屋上で愛の告白
放課後屋上で。
告白スポットの定番だからな。
少なくてもベストファイブには入る便利な場所。
ただ学校によっては屋上に入れない場合もあるので気を付けないといけない。
下手に知識を得ると体育倉庫を選んでしまいたくなる。
でもそこはどちらかと言えば告白に成功した男女がイチャイチャする場所。
まだ僕たちには早過ぎる。まずは告白してからだ。
それと放課後には適さない。たとえ運動部の練習が始まっていても気が抜けない。
間抜けな奴が忘れ物を取りに時間差攻撃を仕掛けて来る。
大体付き合ってるなら外でやれよと言う話。
二人っきりだと思って大胆なことを始めれば現場を目撃される恐れもある。
そのスリルが堪らないと言うなら止めないがやはりお勧めしない。
「ごめんなさい…… 私まったくあなたのことを知らない! 」
動揺する碓氷さんらしき人影。
あれ? これはどう言うことだ? 失敗した? 間違えた?
もう訳が分からない状況。告白を断るのはいいが知らないは傷つく。
毎日ハイタッチしてる仲じゃないか? なぜ存在を否定するようなことを言う?
「そんな碓氷さん…… 僕だよ僕! 第三の山田だよ! 」
どうにか抵抗してみるが何となく違和感がある。これは何かおかしいぞ。
それでももう後には引けない。
断れるの覚悟で恥ずかしくても勇気を振り絞って告白したんだから。
どうであろうと誰であろうときちんと答えるべきだ。
それなのに…… すべてを否定された気分になる。もういいのかもしれないな。
「ごめんなさい。私あなたのことをまったく知らないの。第三の山田って誰? 」
まずい…… 呼び出したことで焦り姿が見えた瞬間に告白してしまった。
でもよく見ると碓氷さんではない。似ても似つかないよそのクラスの女の子。
どうやらクラブ活動で屋上に用があったらしい。
ううう…… 恥ずかしい。アホな告白をしてしまった。
どうする? いっそのことこのまま続ける? 人違いで告白などあり得ないが。
「もう戻ってもいい? 」
「いや待ってくれ! せめてお名前だけでも! 」
「タートル姫子です」
「はあ? 」
「だからタートル姫子が私の名前なの。ほほほ…… 」
そう言えばどことなく大胆でおかしな感じがした。
どうにか取り繕おうとして上品に振る舞おうと必死だ。
初対面だから当然と言えば当然か。
「コンビ名? 」
「だから本名って言ってるだろうが! お前の第三の山田は本名かよ? 」
まずい。つい怒らせてしまった。怒りで本性が現れ言葉が荒くなっている。
ごまかすためにもどうにか告白まで持って行こうとしたが無理みたい。
とりあえずタートル姫子をやり過ごして碓氷さんを待とう。
タートル姫子は意外にも隣のクラスだった。
と言うことは光のクラスになる。
しかしこの世界観で大丈夫か? 修学旅行も近いし波乱の展開が待っているのか?
一時間何もない屋上で待つ。だが碓氷さんは一向に現れない。
どうしたと言うんだ? トラブルでも起きたか?
やはり第三の山田では満足できませんか?
前回告白を受けた縁起のいい場所で勝負したのに自滅して負けたらしい。
結局今日も距離を縮めることはできなかった。ただ手応えはあった気がする。
諦めずにまた明日以降頑張ればいいさ。
結局タートル姫子って何者?
運命的な出会いからどうしても彼女のことが頭から離れない。
トボトボと情けなく歩いてると声が。
「あれ? お前どうしたんだよ? 」
とっくに帰ってるはずの光に遭遇。これはまずい展開。気まずくて仕方がない。
「何だよ光か? 偶然だな。また明日」
自然だ。これで疑われない。さすがにまだ顔も見たくない。
ミツキちゃんの件もあり家に招待されたら僕はどうしていいか分からなくなる。
ここは安全策で素っ気ない対応で乗り切ろう。
「おいおい元気! もっと偶然の再会を喜べっての」
そう言って無理やり連れて行こうとする。まさか本気か?
冗談じゃない。まだ何も解決してない。こんな精神状態では壊れてしまう。
奴の家に行けば自分がどうなるのか分かったものじゃない。
「今日は気分が悪いんだ」
とっさの言い訳は体調しかない。しかし奴は察しが悪いのでまだ続けようとする。
これは拷問。どうして恋敵と仲良くしなければいけない?
それだけじゃない。ミツキちゃんの説が正しいなら僕は光に好意がある。
本当に複雑だよな。拗れに拗れた光との関係。
そう思ってるのは僕だけで当の光は呑気なもの。
「こっちに来いって! 」
強引な光。それはそれで悪くない。
あれ…… まさか感じてしまった? ダメだ。奴のペースに乗せられてはダメだ。
「済まない光。でも僕も疲れててさ」
「だったら尚更休んで行けって! 」
休むって…… まさか僕の体を狙ってないよな?
誤解だと分かってるのにどうしておかしな方に考えてしまう。
「悪いって! 」
「だから遠慮するな! ミツキもいるぞ」
どうやら光はご招待したいらしい。だがそれはあまりに危険な行為。
自覚がないのは仕方ないが困りもの。
「また明日にするよ」
「どうしたんだよ元気? お前拗ねてるだろう? 」
どうやら何も知らない鈍感な奴でも多少は察知できるらしい。
「うるさいな! 」
しつこくされたのでつい振り解こうとする。
「元気…… あれ? 殺気を感じないか? じろっと見られてる気がする」
どうやらいつもの症状が現れたらしい。
大体のことは理解してる。このじろっと見られてるは単に気のせいでしかない。
気のせいなのですよと一度ふざけたが真面目に聞けと言われてしまった。
僕だってあの時は気のせい以外考えられなかった。
そもそも僕が先に感じていたこと。その正体を知るには周りを見回すだけでいい。
でも実際はそんなことさえしなくても誰か見当がついている。
それは…… 碓氷さんに違いないんだ。
続く




