きはとんでもないものだった。


「いなくなった! 」

「そうそう。朝になるといなくなるもの。意外にも臆病なのかもな。

きっと朝日が大の苦手なんだろう。正体は読売かネット民だろう」

「いやそうじゃなくてさ。お前には言ってなかったが…… 」

「僕も言ってなかったが実は家も…… だって学校の先生がうるさいんだぜ。

お前は気にしないだろうがそれくらい読んでおけって」

もう高2だから仕方がない。どうせ光の奴は言われても無視しただろうけど。

僕は従順な第三の山田だから。受験のためになると言われたら一応は揃えるのさ。


「黙って聞け! いいか。妹がいなくなった! 」

ようやく言えましたね。偉い偉い。でもそんなことは言われなくても分かってる。

僕だってお前からどうミツキちゃんを守るか考えてるんだからよ。

今この状況で見つかったらお終いだ。

でも反応が薄いと逆に疑いを掛けられるし…… 今回だけはバレてはいけない。

「ええって? ここはスキー場近くの旅館。寝ぼけてるのはお前の方だろう? 」

「違う! 妹だ! いなくなった! 」

「妹ってミツキちゃん? うんうん。かわいいよね」

つい褒めてしまう。こうしておけば不機嫌になることはない。

本心かと言えば本心だが妹思いの奴の前ではふざけといた方が安全。

まだ奴のミツキちゃんへの想いを確認してないんだからな。


「そうだミツキだ! どこに行ったか知らないか? 」

姿を消したミツキちゃんを探しに来た。心配してるのは見れば分かる。

それなのに僕ったらふざけてばかり。悪い人間さ。

これではクズと思われても仕方がない。でもクズはクズでも守るべきものは守る。

親友関係も恋愛関係も壊したくない。うーんやっぱり自分勝手のクズだな。

自覚があるからいいと言うものではない。ただ罪悪感に苛まれている。

こんなことをしてていいのか? 続けていいのか? 迷いも当然ある。

第三の山田は実のところただのクズでした。


「少しは落ち着けって! ほら深呼吸」

「どう言うことだ元気? ミツキはどこにいる? 」

「いやそもそもミツキちゃんは初めからいなかった。合宿には姿を見せてないぞ。

どう考えても今は家にいるだろう。まだ寝てるさ」

「家にはいない! 連れて来たんだってば! 」

「嘘だろう? だったらなぜ黙っていた? 」

「恥ずかしくて…… 妹を合宿に連れて来るなんてさ」

「だったら連れて来るなよ! もう意味が分からん! 」

「いいから部屋を見せてくれ! 」

そう言うと強引に中へ。


「待てって! 」

まさか気づかれた。だがここで下手な言動はできない。

一発で気づかれる。目だって動かせない。視線で居所を特定される。

ここは冷静にただ奴の後を追うだけにしよう。

「ミツキ! おいミツキ! 」

「待てよ! ここにいるはずないだろう? いたらさすがに分かるっての」

どうにかしないといけないがどんどん押し入れの方へ。まずい。まず過ぎる。

だが声は出せない。出せば緊張と焦りで声が裏返るに決まってる。

嘘を吐き通すのは得意じゃない。変なプレッシャーに押し潰されてしまいそう。


「元気では気づかない。だから探しに来たんだろうが! 」

押し入れの引き戸に手を掛ける。

どうする? まだ僕のことを信用してくれる親友を欺くのはもう無理だ。

ここは潔く謝ろう。そして許しを乞う。それしか方法がない。

押し入れの襖を豪快に右から左へ引く。

うん。これですべてお終いだ。友人関係も恋愛関係も今日まで。

押し入れ開けるとそこには天女が…… あれいない。ただ予備の布団があるだけ。

ミツキちゃんは隠れてない。するとどこへ?

まさか消えた? こんな短時間で失踪したとでも言うのか?


「ここにはいないか。元気を心配してたからてっきりここに隠れてるとばかり」

「とことんシスコンだなお前も。心配のし過ぎだよ。

かわいいからなミツキちゃん。でも大丈夫だって」

「違う。最近様子がおかしくて。今回のことだって前日に勝手について来るって。

それで慌てて手配したんだ」

「おいおい否定するなよ。兄妹でそう言う仲なんだろう? 」

つい踏み越えた質問をしてしまう。冗談のつもりはない。

今ならきっと奴の本心が聞ける。それは僕たちにとっても悪いことじゃない。

関係がはっきりしないと前に進めない。

「ははは…… 元気が馬鹿言いやがって! 仮にそうでも言えるかよ! 」

どうやら半分悪ふざけで半分本気なんだろうな。凄い複雑。それでどっちなの?

やはり光にもミツキちゃんが。当然ミツキちゃんにも光の存在が影響している。

でも兄妹だから…… それが言い訳になるのか?

後は互いの気持ち次第のような気もするが。でも僕には関係するけど関係ない。


「よし分かった! お前は大田原さんのところで事情を説明して探してもらえ。

着替えたらすぐに捜索に向かう」

「ありがとう元気! 」

「気にするな! 早く行け! 」

こうしてミツキちゃん大捜索が始まった。

押し入れにいなければこっちとしてもお手上げ。どうしよう?


               続く

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