エピローグ
ルイス・パーバディは、とうとう光の精霊の加護を受けた。
そう言う事で復活したルイスの神聖化が止まらない。
つまりシェークスト国民は、未だにルイスに騙され続けているワケだ。
いや、騙されているのはシェークスト国民だけではない。半信半疑ながらも他国へも流れたこの噂は、これだけでシェークストを守る壁になった。
俺はもちろん学校へは戻れないので、そのままルイス班に入り、俺と同じ様に、あの時南東で捕らえられたフィーゼントの兵士も……大方ルイスの部下になっていた。
万が一、誰に襲われたとして取るに足らないと言う事だろうが、そんな気を起こす奴もいないと思う。
リロとユーリィはルイス班に入るべく毎日アルバンにしごかれている様だが、お互いに時間が合わず、まともに会えないままに三ヶ月が経とうとしていた。
しかし慌ただしい日々も一段落して、少しまとまった休みをもらえた。
今日、久しぶりにリロと会う。
「アン!」
あれから、リロは何度か呼び方を直そうとしていた。
幸いちゃんと発音も出来るようだったが、俺がそのままで良いと言ったのだ。
俺をこう呼ぶのはリロだけだから。他は許さん。
「アーンッ☆」
「……ザカエラ……何でお前まで居るんだよ……あとアンって呼ぶな」
リロと初めて会ったあの船着き場でリロと待ち合わせだったのだが、そこに何故かザカエラも現れた。
「よかじゃなか、うちもルイス様に休みもろうたんやけん」
「ルイス様……?」
「あれから色々と考えたばってん、こん呼び方がいっちゃんしっくりしたばい」
ザカエラは付き人として、ルイス班とはまた違う立ち位置に居る。
秘書と言うか、執事と言うか、ルイスの公務外の事も良く手伝っている様で、本人はその仕事に大変やりがいを見出している様である。
「良かったねザカエラちゃん! じゃあ一緒に遊ぼうか!」
「え」
「さすがリロちゃんは可愛か~、マサキにはもったいなかばい!」
一応リロにはザカエラの本当の年齢を教えたが、呼び方が変わる事はなかった。
「もうすぐユーリも来る筈だし……あ! 来た来た!」
え、そうだったの?
「あ、リロ~! ザカエラさんも来てたんだぁ? ごめんね遅れた~?」
「んーん! 大丈夫だよ~!」
何だよこの状況……。
リロ言ったじゃないかよ、俺とデートしたいって……。
なのに何でユーリィ誘ってザカエラまで誘うんだよ……。
さて昨日の夜考えたプランは全部ダメになったぞ。
俺がうーんと難しい顔をしたところで、船着き場の上の通路からドカドカと豪快な音が聞こえてきた。
竜車の音だ、と見上げると、それはルイスの竜車だった。
隣にはアルバンも乗っている。
「よう色男! 女の子はべらせて何やってんだ?!」
「団長~!」
「団長お疲れ様です!」
「ルイス様~!」
三人が三人とも、嬉しそうな声を上げる。簡単に全部持って行く癖に誰がはべらせてるって?
「デートプランにお困りなら俺の竜車でちょっと遠出でもするか?」
くそ……このままじゃ本当に全部持って行かれる。
「毎年この時期はトアナで盛大な花のイベントが催されるんだが、今年はえらい出来が良いらしいぞ! 見に行くしかないだろ!」
トアナ……。アッシュが花屋を目指して修行をしに行った街じゃないか。
「ルイス、日帰りでトアナはちょっと無謀ですよ?」
隣のアルバンが眼鏡をクイと掛け直す。
「俺の竜車舐めるなよアルバン! 間に合わなかったらトアナで一泊だ! たまにゃ良いだろ」
「賛成! みんなでトアナに行こうちゃ!」
「素敵! 一回行ってみたかったの!」
「やったぁ! 団長の竜車でトアナだぁ~!」
持ってかれた……。
「お前はどうする? マサキ」
「行きますよ! 行くに決まってるでしょう! 乗せてくださいよ!」
今はまだまだ敵わない。
そう思い知らされる毎日だ。
だけどきっといつか、一人前になって逆に助けてやろうじゃないかと……そんな風に思う。
ただ単に恩返しとかそう言うのじゃない。
俺がとことん、こいつが嫌いで借りっぱなしはイヤだって言うだけだ。
それに、みんなで行くには良いデートプランだよな。
リロとユーリィがアッシュを見たらどんな顔をするか……なんて、会えるかも分からないのに、少しだけワクワクする。
「行こ! アン!」
「ああ」
リロに手を引かれて竜車に乗り込み、隣に座れた事で良しとした。
何てささやかな、俺の幸せ。だけどこれからはもう少し、欲張りになって行くからな。覚悟しておけよ、リロ。
「よーし全員乗ったな! じゃートアナに向けて、出発ーっ!」
――完――




