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決してわざとではない

どうしよう? 断り切れずに光の傘に入ってしまった。

大田原さんが断るのは目に見えていたのに何の対策も取らなかった。

そのまま流れに身を任せる形。天気予報をきちんと見ていれば……

今更後悔しても遅いよな。でもできるなら穏やかな学園生活を送りたい。

朝のハイタッチだって加わりたいんだ。


いやいやこんな雨の降る夕暮れ時にわざわざ後ろからついて来る真似しないさ。

碓氷さんもそこまで暇じゃない。そう思いたい。

でも振り向けばきっといるんだろうな。昨日の今日だからな。

でも今日は本当にわざとじゃない。挑発するつもりはまったくないんだ。

そこまで人間終わってないって。もはやシャレにならないレベル。

昨日はただの実験だからなるべく大胆にやった訳で。

結果は予想通り。いや想像を遥かに超えていた。

クラス内がとんでもない空気になっていた。

あのおおらかで誰とでも接する明るい碓氷さんが怒りに震えて笑顔もなし。

こんなことをまだ続けるのか? 当然それはノーだ。

分かってるからこそ断ったのに断り切れなかった。


「オイ濡れるぞ! 」

結局光の好意に甘える。情けないな。慌てて後ろを振り返る。うん情けない。

ちょっと前までは何てことなかった。特に一学期なら入れてくれとふざけたもの。

しかし今の状況はあまりにも複雑。もうただの親友でも仲間でもない。

ミツキちゃんのお兄さんだし碓氷さんの憧れの人だ。

そしてミツキちゃんの一言で一人の男として見てしまっている。

本当にどうしようもないな光は…… いや自分か。

でもすべては光。恐らく奴が誰に対してもいい顔するから。

好意もないのに必要以上に優しくしてはいけない。

光…… お前って奴はどこまで迷惑を掛けるんだ?

いっそのことすべての原因を取り除くのもありかなと本気で思うこともある。

それが一番手っ取り早い解決策。しかし当然実行できない。

だって奴にはまったく悪気がないのだから。


「聞いてるのか元気! 」

「でも…… くっつくって訳にもいかないだろう? 何だか寒気がする」

「ほら見ろ。風邪ひくぞ。もっと近寄れって! 」

その優しさが怖い。何だか背中がもぞもぞする。

では遠慮なく…… うわ嫌な視線を感じる。

どうしても無口に。恥ずかしいから仕方ない。でもなぜか光まで静かに。


冷たい雨の降る音と足音。それから車が。これはタクシーだ。

チラッと見ると碓氷さんの姿が見えた気がした。

一瞬だったし雨で視界も悪い。ただの制服の少女だった気もする。

とにかく僕たちと同じぐらいの女の子が乗っていたのは間違いない。

もはやただの願望な気もするがとにかくもう睨みつけられることもないだろう。

こうしてその日は何だか無口を通す。

雨で話しにくいと言うのもあるが光が疲れていたのもあるのかな。


「それじゃあな元気」

「おい日曜日は絶対に来いよ! 」

サークル活動よりモデル選びを優先されて堪るか。

もちろん奴だってサークルメンバーの一人だから自覚は多少あるさ。

だが次期会長の僕やまとめ役の大田原さんと違い奴にはこだわりがない。

休んでもやる気がなくてもどうにかなってしまう。

光はいいがそれでは周りが迷惑する。人のこと言えないけどさ。

修学旅行だって控えている。団体行動ぐらい身に着けてもらわないと。

奴とはクラスも班も違うので迷惑をかけられることはないだろうが。

それでも何だか凄く嫌な予感がする。不安なんだよね。


何てことのない雨の日の午後。

いつの間にか胸の鼓動が早まっていた気がする。

どうしてだろう? やはり光を意識するあまりか?

すぐ後ろを歩く碓氷さんが気になったからか?

それにしても雨の中よくやるよ。本当にご苦労と言ってやりたかった。

あのタクシーの少女が碓氷さんならもう言い訳のしようがない。


結局今週は光の家に寄れなかった。

ミツキちゃんのことがあってどうしても気分が乗らなくて……

奴も少しは人の気持ちに気づけよな。

鈍感だと何かと迷惑なんですが。下手すると恨まれるぞ。

おっと…… いつの間にか光のことばかり考えている。どうしてしまったんだ?

今までこんなことは…… いや何度もあったか。

親友を思うのは何一つおかしくない。自然なこと。

つまらないことで拗れてはいけない。ここは僕が冷静にならなくちゃな。

どうも最近極端な考え方をしてしまう。いけないと思ってもやめられない。

それがおかしな三角関係によるもの。自覚はしてるがあまり認めるのもどうかと。


「お帰り! 今日はどうだった? まさかまた何かトラブル? 」

母さんは心配してくれるのはいいんだけど脇が甘いと言うかミツキちゃんに甘い。

前回も前々回も簡単にミツキちゃんの侵入を許した。

息子を心配してるんだか信用してるんだか。

頼むよと言っても無駄なんだろうな。

だからってミツキちゃんを家に入れるなとは僕の口からは言えない。

できるなら察して欲しい。

光も警戒だがミツキちゃんの積極性も要注意だ。それを言うとハイハイとだけ。

またミツキちゃんを招待しかねない。

もちろんもう僕のことなどきれいさっぱり忘れた可能性も高い。

それならそれでいいんだ。諦めもつく。まだ碓氷さんより諦められると言うもの。

どうしたって光の影がちらつく。


結局のところよくある憧れだったんだろうな。

僕がそう言うタイプじゃないからそう見えないが。

ミツキちゃんはきっと勘違いして恋愛感情を抱いたに違いない。

こっちからすれば嬉しいしこのままでもいいかなと思ってしまう。

ただそれは甘えで彼女の為を思うなら結論を急ぐべきだろう。

関係をはっきりさせる。それが彼女にとってもいいはず。

今日は疲れた。さあもう寝よう。


                続く

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