雪女が来る!
スキー合宿。
光と大田原さんと三人でスキーを目一杯楽しみ充実した一日となった。
ただ気になることが一つだけ。光についてだ。
どうも奴が何か隠しごとをしている気がする。
大田原さんいつものことだと取り合わないが何だかおかしい。
一体光は何を隠しているのだろう? 言ってくれればいいのに固く閉ざす。
気になって仕方がない。まさかとんでもない秘密…… 隠しごとしてるのでは?
明日にまで影響しなければいいのだが。
「贅沢にも個室にね。でも高かっただろう? 」
後払いだから跳ね上がってはシャレにならない。
今を楽しめたらと呑気に笑ってれば馬鹿を見ることになる。
「まあな。お前と二人でもよかったんだけどさ意外にも割引してくれたから。
思い切って三人別々にしたんだよ。快適な旅を提供するのが俺の役目さ」
また格好つけて。そこまで言うなら個室を受け入れよう。でも一人は嫌だ。
すべて奴に任せてよかったのかな? 僕って寂しがり屋なんだよね。
初めてのところでは枕を替えただけで眠れなくなるほどの神経質だし。
だからか疲れていても一人で寝るのに時間がかかる。
できるなら気の知れた親友と楽しく話しながら寝たい。
ベッドを勝手に占領されるのも嫌だけど一人はとにかく嫌なんだよな。
自分でも我がままだとは思うけれどこれはもう仕方がない。
神経質なだけでなく臆病なんだろうな。
「それで今晩訪ねてもいい? 」
「ふざけるな! 俺を寝不足にさせる気か? 」
そうは言うが僕だって辛いんだって。させる気かさせないからならさせるだ。
だってそれが旅の醍醐味じゃないか。なぜ大人しく寝ないといけない。
ふざけるな! 冗談じゃない!
「ならノックをしても? 」
「するな! 開けないからな! 」
なぜか本気で嫌がってる。まさか怖がり? それとも隠しごと?
まさかまさか僕を嫌がってるとか? それだったらショックだな。
「よしならば寝る前にこの辺りに伝わる…… 」
「やめろ! 寝れなくなるだろうが! 爺さんの話で充分だって! もういい!」
うわ…… 本気で怒っちゃったよ。不貞腐れて横を向いて寝てしまった。
我がクラブの弱点が判明。
大田原さんは寒がり。今の季節は特に酷い。
僕は高所恐怖症。リフトが怖くて仕方ない。それ以外にも多数の弱点アリ。
光は怖がり。怪談は大の苦手らしい。
それもすべて地元の爺さんが悪い。
恐怖の雪女伝説をさも真実かのように臨場感たっぷりに語るんだから。
大田原さんが嫌がるのは分かるけど光までとは意外だった。
「おやすみ光。雪女には気を付けるよ。コンコンされても絶対に開けるなよ? 」
「こら元気! いい加減にしろ! 」
起き上がって本気で向かって来る。
「冗談だって。それよりお前隠しごとしてるだろう? 朝から変だったぞ」
光の弱みを握った。後は奴の秘密も探るとしよう。
これが何の役に立つかは不明だが面白そう。
「それは明日の朝に言うさ。ちょっと恥ずかしいのと言えば気にしそうだから」
どうも僕のためらしい。それは立派な心掛け。だけど本当か?
口を閉ざせばいくら粘っても無駄。光はそう言う奴だ。
仕方ない。ここは早く寝るとしますか。
ガチャとしても一向に開く気配がないドア。故障か?
おかしいな。部屋に鍵が掛かってるみたいだ。どうしたんだろう?
これでは入れないじゃないか。
「もう何ですか会長! 」
大田原さんがパジャマ姿で迫って来る。
「それが…… ここって僕の部屋じゃないの? 」
「もう隣でしょう? あの人から聞かなかったの? 」
「ははは…… 適当に聞いてたから。勝手に隣だとばかり」
「言い訳はいいですから早く締めてください! 」
どうもイライラしてるよう。ただの部屋間違いはよくあることなんだけどな。
「そうだ。一緒に寝ようか? 」
「はあ何を言ってるの? 」
まずい。怒らせてしまった。別にそのつもりはまったくないんだけど。
ただ奴に追い出されて寂しいから偶然の出会いについおかしな提案をしてしまう。
偶然と言うかただの部屋間違い。酔ってもいないのに僕は何をやってんだか。
光と違って女の扱いは苦手だからな。無視されるか怒らせるか。
そう言う意味ではミツキちゃんは貴重な存在。お互い分かり合ってる感じがする。
おっと…… スキー合宿まで来て親友の妹を思い出してどうする?
これではまるで求めてるみたいだ。離れると寂しくなるのか? 今が寂しいから?
どの道あのミツキちゃんの笑顔に癒されたい。うーんただの欲求不満だったか?
「それじゃあ雪女に気を付けておやすみなさい」
後輩を気遣うのも会長としての役割。でも光主導だから奴がすべきこと。
今回の合宿のリーダーは光。でもいい加減で適当だから迷惑はこっちが被る。
あーあ空しいな。せっかくの合宿で一人っきりは堪えるぜ。
今何をしてますか碓氷さん? 僕と一緒に…… 言えたらな。
言えてもいないと意味ないけどね。
ばたんとすると一人っきりの世界に。
テレビは…… ロクなのやってないし。何もする気がしない。ここはもう寝るか。
旅館だから困る。和式でしょう? 畳は嫌じゃないがベッドに慣れてるから。
お茶は美味しいがすぐトイレに行きたくなる。そうすると夜起きることにもなる。
普通ならそれもいい。しかし爺さんが雪女伝説を事細かに話すからつい信じる。
上手いんだよね。嘘だと分かっていてもつい聞き入ってそのまま没入。
雪女なんていないと思うがここが雪降るゲレンデ。冬の雪山。
地域の伝説ぐらいあっても不思議じゃない。
だがどうせ目撃証言などいい加減なものさ。
慣れない和室の臭いと布団と枕でなかなか寝付けない。
とにかくおやすみなさい!




