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おかわりタイム

隣のクラスで同級生の光って奴の妹・ミツキちゃんといい関係に。

そこを運悪く目撃される失態。もはや取り返しがつかない。


バタンと扉が閉まってようやく凍り付いた世界が終わったかに見えた。

さすがにここまでしたらなかったことにできない。ただ言い訳すればまだ何とか。

「ごめんねミツキちゃん。勘違いされたみたい」

「ううん。元気のせいじゃない。私がやり過ぎたから…… 」

まずいぞ。またしてもいい雰囲気。このままでは三度目のキスをすることに。

ついキスの味を覚えてしまった。癖になる前にやめないと。

「元気…… 」

ダメだ。逃れられない。どんだけキスが好きなんだよ?

もう大丈夫だからここは思い切って…… 

積極的に行こうとしても体が動かない。固くなってるのかどうにもこうにも。

この際酢でも飲んで体を柔らかくすべきだろう。


「どうしたの元気? 早くしてよ! 」

催促されればされるほど体が動きやしない。

「酢がなくて…… 最悪醤油でもいいかな」

「はあ? 素の元気が出た? まさか感じちゃったの? 」

そんな風に冗談を言って笑う。うんかわいいな。

「そうじゃなくて…… 」

もう緊張も恥ずかしさも吹っ飛ばしてミツキちゃんに応えてやらないと。

そんな風に構えてると今度はノックもせずに母さんが入ってきた。


「ほほほ…… お取込み中悪いけどもう少しで夕食だから。

ミツキちゃんは嫌いなものはないんだよね? 」

居た堪れない。一度ならず二度まで。どんだけの失態を犯せばいいんだ?

もう買物を終えたから変更できない。好きだろうと嫌いだろうと食うしかない。

そもそも勝手に入って来るなよ。ノックし合図があるまで開けないのがマナー。

仮にいくらそのようなことを説いてもハイハイで済ますだろうから無意味。

「ははは…… 何でも好きです。美味しそうだな」

彼女は彼女で妙に白々しい気がする。


「もう行ってよ。あははは! 」

もう笑ってごまかすしかないがどれだけ重い空気が漂っているやら。

見られた? 当然見られてないはずがない。二度目では言い訳は不可。

「そんなこと言ってこの子ったら。ミツキちゃんがかわいいからつい…… 」

ダメだ。ドツボに嵌る。今はそのことについて語るべきではないのに口を開く。

母さんがそんなんだから僕だって失敗するし焦る訳で。

もういい加減出て行ってくれよ。

「へへへ…… 私ったらいけない子…… 」

調子に乗って軽口を叩くがマイナスに働いてはどうにもならない。

ここは初めから黙って嵐が過ぎ去るのを待った方が利口。

余計なことを言えば悪化すのは目に見えている。


しかし誰一人として黙らない。僕だってつい頑張ってしまう。

母さんも必死で立て直そうとするがうまくいくこともない。

マイナスにマイナスを重ねもう会話が成立してるかも怪しい。意味不明状態。

はっきり言ってわざとやってるのかと思えるぐらい悪化の一途をたどる。

もうどうでもいい。忘れるとか記憶に封印するとかその手の努力は無意味。

まったくの逆効果だと分かる。

こうして笑いも不発に終わり途方に暮れる。


「ほらもう用が済んだろう? 出て行ってくれよ! 」

決して僕はこんな酷い人間ではない。でも演じ切らないと恥ずかしくて死にそう。

ドアが閉まる音がしてようやく母さんがいなくった。

でもまだ油断できない。聞き耳を立ててる可能性もある。

スリッパの音が遠ざかるのを聞いてから。

安全を確保してからミツキちゃんに向き合う。これが男さ。うんどうにかなった。

でも全然解決してない。果たして彼女をどうするべきか?


「ははは…… 落ち着いた? 今日のことはなかったことに。お互いの為だよ」

まるでプレーボーイのセリフ。最低人間の出来上がり。

「ううん。お互いに愛し合ってるんだからこれでいいの」

「そうか…… 」

ミツキちゃんに説得されて大して深く考えないようにする。

母さんに見つかって最悪の状況は変わらない。改善しようがない。


「元気! 」

二人きりになるとすぐに甘える。いくら関係がはっきりしたからってそれはない。

「ねえ元気。もう見つかったんだし堂々としてようよ」

また抱き着いて来る。なぜ一度潜った修羅場を再び再現しようとするのか?

もう僕はこりごり。たとえどれだけ求められようと突っぱねる。

「ああ…… 」

それからははっきり答えないことにした。これが彼女を調子づかせない方法。

今日のことは今日のこととして思い出にする。そして記憶の奥の奥に封印する。

そうすればミツキちゃんとは知り合いの妹のままでいられる。


夕食。

一度落ち着いても飯が喉に通るはずもなく困り果てる。

それでも無理に詰め込んでおかわり。

いつもと変わらないところをアピールして平静を装う。

「そうだミツキちゃん。もう夜は遅いし泊って行ったら? 」

本気じゃないのは分かるのだがあまりにも露骨過ぎてどうにもこうにもならない。

息子に何をけしかけるつもりだよ? これ以上は危険。もはや冗談にもならない。

「いえ…… 明日は学校もありますから」

そう言って遠慮がちに断る。

彼女がもう家に来ることもないんだろうな。惜しいな。でも仕方ないこと。


「お邪魔しました」

ミツキちゃんは寒空の元帰って行く。

もう日も暮れた中を一人寂しく。

うん。もう会うこともないさ。さようならミツキ。


                 続く

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