それからの二人
やはり今日はついてない。
昨日は彼女に完全認識された記念として祝日にしようとしたぐらい。
それが大っ嫌いだからな。二十四時間経ったか経たないかでの変わりよう。
彼女の中では元からそうだったのかもしれないがこれでは夢も希望もない。
絶望の淵に叩きつけられた気分。どうすればいいんだ僕は?
仕方ないので今日の悲しみを刻みつける意味でも祝日にしよう。
うん。これで連休の出来上がりだ。
「そうだ母さん。光の妹のミツキちゃんが今度家に遊びに来たいって」
光は僕の家によく遊びに来る。何てことはない駅から十分のごく平凡な一軒家。
だから何か飾ることもないのでありのまま。
学校から徒歩圏内。恐らく彼女もそうだろうと推測。
すると幼い頃の記憶は間違ってないことになる。
その証明の為にも彼女の家をぜひ突き止めたい。
「光君と? 」
「ううん。一人で来るって。どうせ光も後で来るんだろうけどさ」
面倒臭くないよう適当に嘘を吐く。だって光は妹を迎えに行くような兄じゃない。
どちらかと言うと光はいい加減で勝手について行くのがミツキちゃんだそう。
それは光本人からの証言だから当てにはならないけど嘘は吐かないさ。
「いいんじゃない。光君も来るなら心配ないよ」
おいおい。一体何の心配をしてるんだ? 僕が手を出すとでも?
あり得ない。いくら絶望したからって相手は三個も下の中学生だぜ。
疑うこと自体どうかしてるよ。息子を信じろっての。
「分かった。だったら日にちが決まったら伝えるから」
母さんは光をよく知っているがミツキちゃんのあれは知らない。詳しくない。
僕にだって驚くほどの甘えぶり。あれが妹なのか?
おっと…… 余計なことさ。今は碓氷さんのことだけ考えてればいい。
それにしても酷いよな。会うなり大っ嫌いと絶交宣言するんだから。
つい数日前まではただのクラスメイト。ハイタッチ要員の位置づけだった。
それが昨日から認識されるようになって一気に存在感が増した。
それなのにいやそれだからこそ嫌われてしまった。しかもとんでもなく嫌われた。
これで本当に良かったのかな? いやそんなはずない。ただの誤解なんだ。
僕は何もしてない。してたとしても一日や二日で嫌われるようなことはしてない。
帰り道に何度も後をつけたって気づかれてないなら関係ないんだ。
だがそれでも僕は嫌われてしまった。
何となくムカつくとかじゃない。明確な理由があって嫌われた気がする。
でも本人の前では釈明も無理で言葉も出ない。
それが青春と言うが決していいものではない。残酷な真実に直面しあたふたする。
とにかくなぜ嫌われたのか? それが分かればいいんだが……
今日は運が悪かった。切り替えて明日だ。
一晩経てばきっと状況は改善されるだろう。
次の日もその次の日も彼女からのハイタッチは受けられなった。
あれだけが唯一の楽しみだったのに。生き甲斐を失う。それがどれほどのことか。
ハイタッチ自体をやめたならそれも納得するさ。でも普通に毎朝やってるし。
女の子とだけじゃない。僕よりも情けない感じの奴とだって楽しく。
僕だけが取り残されてる感じ。仲間外れにされた疎外感。
それでも無理に輪に入って行けばいいのだが睨まれてる気がしてできない。
気のせいだと思いたいが否定するほどの材料がない。見当らない。
ここは時が過ぎるのを待とう。好転する日がきっと来るはずだ。
それまでじっと耐える。どれほど苦しくて辛くても明けない夜はない。
もう光の誘いさえどうでもいい。この三日間笑う気力もない。
奴は奴でマイペースだからまったく気にしてない様子。
そこが奴の良いところで弱点でもある。
隣のクラスだから積極的に会いに行かない限り奴から来ることもない。
辛くてサークルにさえ顔を出してない。
光はいいとして先輩ともう一人の女子には悪い気がする。
でも今週はおやすみさせてもらう。それくらいショックが大きい。
辛いがもうそろそろ傷も癒えて来る頃。
相変わらずハイタッチにも加わらず悪ふざけでも僕に絡んでくれない彼女。
いいんだ。彼女がそうなら新しい恋に……
ああ言ってて虚しくなって来るぜ。どこにそんな度胸がある?
出会いなどそうそうあるものじゃない。一方通行ならそれも可能だが。
クラスの子にだってかわいい子はいるが彼女以上に相手にされない。
何と言っても彼女は男女関係なく誰とでも分け隔てなく接する素敵な人だから。
だからハイタッチの輪に加われないのは相当ショック。
僕にだってよく話す子だっているがそれとこれとは違う。
話しやすいから話してるに過ぎない。
彼女の代わりはいないと思っている。神聖な存在。
それから三日が経ち新しい週の始まり。
もうそろそろ忘れる頃さ。何と言っても彼女はバカなのだから。
僕が無理やり態度を変えさせてもいいが意地もあるし自然に任せる。
その方が彼女の怒りを早く静めるはずだから。ただの勘だが。
それにしても僕は彼女に何をしたんだろう? 本当に思い当たる節がない。
嫌われるほど目立ってないはずだ。
あの日何が?
続く




