迷子
日曜日。
そう言えば僕たちは何をしてるんだっけ?
人も僅かで新入部員は望み薄。そんな廃部寸前の我が超常現象研究会か何だか。
新会長に就任しようって人間がぼやけてるんだから情けない。
自分でも情けなく思う。こんなおかしな研究会は廃部にするのが一番いい。
いや違うか。よく考えればあの部室がそんな感じのイカレタ研究会だったんだ。
すると僕たちは一体何をしてるんだっけ? 今度会長に話を聞いてみよう。
「そろそろ着いた? どこだよここ? 」
光は風景に目を奪われここがどこか分からないと情けないことを言う。
目隠しされて連れて来られた訳でもないのに何を言ってやがる。
どう考えてもここは日本だろう?
「おい聞いてるのか元気? 」
どうやら迷ったらしい。しかし正確には違う。ただ逸れたんだ。
しかもこの辺は電波が不安定でどこかおかしい。超常現象にはもってこいかな。
いやいや違うぞ。僕たちは何かしらまともな研究会に所属してるんだ。
それが何だったかイマイチ覚えてない。おかしいよな自分たちのことなのに。
毎日のようにどうでもいいことをただ喋ってたからな。
もしかして記憶喪失研究会?
書記兼進行の大田原さんならきっと覚えてるだろう。後は会長に聞くしかない。
会長ってばいろいろと理由つけて来ないんだよね。忙しいのは分かるけどさ。
もう引退なんだから顔を見せてくれてもいいのに。これはスキーも来ないな。
来週に一泊二日のスキー合宿がある。と言ってもただ滑るだけのお軽いもの。
光が勝手に提案して勝手に申し込んで来た。積極性は買うかな。
スキーとスノーボード。いつもどちらにするか迷うが結局スキーを選ぶことに。
三人ともまったくの初心者じゃない。ただ大田原さんは寒がりで僕は高所恐怖症。
光は放っておくとどこかに行ってしまう困った奴。
「なあミツキちゃんは来ないんだよね? 」
「元気がどうしてもってなら誘うが」
「間に合ってます! 」
「そうかそうか。だったら伝えておくぜ」
「いや違う! 僕としては来て欲しいんだけど大田原さんもいるからさ」
「そうか…… ありがとう元気。気を遣ってくれて。伝言だけは伝えておくな」
まあいいか。どうせ気にしないって。
一週間後のことはこの際どうでもいい。今は何とかこの状況を乗り切るのが先決。
ノロノロ風景に見とれていたから大田原さんが先に言ってしまって……
それにしても一体どこへ?
「メガネ取るとかわいいよな? 」
うわ…… 出たよこの光の軽口。こいつはこんな風に軽いから周りの者を惑わす。
しかし軽いから好意に気づきもしない。ただの鈍い男に成り下がる。
どうしようもないがそれでも親友で恋人のお兄さんで推しの推し。
僕がどれだけ願っても叶わないことをやってのける大親友の光。
代わってやれるものなら今すぐにでも代わってやりたい。それが優しさだろう。
しかしそれは現実には不可能。大体代わったらミツキちゃんを苦しめることに。
ミツキちゃんはこんな兄のどこがいいんだ? 別に親友の悪口を言いたくないが。
いつの間にかミツキちゃんと恋人認定されてしまった。
それはあそこまでのことをすればさすがに違うとは否定できない。
僕がどう思おうと周りから見れば恋人。しかもお似合いの恋人らしい。
まあそれは冗談だろうがミツキちゃんが喜んでくれるならそれでいい。
しかしそろそろはっきりさせておくべき。僕の本当の気持ち。
そうしないと混乱させてミツキちゃんにも悪い。もちろん碓氷さんにも。
決心するんだけどいざとなると鈍る。
ミツキちゃんをどうしても選べないことに問題がある。
一番はこの兄だ。絶対にミツキちゃんを渡さないだろう。
光はただの妹思いの兄ではない。何だか信じられないが二人には固い絆がある。
それはただの兄妹では絶対に見られないもの。ある意味嫉妬してしまうほど。
どうしてそれほど深いのにミツキちゃんは僕に付き合ってくれるのか?
何だかとんでもなく危険な闇みたいなものを感じる。
果たしてミツキちゃんの一方通行なのかそうでないのか?
そこを見極めないと一気に二人を失うことになる。
僕を理解してくれる数少ない仲間を失いたくない。それが心のどこかにある。
「どうしたんだよ元気? さっきからこっちをぼうっと見やがって?
気持ち悪いだろう。ははは! 」
奴に悪気がないのは理解してる。何と言っても親友だからな。
でもただ見つめるだけで気持ち悪いとはさすがに傷つく。
少しは僕の気持ちも汲んでくれよ。どうしてこいつはずっとふざけてるんだ?
「やっぱり迷ったんだよな? 」
「さあ? 風景に集中してたから…… 」
「そう言うのを迷ったって言うんだ! お前は詳しいんじゃなかったのか? 」
奴が詳しいから大丈夫。大田原さんもすぐ見つかると自信満々に言ってたから。
しかし時間が経つにつれ言ってることが変わった。
ただいい加減に言ってただけで根拠など何もなかった。適当に歩いてた。
別に僕たちは迷子ではない。人がいれば最寄り駅まで案内してもらえるから。
そうなれば帰れる。普通に五感をフル活用すれば遅い夕食を食べれるはずだ。
小さな子でもない限り迷うのは難しい。ここは都会ではないがバスも電車もある。
山や果てしなく続く大地ならいざ知らず戻って来れるのだ。
ただその場合大田原さんと再会するのは翌日と言うことになる。
散々嫌味を言われて信用が失墜する。回復には長くかかることだろう。
だから今すぐ大田原さんを探しだしお互いが無事であることを確認する。
それが僕たちの旅の目的。いつの間にか目的が変わっていた。
続く




