紙飛行機
なろうラジオ大賞6参加作品となります。
高校卒業の日。
セイシローとあんずは教室の窓辺の席でおしゃべりをしている。
「もう卒業か、結構面白い高校生活だったかな?振り返ってみてお前はどうだった?あんず」
「あたしは、高校では彼氏も作ったし第一志望の東京の大学にも受かったし充実してましたよ?」
「まあ、でもすぐに振られたのは気の毒だったけどね」
「余計なお世話ですよ」
あんずはセイシローの頭を叩くふりをする。
2人で笑いあういつもの光景。
「あんずはいつも前向きだよなあ。将来の不安とかないのか?」
その言葉を聞き
「はああっ」と大きなため息を一つ吐くあんず。
思わぬ反応に戸惑うセイシロー。
「あたしは春から親元を離れて遠い東京で一人暮らしするんだよ?知り合いもいない所で暮らすなんて、正直不安いっぱいだよ」
「そうだったのか?周りからはそういう風には見えなかったけどな」
「あたしの取り柄は明るさだからね!」
カラッと笑うあんず。
「セイシローは不安があるの?」
「そうだな、俺は地元で就職できたけど、今までバイトすらしたことがないから仕事って全然イメージができない。わからないことって、怖いじゃんか」
2人はしばしの沈黙。
そして
「喝!!」
あんずの突然の叫び声。
「うわっ、なんだよ急に!」
「そんな弱気はダメ!喝!喝!」
「考えてみてよ。小中高とここまで面白くもない勉強やら
しんどい部活やらを頑張ってきた自分がいたはずだよ。
自分のことはいつも隣で見ていた自分が一番知ってるはずだよ。だから頑張ってきた自分を褒めてあげようよ。認めてあげようよ。今までやってこれたんだし、これからもきっと大丈夫!」
「お前には敵わないな」
窓辺に腕をかけて外を見ているあんず。
青空の彼方に飛行機が雲を引いて飛んでいる。
何やら思いついた顔をした。
「ねね、紙飛行機作ろうよ!卒業の日に教室から紙飛行機
飛ばすなんて、エモいでしょ?」
「エモいのかそれ?すぐ落ちていったら縁起悪いな」
2人はプリントでそれぞれ紙飛行機を折る。
あんずはやけに凝った作りでとんがった機体になった。
セイシローの紙飛行機は適当に作った普通の機体。
「名付けてあんずファルコン号!セイシローの名前は?」
ニヤリと笑うセイシロー。
「X号だ!未来はわからない。しかし若い俺達には無限の可能性がある。だからX号だ!」
「よーし、それじゃあ飛ばそうよ」
2人は教室の窓から勢いよく腕を振る。2つの紙飛行機は
ピューっと風に乗って青空へと翔け抜けていった。
それぞれの新しい世界へと向かっていく若い学生たちの未来と、大空へと翔け抜けていく紙飛行機の姿を重ねました。作者自身も10代のころの様々な出来事は鮮明に覚えています。この作品は10代という特別な時期の学生たちの姿を生き生きと心理描写しました。とても前向きな作品になったと思います。
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