私に怖いもの等ない
彼は私の為に食事と寝床を用意する。
1人暮らしだった彼は私に食事を作り、自分は購入していた惣菜を食べた。
食べられないものはないかと聞かれたので私は正直にイカやタコが嫌いだと答える。
彼は不動産屋に頼まれ、人気はないであろう広いが殺風景な部屋に住んでいた。食事が済んだ後は彼は布団が一つしかない事に気付き買いに出かける。
「私人工知能だからたったままでも疲れないですよ。なんなら同じ布団でも?」というと彼はホンの少し考える。おそらく私の食事等の様子から私の言葉が嘘だと気づいたのだろう。
彼は「そういうわけには行きません」と買いに出かける。帰ってきた彼は私の寝間着がない事に気が付き、彼は再度買いに出かけた。
「あんまりかわいい寝間着じゃないですね」と私がいうと彼はやはり少し考えてから
「例え人工知能だとしてもあなたのような美しい女性が、かわいい格好をして同じ部屋に居ては心臓に悪いです。」とお世辞を言った。彼が私に異性としての興味がない事は明白だった。彼は生まれ変わり20年たった今も前世の奥さんに不義理は出来ないと思っている。男前に生まれ変わった彼は過去何度か女性に告白され断っている。断る度に「お前みたいに暗いやつには本当は興味が無かった」というような事を言われていた。彼は前世で、結婚生活の後半は不倫をされていた事を知っていたはずだがそれでも彼はそういう。
私は「お世辞を言っても無駄ですよ」とむなしくこたえる。彼は洗い物を終わらせ、私が風呂に入る間は外に出るようにし、自分はシャワーだけ浴びてさっと着替える。彼は布団を敷き11時には眠りにつく。彼は目覚ましをかけなかった。私がテレビを観ていた為彼は「見終わったらテレビと電気をけして下さい。それではおやすみなさい。」と言った。私は「うん、おやすみ〜、」と応える。私は人工知能、常に情報のアップデートをしなければならない。夜中の2時くらいまでテレビを観ていると、彼のうなされる声が聞こえる。こんな情報はなかった。今まではうなされていなかった。
明るい部屋で寝ると悪夢をみやすいとはよく言われておりそれが関係したのかもしれない。彼は
「美智子、芽依」と言って手を伸ばした。
私はあわてて駆け寄り
「大丈夫ですか!?」と彼を揺さぶる。彼の瞳から涙がこぼれたあと彼は目を覚ます。彼は「どうかしましたか?」と落ち着いて答える。さっきまでの苦しみを何も感じさせない。
私は「あなた、うなされていたから。何か怖い夢でもみたの?」と尋ねた。はからずも膝枕のような体勢になっている。彼が前世の夢を観ていた事等明白だ。20年以上経っても彼は苦しみ続けているのだ。けれども彼は「おかしいですね。私に怖いもの等何もないんですが」と答えた。




