嘘だ!
ようやく認識されるようになったら嫌われてその上彼氏疑惑まで。
とんでもないことになってきた。もはや耐えられそうにない。
やはり昨日までのただのクラスメイトで第三の山田でいるべきだったか?
「なあお前も見たよな? 」
そう言っていつも仲良しの奴に振る。どうやら今日も一緒に帰るらしい。
仲がいいと言うか波長が合うんだろうな。僕と光みたいなものか。
「ああ…… 見たよ。でも悪いよ…… 」
どうやら遠慮があるよう。まだこっちの方がまともで常識がある。
でも遠慮はいらない。どうせただの噂。グサッと刺さるがそれでも構わないさ。
ただできるならこれ以上僕を苦しめないで欲しいな。
そもそも止めればいいものを続ける気満々。きっと話すなと言っても無駄。
そう言う人間だ。それにしてもなぜ僕にそんなつまらない話を?
動揺したところを見て楽しみたいのか? それなら相当な悪趣味だぜ。笑えない。
「それで相手の男を見たのか? 」
つい熱くなって言葉が乱暴になる。でもそんなことは関係ない。
問題は彼女が本当に付き合っているかの一点。どう考えてもあり得ないが……
あれほど魅力的ならゼロじゃない。あああ…… できるなら聞きたくない。
耳に入れたくはない。こいつらどれだけお節介なんだ? とんでもない野郎共だ。
つい感情的になって悪態を吐きそうになる。
悪意はないのに僕は何て酷い人間なんだ。でもきっと悪意自体はあるんだろうな。
僕をからかって遊んでる。暇つぶしにはちょうどいいと考えてるに違いない。
でももう放課後で僕をからかって暇を潰さなくてもよくないか?
勝手に先に帰れっての。悪いけどお断りだ。聞かなかったことにする。
「悪い。教えるつもりはなかったんだ。でもこれで諦めがつくだろう? 」
何と優しさからだと。いいクラスメイトを持って幸せ。ちょっとうっとうしいが。
確かに早い方がいい。知ってるのと知らないのとでは対策の取り方も変わる。
そう僕は基本諦めない。諦めて次に行けるほど強くない。でも決して弱くもない。
ただ面倒だからが本音。できるなら彼女に限らず向こうから積極的だと助かる。
「しかもその彼氏は大人だぜ」
止めを刺そうと必死だ。おいおい一体僕が何をした? ただの善良な市民だろう?
まだ単なるどこにでもいる高校生。第三の山田と言われるほど平凡で特徴がない。
全国の山田さんごめんなさい。こんな情けない山田がイメージを悪化させている。
その自覚があるから辛い。からかわれ自信喪失。できればそっとして欲しかった。
それが優しさで友だちだろう? きっとあいつらはそうは思ってないんだろうな。
まあどうでもいいけれど。
彼女に限ってあり得ない。あり得ないんだ!
どう見てそんなタイプには見えなかった。僕と同じく恋愛は苦手のイメージ。
勝手な妄想に過ぎないがそれでもほぼ間違いないはず。どこで狂ったのだろうか?
二人掛かりで僕を殺しに来てる。ショックを与えて再起不能にしようとしてる。
一体奴らの狙いは何だ? ただの善意とは到底思えない。一緒に笑えとでも?
たとえどんなに面白くても今笑えるはずないだろう? 余計なお節介しやがって。
「大人? まさかお兄さんとか親父とか? 」
「ははは! それはない。手を繋いでたし親密だった」
「仲がいいなら充分あり得るって」
どうにか抵抗する。空しいだけだがしないよりはいい。
「それはない。抱き合ってキスも…… 」
目撃証言が出ればもはや疑いようがない。これは彼氏確定。どうにもならない。
僕が否定したところで無意味。何も変わらない。
どうやら彼女に恋人疑惑が浮上。
明るい性格でハイタッチを平気でする人だからなそれくらい不思議じゃない。
ただ最初は魅力的でもすぐにでも化けの皮が剥がれて離れていくはず。
と言うことは今回の奴はそれさえも乗り越えたことになる。
相当な器の持ち主。素敵な大人の男性ならそれもあり得るか。
現実味を帯びてきたぞ。彼女の理解者が増えたのは喜ばしいがライバルだからな。
しかもその男は僕を相手にもしてない。もはや終わったと言っても過言ではない。
でも認めたくない。すべては見間違い思い違いあるいは勘違いだとするしかない。
そうしないと平静が保てない。学校中を叫び回りたい衝動に駆られる。
確かに彼女はきれいだし喋らず大人しくしていればかわいいと評されるだろう。
だけどそんな彼女に男ができたと成長を喜ぶ余裕はない。それはそれで悪夢だ。
最悪僕の知らないところで付き合ってる分には問題ない。
だがその割り切りさえできない状況。
どうして僕を苦しめようとするんだ。わざとやってないか?
だったらこっちだって違う子に行くぞ? それでもいいの?
あああ! うおおお! 嘘だ!
苦しくて苦しくてもうどうにもならない。嘘だと言ってくれ!
「これ優しさで教えてやったんだ。お前は何も知らずでは可哀想だからよ」
おかしな言い訳をする。もういいじゃないか。これ以上僕を苦しめないでくれよ。
我慢の限界だと言ってるだろう? 頼むよ。
続く




