追う者と追われる者
碓氷さん大追跡!
追跡してると予想通り光が現れた。もちろん奴は何も知らない。
この公園は奴の家から近くたまにここで待ち合わせすることも。
奴のテリトリー。毎日のように来てるのだろう。それこそ日課に。
彼女が来たのだって偶然ではないはず。毎日のように来てるに違いない。
僕は一体どうすればいい? 密会現場でも目撃しようと言うのか?
ちょっと前までハイタッチしてた彼女がこんな風に穢れるのを見ていたくない。
予想はしていたがまさかここまでの異常性を備えてるとは思わなかった。
もっとかわいいことしてると勝手に勘違いしてたが現場を目撃し衝撃が走る。
ターゲットの光は小走りで行ってしまった。どうやら目当てはいなかったらしい。
うん? ため息? 碓氷さんはどうやら奴のモデルの誘いを待っていたようだ。
するといつも奴がこの辺りをウロウロするのを知っていて張っていた?
今日のように偶然を装って徐々に距離を詰めていく作戦。
上手いやり方だけど相手が光ではそれも無駄と言うもの。
努力が報われることはないだろう。それは僕も似たようなものだけど。
光をベンチからコソコソ見てるのが碓氷さんとするとそれを見守る僕はどうなる?
なんだかおかしな感覚。分かっていたことだが辛さが増す。
なぜ光ばっかり。僕ではダメなのか? 僕では本当にダメなんですか碓氷さん?
これほど辛い現実を突きつけられる僕のことも少しは考えて欲しい。
でもそれは彼女をつけて来たから。罪深いこと。その罰を受けるのは当然。
仕方ない。僕が代わりに温めてあげるか。
それが優しさって奴でしょう。しかし決心がつかない。
ベンチの隣に座ればいいんだけどそれができないから第三の山田な訳で。
格好をつけてどうしたんだとワイルドに言えたらいいんだけど上手く行かない。
足が震え出した。さっきまで何ともなかったのに緊張がマックスに。
ダメだ今話しかけても嫌われるだけ。ここは慎重に行こう。
まずは深呼吸。そして優しい言葉を掛ける。これだけで見直してくれるはずさ。
第三の山田から昇格もあり得るかもしれない。
「碓氷さん…… 」
大声が出せない。振り絞っているのにどうしても声が出て来ない。
これは精神的なもの。せっかく決心したのに無駄だったか?
だが諦め切れずに立ち上がった碓氷さんを追いかける。
待って下さい! そう言えたらな。でもできない。
タクシーを止めたと思ったら行ってしまった。
どうやら相当用意周到。尻尾を見せない。
もはやプロの領域に迫っているよう。
その彼女に気づかれない僕の追跡術は相当なもの。
いや…… 元々認識されないのが僕こと第三の山田。
これは喜ぶことではなく悲しむべきこと。
とりあえず今日のところは追いかけるのは諦めベンチに腰を下ろす。
どうせタクシーじゃ追いつけないしね。
今さっきまで座っていた碓氷さん。当然ついてるはずだ。匂いも味もそれ以上も。
うん。これはこれで悪くない。どうして神様はご褒美を?
ありがたく受け取りたいのだがそうもいかない。
僕は変態じゃない…… と思いたい。でもこれくらい普通か?
いやよく考えたら毎日のようにハイタッチしてる。
この程度のことで人間を捨てて堪るか。ここは我慢だ。
「何だやっぱり元気じゃない! 」
まずい目撃された? いやまだ…… 妄想だけのはず。
「いえ…… 人違いです。僕はそのような男ではありません」
「何を言ってるの? 変だよ元気? 」
ミツキちゃんが姿を見せる。
ここは奴の家の近く。ミツキちゃんが歩いていても何ら不思議はない。
だがどうしても違和感がある。
なぜミツキちゃんはこんなにもタイミングよく登場するのか?
不思議と言うかもう明らか。想像したくないが恐らく奴の後をつけていた。
そして堂々と姿を見せる。僕がそこまで頭が回らないと舐めているのだ。
ではお返しにこちらから舐めてやるとするか。
「ねえ元気…… 」
いきなり隣に座ったと思ったらベンチで恋人ごっこをしようとするミツキちゃん。
抜け目がない。お前は光を探しに。そして決して誰も近づけないよう監視してた。
まあいい。用も済んだことだし帰るとしよう。
あまり遅いと心配される。しかもこのままだとこの公園で密会してたことになる。
「ねえ元気! 会いに来てくれたんでしょう? 」
「いや…… 偶然通り掛かっただけ。もう帰るところ」
格好をつけて去ろうとしたが許してくれない。
「どうせ碓氷さんの後をつけていたんでしょう? 変態ストーカー! 」
とんでもない勘違い。それではまるで僕が毎日彼女の後をつけてるみたいだろう。
今日は暇だったからつい無意識に…… でもこれでは言い訳にはならない。
「毎日ご苦労だよね」
「そんなことより今日もミツキちゃんはかわいいな」
適当に褒めておく。お洒落な格好もいいけどそのラフなのも悪くない。
うん。凄くセンスがいいや」
「ありがとう。じゃあここで始めちゃおうか」
またしてもふざける。いつもそうなんだよな。
その気もないくせにからかうから本気にした僕が馬鹿を見る。
もう少し経験があればこんなに振り回されることはないんだろうな。
「知らないぞ。もうどうなって責任持てない。だからお家に帰ろうね」
どうにか帰宅を促す。
冗談じゃない。ミツキちゃんはいいだろうがこっちは中学生に手を出す変態だよ。
おちおち道も歩けない。
続く




