一緒に寝よう!
一泊二日のスキー合宿。
光の様子どこかおかしい。挙動不審だ。
大田原さんはいつも通りでしょうと言うが僕には分かる。
何か隠しごとしてる時の奴の言動。下手な笑いで誤魔化すのはそれだけ重大。
今僕たちはクラブ合宿に来てるのだから余計なトラブルはできれば避けたい。
一体奴は何を隠してるんだろう? 早く言ってもらわないと困るんですけど。
バイキングで腹を満たす。
「おい光! 少食だな。それだと全然元が取れないぞ」
リフトではずっと奴にしがみついていた。情けない姿を見せてしまった。
イメージダウン必至だが仲間思いの光は言い触らしはしない。紳士な一面がある。
と言うよりも人を落とし自分が目立とうとするのが性に合わないんだろう。
とにかく恥ずかし過ぎる思い出は早いところ忘れるのがいい。
「そう言う元気は取り過ぎだって! もうグチャグチャじゃないか。
どうしてきちん取り分けないんだよ? 」
まるで小学生みたいと嫌味を言われる。
どこが? まだ小学生の方が話もきちんと聞くし改善の余地がある。
「食べれば同じさ。ワイルドだろう? 」
「もう零れますよ! 」
堪らず大田原さんが注意する。
「ははは! 大丈夫。心配ないって」
隙を見せているとスキー客がぶつかって来る。
避けようと思いっきり引き寄せた勢いで盛大に床にぶちまけてしまう。
もったいない。一度落としたものを拾い食いする訳にも行かない。
いくらバイキングでもショックが大き過ぎる。どうやら今日はついてないらしい。
これも運命。諦めるしかない。ぶつかってきた客は何事もなかった様に味噌汁へ。
わざとぶつけてやろうかと思ったがさすがに周りの目もあるので我慢。
旅館のスタッフに冷たい視線をもらいながら懲りずに食べ放題で暴飲暴食。
これで嫌なことは忘れよう。そうさ今日はいつにもましてついてないだけさ。
「どうしたんだよ光? らしくないだろう? 何を隠してる? 」
昼間から。それこそ待ち合わせの時だっていつもと違った。
「別に何も…… ただ思ったより予算が嵩んでさ」
そんな風に適当に誤魔化そうとする。
確かに今回の合宿代は後払いだからいくら請求されるか気にはなっていた。
だけどそれよりも奴の動揺ぶりが気になる。何と言ってもらしくない。
もっと余裕があって適当に切り抜けるところなのに。
「本当にそれだけか? 」
「そうだよ元気。しつこいぞお前」
「本当か? 嘘ついてない? 」
「大げさだな。嘘なんか…… 」
そこで少しだけ言い淀んだ。どうもとんでもない隠しごとをしてるよう。
要するに奴は嘘を吐いてることになる。自分に自信がないんだろうな。
まあここまで頑ななら仕方がない。
「もう食えないって! 光食ってくれ! 」
つい取り過ぎて余らせてしまう。
初めは腹の膨れぐらい気にせずただひたすら中に入れていた。
それがお腹いっぱいになってもう動けなくなるんだからどんだけ食ったのか?
自分でも限界が分からない。だからこう言うことは最後まで食ってみるしかない。
本当にワイルドだろう? もう誰にも第三の山田とは言わせない。
「なあちょっと話が…… 」
どうやら決心がつかないよう。可哀想に。
スキーを終えてすぐに温泉へ。これがスキーの楽しみの一つ。醍醐味だろう。
ただ恥ずかしいので奴が忙しい時にこっそり入った。
意識してるつもりはないんだけど光に見られては恥ずかしくて堪らない。
後はゆっくりして寝るだけ。
「おやすみ元気! 」
「ああまた明日…… それでお前は一体何を隠そうとした? 」
答えてもらおうと自然に迫るが何でもないと言って立ち去る。
どうやら隠してることは奴に関することらしいな。
「おやすみ大田原さん! 元気もな」
こうして昼間からの違和感を残したまま別れる。
本当は三人で寝れる場所を用意してもらった。
しかし残念なことに大田原さんが拒否したよう。
これはどうしたらいいだろうか? 大人しく部屋に戻りますか。
でも心配だし寂しいから光の部屋へ。
「なあ光。一緒に寝ようよ」
ついいつもの癖で光に甘えてしまう。
「おいおいふざけるなって! 俺は自由がいいんだよ」
別に痴話どころか単なる喧嘩もしてない。
ただ奴が一緒に寝るのを避けるから嫌がらせでやってるだけ。
それ以上のことではないがどうも光の方が何かを感じ取っている。
「元々無理だって言ってるだろう? 三人で寝ようと言えるか? 言ったけど」
どうやら大田原さんに確認を取ったらしい。
律儀と言うか間抜けと言うか何も考えてないよな。
「それで何だって? 大田原さんはどんな風に断った? 」
興味がある。デリカシーがないから一発喰らったか。それはそれですっきりする。
あれ…… 親友にこんな感情はおかしい? 僕たち本当に繋がってるのか?
「それが一言も発さなかった」
「だったら良いってことだよな? 」
「そうじゃない。この怒りを見ろと言ってるようだった。
全身から溢れ出るオーラにもはや何も言えなかった。
ほら俺がすべて決めたから。責任は俺にあるのさ」
格好つけるが間抜けな質問して怒らせただけだ。
それで静まって参加拒否されずに済んで良かった。
これは動かずの勝利って奴だろう。もし感じ取れずに聞きでもしたら終わってた。
それは大変恐ろしいこと。想像もしたくない。
「それで大田原さんを怒らせたから個室を用意したと? 」
「正解! 俺だってゆっくりしたいからさ。
特に寝る時は人の気配があると寝れないんだ」
神経質なところがあるんだな。碓氷さんに重要情報として売り渡すか?
いやいやそんな風に冗談でも言ってはいけない。
決して二人を近づけてはならないのだ。
続く




