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雪女伝説

光の好意で個室に泊まることに。

どうせ一晩だけなんだしそんな贅沢しなくてもいいんだよな。

それよりももっと別のところにお金を使って欲しい。

一人で部屋に泊まるなど孤独で最悪。

何だか慣れない和室の臭いと布団と枕でなかなか寝付けない。

どうしよう? またトイレに行きたくなったぞ。

おかしい? さっき行ったばかりなのに。なぜこのような感覚がある?

もしかして緊張してる? 雪女が来るとまさか信じてるのか?

いやあり得ない。いるはずないんだ。雪女など幻想でしかない。

たとえいたとしてもここにはいないさ。

いや仮にいても今はいないさ。タイミング良すぎるだろう? 悪い夢でしかない。


慣れない和室と言っても僕は別にマンション暮らしの金持ちじゃない。

だから前の家には和室があった。逆にだからこそ苦手としている。

さすがにホテルで洋室ならこんな感じにならなかったはずだ。

トイレは我慢するか…… 健康に悪いので我慢せずに行くか。

快適な室内なのに独特の臭いのせいか夢の世界に誘わない。


それからどれくらい経っただろうか?

眠れずにいたら意識を失ったような。ただの勘違いか?

トントン

トントン

何度も何度も叩く音がする。しかし呼びかけても反応がない。

思い切って開けるが人はおらず気配もない。あるのは足跡のみ。

嘘だろう? これは最悪だ。雪女やお化けでなくても誰かしら意図を感じる。

真夏でもないんだから肝試しの気分でもない。

ここはゆっくり寝て気持ちよく朝を迎えたい。

今はきれいな女性がどうとか誰かと何をするとかじゃない。

ただ何もないつまらない日常を送りたい。ただそれだけ。

欲なき者の願いを聞いているなら叶えてください。

恐怖しようと現実は逃れられない。もはや一人で対処するしかない。

仲間を起こす訳にも行かない。宿の者を呼ぶのも悪い。


仕方なく勇気を振り絞って足跡を探ると裏口へ。

裏口は鍵が掛かっておらずその足跡は外へと続いていた。

するとこの足跡の主は侵入して靴のまんま。あるいは足を拭かずに素足で。

その足跡の主の精神状態を考えればこれ以上の追跡は断念すべき。

しかしプライドも意地もある。ただの悪ふざけで震えてここで止まれば笑いもの。

朝には情けなく腰を抜かし泣いていた臆病者として笑われるだろう。

仕方ない。もはや外へ行き勇敢であることを証明しよう。

「今行くぞ雪女! 」

こうして名もなき男は夜の闇に消えて行ったとさ。

お終い。


まずい。寝れないものだからあの爺さんのホラ話を思い出してしまった。

どうしてこんなに鮮明で事細かに覚えてるのか?

集中力のない僕は先生の話だって怒られているのに。

適当に聞き流したお爺さんの話を思い出せるのか?

不思議だ。耳に残りやすいんだろうな。

嬉しくない。こんなどうでもいいことを覚えてどうする?

もっとテストの時にその力を発揮できれば。

とりあえずトイレを済まして水を一杯。これで寝れるさ。

そして眠りについた。

それからどれだけ経ったか?


ドンドン

ドンドン

明らかに起こしに行こうとする悪意ある者の攻撃。

まずい。これは殺される。寝ていよう。朝になればきっといなくなるさ。

それが伝説だろう? 雪女が早朝にいても恐らく怖くない。

しかしノック音はどんどん大きくなる。このままでは周りに迷惑になる。

左隣は大田原さんだが右隣は一般客。

もしこのまま放置しておけばこちらに災いが降り掛かる。

もはや寝てられない。居留守も無理。第三の山田だから臆病なのさ。


「もう何の用ですか? 」

寝不足の目を擦り文句を言いながらドアを開ける。

これが雪女等の化物だろうと人間だろうとまともじゃない。

そんな奴を招き入れるのは常軌を逸している。しかし入れないと騒音トラブルに。

もはや選択の余地はない。自分が間違った選択をしてると分かってる。

でも引き返せない。ここは勇気を振り絞って。


恐る恐る開けるが誰もいない。気配さえ感じない。

これってどこかで体験したような聞いたような。まるでデジャヴ。

どうする? どうすればいいんだ?

うん? 明かりが見える。非常階段のところから明かりが見える。

すると迷惑な訪問者はここからやって来て去って行ったことになる。

非常階段当たりから外を眺めるが暗くてまったく。音も聞こえない。

実際は風の音が微かに聞こえる。それとどこからか犬の遠吠えが聞こえる。


どうする? 追いかけるか? ははは! それは間抜けのすること。

僕は慎重な男で第三の山田さ。ここは戻るのが正解。

急いで部屋へ。念のためにお隣と光の部屋にノックをしてみるが反応がない。

どうやら二人が用があって尋ねて来たのではないことが分かった。

さあ切り替えて自分の部屋に戻ろう。

しかし非常時だと言うのに二人とも反応さえしない。

どうも危うい感じがしていけない。明日はその辺りをきちんと注意するかな。

それが次期会長の役割でしょう。


あれ…… 慌てていたから鍵を掛けずに飛び出したらしい。

情けないな。僕としたことが何をやっているのか?

動揺していたんだろうな。でも何もなかったしきっと幻聴でも聞いたんだろう。

では改めて寝るとしますか。

うん? 誰かいる? 

まさか…… まさかの雪女? いやそれはあり得ないとしても誰かいる。

ここは大声を出して逃げないといけない。しかし無理だ。

大声どころか声の出し方を忘れた。どうやって声を出していたんだ?

僕ってどんな風に叫んでいたっけ? 声がまったく出ない。

それだけではない。急いで逃げるべきなのに足が石のように重たい。

いつの間にか汗まで。これは重症か? どうすればいい?


逃げるに逃げれない状況。やはり個室はダメだったか。


               続く

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