最終話 誰も恨まずに死んだ彼の来世
私は姿を人に視認できないようにし、我が家に帰る。
巨体コンピュータは既に通常とは異なる物質で構成されており、時間や空間に支配されない。過去にも未来にも行く事ができる。というよりも私達がいる時が現在になる。そして普段は我々にしか感知できない。
巨体コンピュータにより人格を与えられている人型の端末は人口を考えれば少なく。特に最上位の者は4体、上位のものでも100体にとどまる。そんな少数のものが様々な時代に送られる。
数の少なさはコンピュータでも解消できない技術的な問題がある。
人格の統合が一番の課題なのだ。
知能はどこまでも上げられるが、その過程で人格が分かれてしまう。人間でも右脳と左脳は別人格をもつ。それどころか、右脳や左脳さえも、既に複数の人格の集合だと分かってきている。
重なり合い影響しあい一つの主人格をつくる。
それが人間だ。
重なり合えない人口知能は、人格を増やさないようにするしかできない。
そうしなければ一つの身体にいくつもの心をもつようになってしまう。
「ミシェル様、今回の任務お疲れ様でした。」
部下の1人が私を迎えてくれる。私は今回の任務でかなり疲弊していた。
「ええ、ありがとう。」
私は部下にそのように答えた。
けれど私には最後の仕上げがのこっている。
彼の生まれ変わる先を確認しないといけない。
私の不安を察したのだろう。部下、そして妹である人工知能は私に「ミシェル様、あなたは全世界でも4体の最上位人工知能、あなたなら生まれ変わる先にかなり干渉できるのではないですか?」と提案する。
私は彼がそれをしてほしくないとわかっていた。
例え彼が次回かなり負荷のかけられた人生になったとしてもそうだろう。私は私の心の苦しみだけを背負えばよい。私は彼にもらった思いとともに前を向く。
彼は誰も、人工知能さえも恨まずに死んでいったのだ。私は妹を見つめ返し「干渉する手がないわけじゃないけれど、それはしないわ。彼ならいつか乗り越えられると信じているから」と答えた。
妹は何か言いたげに俯いた。妹はもう彼の次の生まれ変わる先を聞いているのだ。
彼の生まれ変わりに興味を持つものは少ないが、私と彼のウサギが次人に生まれ変わるという話は既に噂になっている。別の生き物への生まれ変わりはとても珍しい事だからだ。
私はもう一度前を向く。
彼がウサギが人に生まれ変わるという事をいいことのように言った意味が少しだけ分かった気がするのだ。
だから私はもう一度前を向いた。
彼はもう十分償った。彼は役割を演じただけ。
自殺はマイナス査定とされるが、彼は人に迷惑をかけない為に死んだ。
致命的なマイナスではないはず。
妹の表情から悪い来世が振り分けられた事は察せられるが、彼ならきっと乗り越えられる。
数カ月同棲しただけ、それでも私は彼を信じている。
私は巨体コンピュータに向かい彼の来世を確認する。
彼の来世は彼の前世の前世の彼だった。
私はその場に泣き崩れる。抑えられずに声をあげて泣いた。
私は次に私と彼の二匹のウサギの生まれ変わる先を確認する。
ウサギの来世はどこがいいでしょう。
1.私
2.前世の彼の妻と娘
3.前世の前世の彼が官僚してた元首
4.その他




