告白
目の前には白い衣を纏った少女。
地元の爺さんから聞いたこの地域に伝わる雪女と特徴が一致。
まさかまさかの雪女?
「酷い…… 何でそんなこと言うの? 」
あれ…… 雪女が堪えてるぞ。だからってここで気を緩めては連れて行かれる。
何の根拠もないが感覚で。
ここは心を鬼にする。優しくすれば連れて行かれるからな。
でも鬼か…… 雪女より酷い。
「僕の知っているミツキちゃんはもっとかわいいんだって! 純粋で天真爛漫」
ミツキちゃんを褒める気はない。ただ雪女がどう言い訳しようと抵抗するつもり。
無駄な抵抗でもやってみないと分からない。
絶体絶命のピンチにどう立ち向かうか? 第三の山田の真価が問われる時。
「これが私なの…… 」
「もっときれいで素敵な女性で…… もしかして本物のミツキちゃん? 」
「本物に決まってるでしょう? 元気なんか大っ嫌い! 」
ダメだ。悲しむ顔は見たくない。抵抗は諦めよう。男らしく散るのも悪くない。
「ごめんミツキちゃん。正直に言うと僕も大ってほどじゃないけど…… 」
「そんな元気…… 私どうしたらいい? 」
「ははは…… 冗談だって。大好きに決まってるだろう! 」
まずい…… ついに告白っぽいことをしてしまった。
勢いって怖い。ほぼミツキちゃんが言わせたようなものだけどね。
「元気! 」
「ミツキちゃん…… 」
まずいな。本物だった場合の対策を何一つ考えてなかった。
いや本物でいいじゃないか。少なくても雪女ではなかったのだから贅沢言えない。
しかしなぜここにミツキちゃんがいるんだ? ここは山奥のスキー場近くの旅館。
こんなところにメンバーでもないミツキちゃんがいるだろうか?
あり得ない! もしかしたら雪女よりもあり得ないかもしれない。
雪女は伝説上の生き物で誰もその正体を知る者はいない。
だが雪深い山奥の旅館に現れても不思議はない。そんな伝説や昔話もある。
しかしミツキちゃんは違うよな。どうやってここに来たんだ?
想定外。実際は今週も来るかもと頭の片隅には入れていたがあまりにクレイジー。
しかしどこかで来て欲しいと願っていた自分がいる。否定はできない。
おかしいけどすべて嘘偽りのない真実だ。きっと激しく求めていたんだろう。
でもそれを言えば付け上る。自分がいないとダメと勝手に思い込むに違いない。
そうなったら後が面倒臭いことになる。
「悪い。つい恥ずかしくて…… 」
「もう元気のくせに生意気! 」
そんな風に涙を流す。嬉し涙だよね?
悔し涙だと僕の立場が危ういことになる。
でも二人が結ばれたとしても問題は光だ。奴の許しがないと何も進まない。
しかしこれで本当に良かったのか自分でも分からない。強引に押し切られた形。
まあいいか。何とかなるでしょう。
「まさかミツキちゃんは俺たちの後をつけて来たのか? 」
「うん」
「でもどうして? こんなことしなくても一緒に…… 」
「元気が心配だったから! お兄ちゃんには言ってるはずだけど」
ミツキちゃんはショックが隠せないのか俯いてしまう。
「まさか光の奴は僕を警戒して。妹を取られたくないと思ったのか? 」
「さあ…… でもそんなことはどうでもいいでしょう? 」
「どうでもいい? 何を言ってるんだミツキちゃん! 」
厳しい態度で接する。そうしないとまた無茶なお願いされそう。
そろそろ寝たいんだけど。早く自分の部屋に大人しく戻ってくれると嬉しい。
それがお互いの為さ。
「ねえ元気もそう思うでしょう? 」
甘えるミツキちゃん。本物だ。やっぱり雪女はおかしいなと薄々思っていた。
じっくりミツキちゃんを見る。
うん。もう怖くない。いつものかわいいらしいミツキちゃんだ。
夜になると不機嫌になるから困る。でもそこも個性と捉えてもいい。
「元気! 会いたかった! 」
「それは僕だって。君が伝説の雪女ではないと分かって凄く抱きしめたくなった。
この思いは嘘や偽りなんかじゃない! 僕には雪女ではない女性が側に必要だ!」
告白っぽいことを言えばまた誤解されるのについ優しい言葉を掛けてしまう。
彼女の為にももう少し厳しくすべきだろうがそれは難しく現実的ではない。
でもどうしよう? このまま彼女をこの部屋に置いておけないよな。
奇跡の再会を喜んだことだしもう帰ってもらいたいが彼女はそんなに甘くない。
「ほらもうこれ以上はいいでしょう? 」
そう言うと服を脱ぎだす。と言っても上下の白の雪女スタイル。
まさか伝説の雪女もミツキちゃん。いや待てよ。もしかして雪女の一族だとか?
あり得なくない設定。でもそれだとホラーかファンタジーだし。
「そのパジャマかわいいね。何で和装なの? 」
とりあえず褒めておいておかしな服を選んだ理由を聞き出す。
「これはママからのプレゼント。誕生日に買ってもらった大切なもの」
変なセンスしてるなと思ったらそう言う裏事情が。
だったら雪女スタイルは偶然に過ぎないのか。
「寒過ぎない? 真冬だよ? 」
何とか脱ぐ手を止めようと質問する。まだ心の準備が。
「寒いかな…… うんちょっとだけ寒い。部屋からそのまま出て来ちゃったから」
「まったくガキじゃないんだからさ。ああガキか…… 」
どうにか冷静さを失わないようにする。今はただゆっくり寝たいだけ。
四週連続のミツキちゃんは贅沢だけど勘弁。そんなこと言えるタイプではないが。
僕は第三の山田なんだから。仮に碓氷さんでもこれはまずい。やってはいけない。
「元気…… 」
そう言うだけで怒らない。どうしたんだ?
煽って怒らせようとしたが無理だった。
まさかミツキちゃんは僕なんかよりもずっと大人なのか。
そうすると僕はただの情けない男になってしまう。それは嫌だな。
「どうした。温めてくれとは言わないのか? 」
うわ…… なぜ思ってもみないことを言ってしまうんだ?
もしかして自分は思った以上に馬鹿? まずい展開。
ミツキちゃんの方が大人に見える。
「だって元気は絶対に受け入れてくれるもの」
根拠のないことを言う。受け入れるはずないだろう?
僕はただゆっくり寝たいだけ。
そう言って大人しく自分の部屋に戻ってもらうつもり。
この後寝れるのかな。贅沢過ぎる悩みを持つ第三の山田でした。
続く




