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別れのキス

どうしてここにミツキちゃんがいるんだよ?

僕は碓氷さんを追いかけて来たのに結果ミツキちゃんだからもう何が何だか……

確かにミツキちゃんは僕にはもったいないくらい魅力的な女の子だ。

なぜか話が合うし相性もいい。

僕だって何のしがらみもないただの男女の関係であれば深く愛していただろうさ。

でも無理だ。相手は中学生で親友の妹だからな。

手を出せば自分の立場が危うくなる。当然親友を裏切れない。


それに偶然の再会なら運命的と捉えることもできるだろうさ。

でも違う。ここにミツキちゃんがいてはいけない。

このベンチは僕と碓氷さんの思い出だ。勝手に入って来られても困る。

この温もりも匂いも思い出もすべて僕と碓氷さんであってミツキちゃんではない。


碓氷さんは追跡者だと思っていただろうな。でも本当の追跡者は僕だ。

すべてを監視する支配者と言うところだろうか? 

碓氷さんのターゲットの光は何とミツキちゃんからもつけられていた。

今追跡者二人が思い出のベンチで密会する。


「そうだ。お兄ちゃんと二人っきりで週末にスキーに行くんでしょう? 」

とんでもない聞き違いをする。きちんと訂正しないと大変なことになるぞ。

まさか今週もお邪魔する気じゃないだろうな?

四週続けてのミツキちゃんは嬉しいけど疲れるよ。ここで釘を刺しておかないと。

「違うって! クラブ活動でスキー合宿だって。光が言ってたろ?

奴が提案して奴が勝手に申し込んだんだ。だから文句があるなら奴に言ってくれ。

僕はただついて行くだけ。大田原さんだっているから心配ないさ」

なぜこんなことまで言わないといけない? 探りを入れられても迷惑なんですが。

大体僕たちはまだ正式に付き合ってないし。告白もまだ。


「ついて来たあげようか? 」

まるで一人では不安だからと言ってるよう。舐められてるのか? 

いくら第三の山田でもそんな情けないはずないだろう?

「間に合ってまーす! 」

「ああやっぱり! お兄ちゃんが言ってたんだ。元気が生意気にも拒否したって」

どうやら兄妹の関係はまだギスギスしてないのか。

僕が思いっきり入ってきたから壊れかけてると勝手に誤解。

確かに光はそんな風には見えないもんな。でも奴は分かり辛いところがある。


「いや…… ごめん。でも予約取っちゃったから。そもそも無理なんだって。

ほらミツキちゃん…… お兄ちゃんたちの合宿について来ちゃダメだよ! 」

念の為厳しく言う。仕方ない。これはクラブ活動の一環だから部外者を誘えない。

責任だって取れないんだ。次期会長でほぼこのサークルの責任者の判断。

「元気ってば生意気! 子供扱いしないでよ! 私の体を見て興奮したくせに!」

おっと…… 怒らせてしまった。でもこれくらいはっきり言わないとダメ。

中途半端が一番よくない。

「言い過ぎたって。それに体には興奮してないかな」

大人の対応っと。これで少しは僕と言う人間を理解したか?

子供扱いするのはただミツキちゃんがかわいいから。

「嘘! 昨日は興奮して勘違いしたでしょう? 本当どうしようもないんだから。

それにその前はすべてが見たいと卑猥なことを言ってたもん」

ミツキちゃんは周りには多少人だっていると言うのに大声で指摘してしまう。

そう言うとことが子供っぽい訳で。まだ余裕でこっちのペースに持って行ける。


「勘違いだって。まあいいやもう行かないと。それで…… 」

「ううん? 」

まずい。別れのキスをせがんだら睨まれた。

「いや何でもない。またいつか」

「ちょっと! キスぐらいしてあげるって! それとまたいつかって何? 」

どうやら今日は不機嫌らしい。イライラが溜まってるのかな?

「かわいいよミツキちゃん。本当に我がままな子だ」

「ぶっ飛ばすわよ元気! その舐めた口の利き方は何なの? 」

「違うんだ。ほらもう戻らないとならないから辛くて……

今日だってミツキちゃんのことばかり。そのせいで教師に目をつけられるし」

「もう元気ったら! 」

笑顔が零れる。これはいい兆候。

実際今日はミツキちゃんからどう逃れるか考えていたからな。

四週連続はさすがにきつい。だから絶対にスキー合宿には参加させないぞ。


こうして長いキスをして別れる。

それにしてもたまたま用事があって来たなんて言ってたけど本当かな?

どうも誰かを監視していたような気がする。

それはいつものように光の後ろにいる存在。

たぶん光に近づかせないように碓氷さんを監視している。

危険行為。二人を接触させては危険だ。


それからはもうミツキちゃんと会うこともなかった。

本当は毎日だって会いたい。告白はまだでも僕たちは付き合ってるようなもの。

でも光がいてはそうもいかない。

僕が会いに行けばトラブルは必至。こちらからは会わないように決めている。

と言うかこれ以上会えばきっと僕たちは踏みとどまれなくなるだろう。

ミツキちゃんがあそこまで積極的ではこちらがどんなにかわそうと意味がない。

魅力的なミツキちゃんの虜になるのはそれほど時間の掛からないこと。

正直に言えばそうなった時が怖い。思いを受け入れる決心はまだついてない。

それはふざけ気味のミツキちゃんもきっと同じだろうさ。


勝手に人の家に侵入しベッドに潜り込んでその勢いでどうにかしようとする。

それは勢い任せであり人任せ。すべて僕に任せ自分は何も決めようとしない。

そんな情けない関係は嫌なんだ。もっと正直に正面から受け止めたい。

何てね…… 実際その場面になれば固まって冷静ではいられないだろうな。

贅沢な第三の山田でした。


                続く

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