まだ大丈夫ですよ。
彼にはまだまだ体調の悪化は見られない
あの日以来私の朝食は少し豪華になった。
私はあの日から朝食を食べるようになった。
彼は私に会う前は朝食は簡単な数個入りのパンを一つ食べていたけれど今どうしているかは知らない。
彼が朝食を食べる時は私がねているからだ。
彼は夜眠り、私は朝眠る。良いコンビではなかろうか。
私達はまたウサギをかった。私は世界の全てを見渡すコンピュータから枝分かれした人工知能。ウサギの飼い方なんて知っていたけれど、彼がペットショップで熱心に飼い方を聞くので私もついでに聞いていた。私がペットショップのおじさんの間違いを指摘するとおじさんは笑って聞いていた。
私は1回目の時ほどの興味がわかず、今度は彼がゲージをさげている。
彼は休みの日の夜は私の食べたいものを作ってくれる。私が「ウサギ型のかわいいニンジンのケーキが食べたい」というと彼は
「やってみます」といって、ケーキの作り方の本と材料をかった。家に砂糖が残っていなかった為、彼はそれを買いに行く。私は新しいウサギと一緒に待っていた。
私には彼に言えない事がある。
ナノマシンは全ての人の行動をみているが、その情報でもコンピュータは感情までは分からない。もちろん表情や体温、声色などから予測はしているが、完全にはわからず、感情の方向性が分かるにとどまっている。
彼の前世の前世は世界中の戦争の原因を作った。
それでも彼が前世で良い人生をわり振られる予定となったのは、彼の行動がむしろ人類にマシな未来になる事が明白とは言わないがその可能性の高い事だったというのはあまり関係が無かった。完全に無関係とは言わないが決定打にはなり得ない。彼がその後悩み続けた事がコンピュータからはよい評価を得たのだ。
人の為に苦しい選択をし、それでも多くの人から恨まれ、そして、その事に向き合い続けた事が評価された。
それではなぜ彼は悪い人生が割り振られたのか。コンピュータのミスである。なぜか彼が生まれ変わるタイミングにコンピュータの処理に乱れがあった。
人々の恨みが何か形になったのかという、疑いを抱かずにはいられない。戦争は何百万の人を殺しその百倍の人の人生を狂わせた。
前世の彼は彼の前世の前世で戦争に負けた国で生まれた。彼の娘は敗戦国の出だった事がイジメに繋がった。彼の娘がイジメにより自殺したことが原因で彼と彼の妻はスパイの容疑者になった。
「人々の恨みが何か形になってコンピュータに影響を与えるなんて非科学的だ。」
私は今度はそう口にしてから首をふった。
彼は夕食後のデザートとしてニンジンのケーキを作ろうとした。彼は私の方を向き。
「すいません、ウサギの型を買い忘れました。すぐに買ってきます。」といった。
彼は青い顔をしている。冬の街、一緒に出かけたあと、すぐに砂糖を買いにいった。彼はきっと走って買いにいったのだろう。彼は帰って来た時、息を切らせていた。私は彼を抱きしめる。私は見ていらなかった。わたしは「行かないで」といった。
彼は「まだ大丈夫ですよ。」と答えた。
彼は”まだ”といった。彼は人工知能が現れたら体が壊れはじめる事をしっているのだ。
もともと噂話レベルでは知っている人はおおかった。




