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奇跡の山田

修学旅行の班決めが難航している。

男子だけの味気ない班に二十人も殺到する事態。

それだけ奏子先生の人気が高いことが窺える。

どこかの妄想家が奏子先生は男好きでスキンシップが激しいとホラを吹いたせい。

まったく何を考えてるんだか。奏子先生は気にしてないようだけど。

ただそのことが追い風になってるのは間違いない。


馬鹿なライバルを奏子先生トラップで惹きつけ素敵な女子と一緒になれたらな。

もちろん碓氷さんと一緒なら最高なんだけどこの際贅沢は言わないぞ。

三人ともかわいければそれでいい。せめて二人…… 一人だって構わない。

そう僕は欲深き第三の山田なのさ。だからって噂を流したのは僕じゃない。


かわいい子を引き寄せるにはポーカーフェイスを心掛けるのがいい。

決して顔に出さない。そうすればあちらから寄って来る…… はずないか。

近づき過ぎると火傷することだってある。

もしここで決定的なことが起きれば復活はない。それほど危険な賭け。


まずは男子だけの班を選ぶ。残りの者で男女三人ずつ六人の班決めをする。

何だか本当にドキドキする。ワクワクと行きたいが経験上いいことはない。

存在感が比較的ないのでどうしても最後まで残る。いつものパターン。

積極性も皆無なので当然と言えば当然か。どうして勇気が出せないんだろう?

一気に碓氷さんのところまで行けたらな。


碓氷さんはあれだけおおらかだから男子からの人気が高い。

僕でなくても狙ってる奴はいるだろう。班にいるといないとではまったく違う。

彩を添えるのが彼女の役割。盛り上げ役が最低一人は必要だからな。

でも僕は当然そんな失礼なことを考えてない。碓氷さん一筋。

碓氷さんと念じ続ける。こっちに来いと祈るように。

通常祈ったぐらいでどうにかなることはないが最近碓氷さんとは縁があるからな。

ただその縁こそが大問題。光を巡ってライバル関係になりつつある。

僕を避けようとしてないか心配だ。

さあとにかく手を出して彼女が掴んでくれたらハッピーエンドなのだが。

ふふふ…… 人生そんな甘くないさ。痛いくらい分かってる。でも夢見てしまう。


「はい元気君こっち! 」

ゴシップ好きの女子に無理やり連れて行かれる。確か名前は…… 

記憶力なくてごめんよ。とにかく誘ってくれた素敵な彼女に感謝の言葉を述べる。

「もう元気君ってば大げさ! 」

しかしこれで自分は最後の一人になることはない。

一番恐れていたことを回避できた。しかも彼女は間違いなくかわいい。

ゴシップ好きの困った人だけど話しやすいしな。悪くないぞ。

残りのメンバーは一体? ただそこまで登場してないよね?

だとすると新規メンバーかあるいは……


「班決めを終えたかな? 」

「はーい! 」

いつもは適当な返事をしてやる気なさそうな者たちも今日は気合が入っている。

先生も何だか楽しそう。伝染するのか?

自分はすでに目標は達成している。最後の残りものにならないことが重要。

重要だけど何だか悲しくなる第三の山田でした。


面白いことに男子は全員山田。山田三兄弟が同じ班に。これは奇跡?

どうでもいい奇跡。何一つめでたくないけど浮かれている。

「イエー! 皆ハイタッチ! 」

ハイテンションの碓氷さんが緊急のハイタッチ会を催す。

若干大丈夫かと思わなくもないがハイタッチに加わる。

夢のよう。レアなハイタッチ会に参加もそうだけど同じ班の衝撃。


さあ残りの一人は誰かな? 

何とこのクラスでも上品でお嬢様と有名な御手洗さん。

ごきげんようと機嫌がいい時は言ってくれる。悪いと睨まれるけど。

偏見だけどお嬢様って凶暴で怖い人が多いイメージ。何でかは言えないが。

上昇志向があり庶民を見下す感じ。当然第三の山田などと話してくれるはずない。

姫と奴隷ぐらいの格差がある。

でもおかしいな。彼女には取り巻きがいたはずだが。それとも捨てられたか?

それはそれで可哀想な気がする。まあ深いことは考えないようにしよう。


「よしこれで全員決まったな? 間もなく修学旅行が始まる。

お前たちは気を引き締めろ! 学校を離れたら自分たちの責任だからな! 」

そんな風にお言葉を頂き笑顔が溢れる一日となった。


「碓氷さん一緒に…… 」

同じ班になったと言うのに相手にされない。

碓氷さんってばもう光のことを考えてるらしい。本当にどうしようもないな。

ではそろそろ尾行開始しますか。

碓氷さんの生態を探る旅へ。


まずはどこに? 帰宅中の立ち寄りは固く禁じられてるがお構いなし。

まあ我が校の生徒はそのように真面目な訳ないから。

もっと自由にが校風と言うか本当に誰も気にしてないし。

先生はいい加減で生徒会も機能してない。だからっていいと言うのではない。

うん? おかしいぞ。またしても奴の家の方へ向かってるぞ。

これはやっぱりストーカー? でも確認するまで分からない。


幼い頃に碓氷さんとは何度か会っているはず。

僕が助けた思い出があるがきっと碓氷さんが僕を助けてくれたんだろうな。

記憶ってのは勝手にいい方に作り替えるから美しい。

僕が助けた記憶はどうやら幻だったのだろう。何だか凄く残念。

今更格好いい記憶に改ざんする気はない。

とりあえず碓氷さんの家に行ければそれでいい。第一目標。

後は好きにする。それでいいはずだ。


公園に入っていく彼女。これは家が近いのか? それともトイレが近いのか?

寒いからそれも充分にあり得る。とにかくここは慎重に。 

お花を摘み終えるとベンチへ。静かに何か待っている。

そこに現れたのは光だ。まるっきり周りを気にすることなく自分の世界に没頭。

恐ろしく無防備の光。それをベンチから見守る碓氷さん。

何で僕はこんなところばかり目撃しなければならないのか?

それが運命だとしても納得できない。


                続く

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