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視線! おかしな光

昨日を境に立場が逆転した。

それまでは親友でサークル仲間の光だったが今はミツキの兄でしかない。

とは言えそれは自分にとってだけで変わらずに接する光には関係ないこと。

こっちの都合でこれ以上迷惑を掛けられない。


「ははは! どうしたんだよ元気? 今日は朝からずっとおかしいぞ」

一日中ぼうっとしていたから怪しまれる。

そんな僕を見て思い浮かんだのはやはり昨日のこと。奴も奴で心配してたから。

「そんなことないって」

「昨日何かあった? 」

様子がおかしいのを心配しつつ好奇心からその原因を探ろうとする。

親友だからな当然だな。でも今は放っておいて欲しい。

すべてお前の妹が原因なんだからさ。

「ははは…… どうしたんだよ光よ。変なことを言うなっての」

まるで心配する光の方がどうかしてると思わせる作戦。

しかしさすがに無理がある。見抜かれたか?

そう考えるだけで恐ろしくて堪らない。

下手に口にして昨日のことが発覚しないか不安。


今部室には三人のみ。会長は姿を見せずにお馴染みのメンバー。

三人ではいくら頑張っても正式な部ではないので張り合いがない。

実績作りも何だか無駄な気がして。

そんなことしてないで一人でも多く勧誘すべきだが会長もいないしな。

いつ取り潰しになってもおかしくない。すべては来年次第。

会長就任が幻に終わる可能性が現実味を帯びてきた。


「まさかお前ミツキと何かあったのか? 」

さすがは仲良し兄妹。違和感があったのだろう。

「ははは…… ないない。まさかミツキちゃんだよ? あるはずないだろう! 」

完全否定する。もう冗談では済まない。ベッドで抱き合い愛さえ語り合った。

キスだってしたんだ。それをそのまま報告できるはずがない。

洗いざらい吐いて楽になりたいがそうは行くかよ。まだ追い込まれてない。


「あいつも帰って来てからどこか変でさ」

親友のことよりも大事な大事な妹のことが気になるよう。

そうだよな。僕だって兄になったらきっとそんな風になるんだろう。

ただ生憎僕は一人っ子でそう言う心配は今のところない。

「おかしかった? それはきっとはしゃぎ過ぎて疲れたんだろうさ」

自然に。絶対に悟られないようにするのが大事。

僕の家に遊びに来てくれたのは事実。でもそれだけ。

ミツキちゃんが自ら語るはずがない。自慢することもないさ。

「そうか…… 」

「昨日は長いことお喋りして母さんが夕飯に誘うから遅くなっただけ」

どこもおかしなところはないだろう? その話はもう充分だ。


「さあつまらないこと考えてないで今はこっちに集中しようぜ」

いつもならどうでもよくて欠伸が止まらないのになぜかやる気を見せる。

ごまかすにはちょうどいい。

ただ悟られないようにすればするほど墓穴を掘る。それが僕さ。

兄である光にだけは伝わらないようにしないといけない。

「どうもおかしいがまあいいさ。何もないならないで構わない」

光は今も親友だと考えてるだろうが僕は違う。

仲良くさせてもらってるミツキちゃんの兄だと強く意識している。

ちょっとおかしいがそれも仕方ないことさ。

怪しまれながらもどうにかすり抜けた。

今ミツキちゃんについて嘘を吐き通す自信はない。


「冷静になれって。ただ家に遊び来ただけ。あの服は個性的でかわいかったな」

あえてそれっぽいことを言ってみる。

「そうか」

どうやら納得してくれてるらしい。

「おいおい。まさかミツキちゃんにもそんな風に迫ったのか? 」

「また…… あれ視線を感じる」

「言いがかりはやめてくれ。視線って何? 」

光の追及で吐くことはなかった。でもそれでも疑ってるのは変わりない訳で。

何かとやりづらいのは確か。


「そこ! もう私語は禁止! 少しは集中して。お喋りも禁止! 」

僕たちがあまりにもうるさくし過ぎて妹と妹と連呼したものだからご立腹。

「はい…… 」

叱られたので少しの間黙ることにした。

そう言えば視線を感じると言ったっけ。

どうしたんだろう? 光の奴神経質になってないか?

妹のこともあるし視線を感じるもそうだが自分に自信が持てない証拠。

すべては奴の精神状態によるもの。ありもしないことに固執している感じ。

前は僕が感じて光はケロっとしていたのに。


「どうしたんだよ光? お前こそ何かあった? 」

睨まれるがここは放っておけない。

もし重症化すればそれは僕のせいになる。僕たちのせいでおかしくなっては困る。

「視線が…… どうしても気になって。お前は感じないのか? 」

前は僕がそうだった。気のせいだと説得されたっけ。

気分が落ち込んでる時になりやすいのだろう。でも今は感じない。

念のために急いで見回るが当然そんな奴はいない。

もう気のせいだと確定したようなもの。


「僕が変と言っておきながらお前は自分がおかしいことに気づいてない。

別にそれ自体はどうだっていい。でも巻き込むのはやめろ! 」

少々強く言い過ぎたか? でもこれくらい言わないと光は止めない。

「ああ…… いなかったんだよな? 」

自信がないと確認を取る光。こう言うことは自分で直接確認する以外ない。

でもあえて言おう。それが光の為。

「いい加減にしろ! おかしいのはやはりお前だ! 考え過ぎなんだよ! 」

それくらい繊細なのが光だ。拘りも強い。だがまだ光は才能を開花させてない。

ただの芸術家の卵でしかない。


「では進めます」

危ない危ない。これで僕たち二人の関係は悟られることはないだろう。

親友で兄でありながら真実を語ってもらえない状況には同情する。

でも今はどうしても言う訳には行かない。たとえ光が苦しんだとしてもだ。


                続く

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