衝撃! 僕には親友がいない
碓氷さんの思い人が誰かも気になるが横で口を挟む目障りなこの男も気になる。
それでこいつは誰なんだ? ゴシップ好き女子の代わりに何か言ってるが。
戯言をほざいてる暇があるなら早く帰ればいいものを居座るから始末に負えない。
ほら用のない生徒は早く帰りましょうとアナウンスが流れているぞ。
それとも掃除当番なのか? いや違うよな? 前回一緒に掃除した記憶がある。
放課後に帰りもせず部活にも参加せずにいつまでも教室に留まる男。
何がしたいんだ? いわゆる暇人なのか? それともどこにでも出没する変態?
いきなり話に入ってきた謎のクラスメイト。どうやら今度の情報提供者らしい。
だからって僕たちの間に勝手に入って来るなよな。
話がこんがらがるし彼女の性格が豹変したのかと驚いたじゃないか。
いくら僕が第三の山田でクラスでは最底辺だとしてもこの扱いはない。
悪ふざけ以外の何ものでもない。僕は客だぞ? ただゴシップを聞きに来た客さ。
この物知り顔の割り込み男についてはこれくらいでいい。
下手に知ってるものだから口を挟みたくて仕方ないのだろう。
僕だって立場が同じならやっちまう…… いやそんな度胸ないか。
「だったらやっぱり…… 」
もう言い逃れはできない。想像してた通りなら相当ショック。
今までの粘りは決して悪ふざけなどではない。何となく分かっていた。
碓氷さんの憧れがその男でなければいいなとずっと考えていた。
あえて憧れとしたのはまだ確定してないから。これはとても大事。
完全に本人の口から聞いてからでしか判断しない。
いくらゴシップや噂話が好きでも真実でないものを流せばこちらの立場が危うい。
ここはどんなことがあっても直接問う以外の方法はない。
だから憧れの存在ぐらいに留める。それがベストだろう。
ミツキちゃんに指摘された時からもしかしたらそうかとは思っていた。
だからショックは大きくない。いや…… やっぱりどうしようもなくショック。
辛くて辛くて明日から学校を休みたくなるぐらいの衝撃を受けている
それは評価が落ち込むだろうからやめたらとアドバイスされる。
自分たちで落ち込ませるようなことしておいて何を言ってるんだろう?
二人して僕をからかってるのかな?
「するとその彼が碓氷さんの憧れの人。その理解でいいんだよね」
「ああ…… でもなぜ名前を伏せる。お前の親友だろう? 」
意外にも僕たちの関係を知ってるようでそうすると何も言えなくなる。
学校では隣のクラスとは言え休み時間や昼休みに会うこともない。
そんなことしてる暇があるなら碓氷さんと少しでも交流を深めたい。
ある意味最低な男と言えなくもない。もちろん自覚している。
しかし奴の方が積極的じゃないからな。いい距離感を保っていると思う。
「詳しいな。しかしなぜそんなこと知ってる? 」
「だから何度も言ってるだろう? その場面をたまたま目撃したんだって。
最近告白されて面倒からなのか思い人の名前を素直に言ってるんだよ。
どう言うつもりかは知らないがやはりしつこく迫ってくる奴もいるしな」
まるで自分は違うみたいな言い方。こいつだって一学期に告白したのを見た。
どうせ目撃談だってしつこくしていたからに違いない。
それにしても自分のことを棚に上げて勇気ある告白者に何て言い方をする。
僕も告白予定者の一人。いつかは告白できたらな。
しつこく迫ってる気はしないがウザがられている可能性はなくもない。
碓氷さんってば意外にも誰でも受け入れるおおらかなところがあるからな。
僕みたいな存在からは憧れの対象に。もちろん可能性が低いのも自覚している。
だからって噂の人物を近づけようとは思わない。
逆にどうにかして遠ざけられないか考えている。
「ありがとう。また今度何かあったら教えてくれ。
極秘情報があればまた聞くから」
物凄い上から目線。酷いと思われるかもしれないがこれくらいでちょうどいい。
奴らを調子づかせるととんでもないことになる。必要な存在なのは間違いないが。
第三の山田には貴重な情報源で戦力なのは事実。
分かっていた。でも認めたくはなかった。
後は直接本人に聞くしかない。いっそのこと告白してしまえば手っ取り早い。
でも僕にそんな度胸はない。あるはずがない。
僕は情けない第三の山田だ。それを踏まえた行動をとるべきだろう。
碓氷さんに関する極秘情報を仕入れた。これで明日から少しは優位に立てる。
何だかんだ言って碓氷さんに関心を示しているだろうからな。
魅力的だから何も知らず外面だけで判断するとすぐに告白することになる。
僕のように慎重に何度も見極めてる者以外近づくべきではないのに。
いつかの放課後。
あれからどれだけ経っただろう?
碓氷さんに憧れの人がいたなんてまるで悪夢のような話。
そいつはきっと年上でギターを弾きながら格好をつける最低な洋楽かぶれ。
顔がいいとか関係なくて口が上手く頭の回転が速く手が早い。
そんな最低な奴で僕とはきっと棲む世界が違うんだろうなと勝手に思っていた。
だってあれだけかわいくてきれいなら男はわんさか寄って来る訳で。
僕だってそこまでバカじゃない。少なくても碓氷さんよりは。
しかし僕の近くにいる奴だと言うのだから意味不明。
それならやっぱり僕でいいんじゃないの?
何が違うんだよとずっと考えていた。だがいくら考えても答えは出なかった。
仕方なくもう強引に告白することにした。
「好きです。付き合ってください! 」
実験とは言え随分と無謀なことをする。
屋上に呼び出したがどうも風が強くて断念したくなる。
果たしてこの告白は成功するだろうか?
続く




