三人の候補者
ミツキちゃんがおかしなことを言い出し関係がぎくしゃくしてから数日。
まだ会えてない。こちらから積極的に行くべきなのか?
謝るべき? それとも気にしてない?
経験がないものだからどうしていいか分からない。
さすがに光には相談できないよな。
迷う。やり過ぎてもいけないし放っておくのも違う気がする。
そもそもミツキちゃんに現を抜かしていれば碓氷さんに嫌われる。
ミツキちゃんかそれとも碓氷さんか?
僕にとってどちらが相応しいのか?
分からない。分からない! ちっとも分らない!
ならば間を取って光でいいじゃないかとは決して思わないけど。
三つ目の選択肢があるのはいいこと。
ミツキちゃんは僕を特別視してくれる稀な人。
第三の山田でも単なる山田でも兄の友だちでもない。元気と慕ってくれる。
それにかなり積極的だ。ただ残念なことに兄の光の存在が遠ざけてしまう。
僕のせいにはしていたが実際はミツキちゃん自身が兄への想いが強いのだろう。
でもそれを指摘すれば僕を見限る。最低だと言って一気に冷めてしまう。
そんな気がして何も言えない。彼女だって多少は理解してるはずだ。
僕への好意だって兄を試してるだけなのかもしれない。
僕は一人っ子で兄弟はいないからそう言うのは想像でしかないからどうもな……
仲のいい兄妹にはよくあることなのか?
憧れがそのままおかしな方に進んでいくみたいな話。
光が地味で目立たないだけでなく妹との禁断の関係があるから上手く行かない。
そんな風に他責思考で自分の愚かさを覆い隠すしかない。僕とはそう言う人間さ。
ただ大人しく目立たない存在の第三の山田は結局のところいい人ではないのだ。
欲深き人間と言う訳だ。何と言っても一方を選ばずに欲張りにも両方だからな。
少し前の自分なら図々しいにもほどがあると呆れただろう。
それだけでなく僕の中に芽生えた光への想いが本物なら三人同時と言う訳だ。
一人はクラスメイトの憧れの存在の碓氷さん。
もう一人は親友の妹で三個下の中学生のミツキちゃん。
大人びていて僕なんかよりよっぽどしっかりした子。
そして三人目はまさかの光。僕は未だに戸惑っているがミツキちゃんが言うなら。
ミツキちゃんが急におかしな説を唱え出すからつい意識してしまう。
とにかくミツキちゃん問題をどうにかしないと。
突然ある日好きなって突然どうでもよくなった。
そんなの僕にはどうすることもできない。
光の為にもミツキちゃんとの関係をはっきりさせたい。
ただそうなったらきっと諦めるんだろうな。
逆に碓氷さんは押せばどうにかなるのではと考えている。
第三の山田を脱却して名前も顔も覚えてもらったら。
一からやり直すのも悪くない。顔と名前を分からせ一致させる。
そう言った作業を繰り返せばおかしな思い込みも誤解もなくなるさ。
やはりそう簡単に碓氷さんが忘れられない。
同級生だけでなく同じクラス。目の前をぼうっと眺めれば見てとれる碓氷さん。
それに対してミツキちゃんはあまりに分が悪すぎる。勝負にならないほど。
同じクラスどころか高校生でさえない。
光がいてミツキちゃんがいた。本気度も測れないしこのまま別れるべきだろう。
そもそもまだ付き合ってさえいない。
僕は何とも。積極的にミツキちゃんの方がなっているだけ。
だからって僕から捨てたりする気はない。
ただいくら引き留めたところで興味を失えばどうにもならない。
放課後サークルもなく暇を持て余している。
こんな日は碓氷さんの後をこっそりつける。そして彼女の家を探る。
探ってどうとかは思ってない。ただ家族構成や動きを探るだけ。
絶対にストーカーのような真似はしない。それは彼女を傷つけ苦しめることに。
自分の主義主張にも合わない。もっと彼女のことを純粋に知りたいだけ。
知りたいが決して迷惑は掛けない。それを心掛けている。
だったら後を付けなければいいと言う結論になる。そう思うのが自然。
しかしそれは彼女が普通だった場合。でも違う。
あまり頭がよくない。もっと言えば馬鹿だ。誤解を恐れなければ悪すぎる。
あれほど悪ければ当然記憶には残りづらくなっているはず。忘れちまうのさ。
それはもちろん僕の存在感のなさもある。
一時は嫌われてさえいた。それが今では無関心。ただのハイタッチ要員。
それが一人や二人ならここまでのことはしない。特別に感じてるはずだから。
しかしハイタッチは男女関係なく目についた者を中心に行うので特別感はない。
もう一度ただのクラスメイトではなく一人の人間として認識してもらえたらな。
学校を休んでも心配されず気づかれさえしない関係に真実の愛などない。
ああどうして僕はこうも存在感がないのだろう?
彼女にとって僕はただのクラスメイトの一人に過ぎないのだ。それを実感してる。
「ねえ知ってる? 」
帰ろうとしたところで呼び止められる。
「ごめん。忙しいんだ」
つい冷たい態度を取る。いけないなとは思いつつも碓氷さんのことが気になって。
クラスには仲のいい女の子もいる。その子は彼女の親友だったりする。
それがこの子だったりもする。名前は確か…… ダメだ思い出せない。
こう言うところなど碓氷さんっぽい。僕たち似た者同士ってね。
「興味ないか…… いつも明るい彼女のことなんだけどな」
意味深なこと言って引きつけようとする。しかしどうせ大した話じゃないだろう?
そもそもいつも明るい子など存在するのか? うん明るい?
まさか安村さん? いや待てよ…… うちのクラスにそんな子いたかな?
続く




