お見舞い
体調も良くならないうちに土曜日を迎える。
昨日から寝っぱなしなので体が痛い。立ち上がって動きたいがその体力がない。
これだけ寝れば改善すると思いきやまだだるい。いつになったら完治するんだ?
二度三度と寝て起きてを繰り返しもうお昼かな?
チャイムがなると母さんが慌てた様子で部屋へ。
もううるさいな。病人なんだからできるだけ静かにしてもらいたいな。
まさか担任がお見舞いにでも来たか? それだったら僕だって慌てるか。
でもあり得ないよね? 何と言っても今日は土曜日。
「お邪魔します! 」
そう言うといきなり馴れ馴れしく僕を呼ぶ声が。一体誰を招き入れたんだ?
「まさか…… 」
「大丈夫? 私が来たから心配しないで元気! 」
ミツキちゃんがお見舞いに来たよう。
「ああミツキちゃん…… 」
母さんが慌てる訳だ。僕だってどうすればいいかまだはっきりしない。
「ミツキちゃん学校は? 」
どうせ無意味だけど一応は聞いてみる。
「はあ? 元気何を言ってるの? 今日は土曜日じゃん」
そう言って元気な姿を見せる困った女の子。
元気じゃない元気と元気過ぎるミツキちゃん。
元気で丈夫が取り柄の僕がこれでは名前負けもいいところだ。
「そうだね。うんうん。それで光は? 」
奴が当然いるものだとばかり。でもどこにもその姿がない。
そうすると彼女の言う通り一人でお見舞いに来たことになる。
それはとても立派で真似できることではない。それでも遠慮すべきだと諭すかな。
「元気私一人じゃダメな訳? 」
前のようなお洒落はしてない。スカートにコートで場を弁えている。
前回は張りきったとしても今日はお見舞いだからな。
そこのところを間違いないようにしなければ。でも中学生にそれを求めるのは酷。
ミツキちゃんがきちんとしてるものだから母さんも通すしかなかった。
「ほら元気。大人しく寝てよう。悪化するよ」
自分で騒いでおいて僕が原因であるかのような態度。それはいくらなんでもない。
騒がしい妹が来たみたいだ。でも僕は一人っ子だから残念ながらその経験はない。
あるとすればお正月と盆にやって来る親戚の子ぐらいか。
それでもミツキちゃんみたいに騒がしい子はおらずにきちんとマナーを守ってる。
「ああ…… ありがとうミツキちゃん。助かるよ」
問題のある彼女だがきちんと礼儀と常識さえ弁えてくれればそれでいい。
豹変でもしない限りただの心配して来てくれたかわいい後輩。と言っても光の妹。
「ちょっと母さん出掛けて来るわ。ミツキちゃんもゆっくりして行ってね」
呑気に出掛けるそう。一人息子が体調を崩してるのによく平気だな。
いや平気ではないのか。でもミツキちゃんがいるから問題なく任せられるのか。
それほど彼女は母さんからの信頼も厚い。その信頼を裏切れない。
だから余計なことをしない。誤解されないことが重要になって来る。
これ以上僕たちに何かあれば取り返しがつかない。
それくらいは考えてるのだろう。母さんにせよミツキちゃんにせよ。
ふふふ…… 僕が心配する必要もない。病人なのだから大人しく寝てればいいさ。
「大丈夫ダーリン? 」
おいおい何も分かってないじゃないか。どうしてそうなる?
両親が反対したらさすがにミツキちゃんとは付き合えない。
でも待てよ。これって勘違いしてる? 勝手に僕が手を出したと思ったのでは?
外でもクラスでも日常生活でも女気がないと思われてるからな。でも実際は違う。
普通にクラスメイトとも話す。その子とは話仲間で親友とさえ思ってる。
それに何と言っても僕には碓氷さんがいる。
毎日ハイタッチでコミュニケーションを取って仲良し。
サークルにも決して目つきがいいとは言えない部員が一名。
それを全部無視あるいは知らずに勝手にモテないと判断。
その結果僕がミツキちゃんに手を出したと勝手に解釈した?
だからミツキちゃんには警戒はするがそこまで拒絶しない。
常識の範囲で対応。だから純粋にお見舞いだと分かれば歓迎する訳だ。
当の僕が寝込んでいればおかしなことにはならないと安心し切って。
その判断が正しいのか間違ってるのかはそのうち分かること。
でも…… どうもあまりいい予感がしない。何だか笑っている気が。
笑顔で接するのは当然歓迎すべきこと。でもこの笑みは邪悪な一面も垣間見える。
どうだろうか? 単なる思い過ごしだといいんだど。
ダーリンは単なる挨拶でふざけたと好意的に解釈すればそう取れないこともない。
でもきっと違うよね? 僕は彼女のことをよく知っている。
「ミツキちゃん? 」
「どうしたの? きちんと褒めてよ元気? 」
どう言うことだろう? お見舞いだろう? 褒めるとは?
大体何を褒めろと言うんだ? 無理やり褒めどこを探さないといけないのか?
でもそれは寝込んでる病人に言うセリフじゃないだろう?
「うん。お見舞いに来る格好としては少し派手だけどまあ許容範囲かな。
大丈夫。僕が良いと言うんだから問題ないよ」
安心させる。この頃ぐらいは不安定だからな。
特に女の子は気まぐれでいつ機嫌を損ねるか分かったものじゃない。
でも今のところ怒りの感情が見られない。問題なさそう。
「ねえおばさんはどこへ? 」
「さあ…… 買い物かゴミ出しか町内会とか? 」
知らない。どうでもいいので予定など把握してない。
それが当然だろう? そこまで興味ないし。大体こっちは病人だし。
「だったら時間がいっぱい取れるんだね。へへへ…… 良かった! 」
どうも言ってることが不気味なんだよな。
まさかとは思うけど前回の続きやるつもりじゃないよね?
続く




