変化
ハイタッチ拒否事件。
まさか彼女が気分乗らないからとルーティーンのハイタッチを投げ出すなんて。
信じられないが何となく予想していた。でもらしくない。あまりにらしくない。
「うるさい! 」
ご機嫌斜めの彼女。完全に僕を認識できるようになった。これでいい。
こうなれば僕たちが結ばれる未来も決して遠くない。
いつもと違い励ましの言葉もある。ああ…… どれだけ救われか?
へへへ…… うるさいだなんて言い過ぎだよ。
「おい始めるぞ! お前たち急いで席につけ! 」
つい彼女のことに夢中になっていたら先生に叱らてしまう。
失態。かなりの失態。でもこれで僕たちは仲間。叱られ仲間だ。
へへへ…… やっぱり彼女はかわいいよな。僕にはもったいない。
そう思いながらも振り向いてもらえたらな。ちょっと欲張りすぎか?
ああこうやって幸せの内に毎日が終われるならどれだけいいか。
ちっぽけな幸せだろうがそれでも噛みしめている。
随分と浮かれてるな。大丈夫。全然調子に乗ってない。
これくらいで天にも昇るようではまだ人間は浅いまま。修業が足りてない証拠。
もちろんこのまま永遠に続けばなどと本気で思ってる訳でもない。
やっぱり昨日と今日とでは全然違う。別世界。それが不思議でしょうがない。
もう悩むこともない。毎日のように思い悩みながらハイタッチすることもない。
ただこのまま彼女がハイタッチをやめてしまわないか心配。今日だけならいいが。
気分が乗らないからだと思いたい。でもやっぱり彼女は何か変だ。
僕と彼女の関係に変化があったように彼女の心にも変化が見られる。
何か…… 僕のせい? まったくの思い込みだが毎日見てるから多少自信がある。
彼女が認識しその上で嫌がって苦しんでさえいる。
その原因が僕にあるならそれは光栄なこと。でも苦しんでるところは見たくない。
やっぱりいつもみたいに楽しく笑ってなきゃ。それが彼女だ。
思いっきり矛盾してるが仕方ない。そう言うものだから。
僕が幸せになっても彼女が不幸になったら意味がない。
彼女の笑顔を取り戻す。
では彼女の悩みを具体的に聞けるかと言ったら答えはノーだ。
結局僕では相談には乗れない。ちっぽけな僕の力では到底無理。実力不足。
だからって誰にも相談できないようだし相当ストレスを溜め込んでるに違いない。
そんな風に見える。毎日のように観察してきたのでよく分かる。
考えずに感じたままで動けばいいとアドバイスしたい。僕は嫌だけど。
そんな風に生きるのは彼女にとっては悪くないはずだ。
根本的な解決ができないものだから怒ってばかり。
努めて明るくしようとしてもどことなく違和感を感じる。
それがなぜそうなのかまったく見当がつかないが。
さあそろそろ問題解決と行こう。僕がしっかり聞いてやればいい。
「あの…… 」
「ごめん。忙しいから相手できない」
きっぱり拒否されてしまう。ここまで酷ければ重症。
僕は辛いぞ。彼女はもっと辛いのかもしれないがそれでもだ……
「でも…… 明らかに僕のせいですよね」
つい調子に乗って生意気な言動を取る。昨日までは認識されてない。
そんな中で彼女の懐に入ろうとする。あまりにも焦り過ぎな気がする。
どうしたんだろう? 認識されるようになって遠慮がなくなったのか?
いつの間にか大胆な行動を取るようになった自分がいる。
二人の間にあった壁が一気に取り払われた。
そう言う意味では昨日の醜態がプラスに働いた。
恥ずかしかったがこれでうまく行った。
僕と彼女の関係を決定的なものに。
はっきり言えば昨日までの僕は彼女にとってその辺に落ちてる石に過ぎなかった。
それが何がきっかっけか分からないが彼女の記憶に深く刻みつけた。
これは大きな成長だし二人にとっての記念すべき日。尊い。
でもそれと同時に彼女におかしな感情が生まれたのも間違いない。
恋愛感情ではもちろんなく厄介なトラブルの元となるもの。
それが彼女からヒシヒシと。ああ残念だよ。僕にどんなマイナス感情があるのか?
確かめたいとは思わないが近づかないといけない。実際距離は縮んでるのだから。
ここは多少無理してでもそのままの勢いで突っ走るのがいい。
どうせ手を拱いていてもただ待っていても何の解決にもならないさ。
難しい立場。それでもどんなに頑張っても認識されない昨日までよりよほどマシ。
ただ判断を誤ればどうなるかまったく予想がつかない。
まさか僕って嫌われてません? 長い付き合いだから何となく分かるんだよな。
ううう…… どうして僕は嫌われたのだろう?
昨日あまりにも強く印象に残ったせいで評価が下がったか?
それとも僕の気持ちに気づいて拒否反応でも起こしてるのか?
もしそうなら酷い。好きなのは変えられない。この感情はどうしようもない。
多少強引になったり夢中になるのは仕方ないこと。
それでも前よりはどれだけ近づいたか。昨日まで名前さえあやふやだった。
昨日までと比べれたら天と地ほどの違いがある。
こうしてなぜ自分が嫌われてるのかばかり考えることに。
続く




