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言い訳不可

結局駅前のマンガ喫茶で落ち着くことに。

ミツキちゃんの為にも屋外は避ける。どんなに乗り気でも雑に扱ってはいけない。

ふう…… おかしいな?

ここなら問題なく行けると思ったのに緊張からか震える。

いつの間にか冷や汗まで。体がおかしい。どうしてしまったのか?

「ふふふ…… どうしたの元気熱いの? 」

そんな風に無邪気に笑う。でも今はもう冬だから熱いはずがない。

ただ火照って仕方がないのも事実。それを見抜かれたらさすがに恥ずかしい。

どうにか余裕を見せないと格好悪いよな。


「そうだ。この前元気の言ってた本が見つかったよ。今度取りに来なよ」

ここに来てミツキちゃんはがっつかなくなった。これはどう言うことだ?

焦らしてるのか? それはさすがに困る。ただ単に恥ずかしい? らしくないな。

でもそれをこちらから指摘できない。まるで僕から頼み込んでるように映る。

冗談じゃない。会いたいって言うから時間を作ったんだ。

これ以上は勘弁してくれ。もう我慢の限界。そっちはよくてもこっちはもう無理。

頼むから急いでくれ。どこまで僕をからかうんだ?

そんな風に睨みつけるような格好になってしまう。余裕がない証拠。


「ああごめん。でもどうしてこんなところに? 公園で良かったんだけどな」

積極的だったミツキちゃんは気分を害したか乗り気じゃないのか後ろ向きの発言。

「いいからほら早く! 始めようぜ! 」

「はいはい元気ってば急かし過ぎ。 そんなにしたいの? 」

自分で誘っておきながら態度を翻すからまったく理解できない。

やっぱりミツキちゃんは人のせいにしようとしてる。あるいはからかってる?

冗談じゃない。ここまで来てお預けなどあり得ない。

いい加減焦らすのはやめろっての。

こうして結ばれるはずがおかしな展開に。


「いいから始めるぞ! 」

僕がせっかちなんじゃない。彼女が嫌がってるんだ。

「もう分かったってば」

そう言って読む手を止めてくっつく。

手慣れた感じでキスを始める。僕だってあれだけやればもう怖気づかない。


はあはあ

はあはあ

つい呼吸が荒くなる。どうしたんだろう?

うん……

引き寄せて抱きしめてから怖くないように目をつぶらせて何度もキスをする。

「もう元気! やり過ぎだってば! 」

「そう。ではそろそろ…… 」

まずは軽く背中からそして下へ。

「ちょっとどこを触ってるの元気! ふざけないでってば! 」

どうやらお触りは禁止らしい。でもこれでは先に進めないだろうが。


「好きだよ」

心にもないことを言って相手をその気にさせる。最低だな。

「ちょっと…… 何をするの元気? へへへ…… まさかここでやっちゃう気?」

「照れることないだろう? 応えただけじゃないか」

「ちょっと何を勘違いしてるの? 初めから何だかおかしいと思ったのよね」

「おいおい今更怖気づいたのかよ? 」

格好つけてみる。どうせやる気だったくせに。

何を今更知らない振りなど鈍いにもほどがあるだろうが。

それにしても僕ってこんなタイプだったっけ? もっと消極的だった気がする。

何と言っても第三の山田だから。


「違うでしょう? ただキスをしようとしただけ」

どうやら本気らしい。よくいるよな。それ以外に興味ない人。

まさかミツキちゃんがキス以外に興味ないなんてあり得ない。それは真っ赤な嘘。

ただ恥ずかしくて怖くなっただけに違いない。

まったく何だかんだ言ってもまだ幼い。キスだけでいいなら僕を誘わなくていい。

「まさか本気? それとも拗ねたのか? 」

「うるさいな! どっちでもいいでしょう? 」

お怒りモードのミツキちゃんはこれ以上はいいと拒絶する。

ちっとも分からない。何を考えてるんだ?

この子のことがまったく分からない。ふざけてもからってもいない。


こうして一時間ほど滞在して外へ。

結局今日も最後まで行くことはなかった。

それはそれで良かったのかもしれないな。

だってまだ僕たちは付き合ってない。告白だってしてないのだから。

今まではミツキちゃんの強引さに引っ張られるように。

今回は僕がリードしようとしたけど無理だった。

ちょっと情けないよな。でもこれが僕。第三の山田だから。

次は必ず。もっとロマンチックな仕掛けをして一気に行くとしよう。


教室では相変わらず第三の山田に甘んじている。

ぼうっと外を眺めていると流れ星…… のはずもなくただの錯覚。

チリのようなものが飛んだだけに過ぎない。

すぐ後ろを飛行機が追いかけている。

しかしただの錯覚でそう見えるだけ。実際は相当離れてるんだろうな。

ふう…… 休み時間に窓の外を眺めてると詩人だと思われそう。

第三の山田よりはいいかな。


担任が姿を見せる。今日は特別授業と言っていたな。

「ハイ班決めするよ! 」

いきなり始まったかと思ったら修学旅行の班決め。

男女三名ずつで六名で一班とする。

ただ男女同数ではないので必然的に男子が悲惨な目に遭う。

それは大体いつも僕みたいなタイプが割を食うことになる。

最後まで残った六名が男子だけになる計算だ。

別に僕はどれでもいい。男子だけの味気ない修学旅行も悪くない。

代わりに副担任の新人音楽教師奏子先生を独占できるからラッキー。

どちらにしろ悪くない選択だ。贅沢な迷い。

ただこのクラスにはきれいな女の子が比較的多いのでどう転んでもいい。

そんな風に考えるのは碓氷さんに悪いよな。


まず初めに奏子先生と修学旅行で一緒になれる男子を選ぶ作業。

希望の者は手を挙げることになる。六名のところを二十名が立候補。

こいつらアホだぜ。いくら奏子先生が素敵で人気が高くてもずっと一緒じゃない。

昼は帯同するが宿につけば生徒と教師は別れる。

すると可哀想な集団はそこから男子だけになる。

いやいやもちろん寝る部屋は男女別々。どんな妄想しようと絶対に夢は叶わない。


こうして二十名はそのままで。残った者で班決めを行っていく。


                 続く

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