表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

サンプルシナリオ:蒼雷のキセキ

シナリオ

 ラウンド数:6

 インターセクト:行方知れずの異能物品

 ミドルステップ:2/3

 シナリオ令・共通:「行方知れずとなった異能物品の回収」


挿絵(By みてみん)


概要

 アイテムを巡ってPCが争奪戦を繰り広げ(てくれ)る(であろう)シナリオである。

 基本的にPvPとなるためGMには、状況を静観して強固にシナリオを進めつつ、極度にバランスが偏ったと判断したときなどに救済や助け舟を用意して貰いたい。

 また、シンプルゆえにラウンド数をかなり短めにとったが、場合によっては伸ばしてもらっても構わない。



インターセクト/事件:行方知れずの異能物品

 暦方山麓で発見が報告された異能物品、その行方が不明となったという出来事。これによる影響は不明だが、最悪の場合、大規模な争奪戦が発生するものと考えられる。


目録

 どうやら、行方が途絶えた異能物品『雷閃』の報告が最後になされたのは辰守区丑三町と正午町の狭間・・・・・・つまり、正午大橋とその周辺であると推測される。ならば、『雷閃』の所在もその付近である可能性が高い。

 この『情報』を獲得したキャラクターは、付随して、『情報/顔:雷閃』を獲得する。



アイテム:雷閃


 迅雷の如し走力を得る、と噂される異能物品。何らかの異能物品と思われるが・・・・・・

 この『情報』を獲得しているキャラクターは、『フィールド:正午大橋』にて『雷閃』に対する遭遇判定を行うことができる。この遭遇判定に成功したキャラクターは『雷閃』を獲得し、以降この効果での遭遇判定は行われない。



手の内

 青く角ばった、宝石のような半透明の石。手に取ると淡い燐光を放ち、奥底に秘められた蒼き稲妻の形をした異能の力を感じる。

 このアイテムを装備しているキャラクターは、戦闘ラウンド開始時、ランダムな汎用技能で『難度:4』で判定できる。

 判定に成功した場合、その戦闘ラウンド中一度だけこのアイテムを使用でき、『一般アイテム:神速のロザリオ』と同様の効果を発揮する(ただし、消費はされない)。



イントロダクション

 一子市暦方山麓近辺の都市部にて、異能庁へ、異能物品の発見報告がなされた。どうやら、リストに現状登録済みの異能物品や、悪名高き「鬼器七ツ七番」とは形質が合致しない完全に未知の代物のようで、回収と見分を要するとの判断が下された。

 しかし以降、続報がなされることは無かった。発見を最後に報告は途絶え、発見者と共に異能物品の所在は消失したのである。

 ───そして、いま語られたその発見報告と所在の消失についての風聞が、何者かによって漏出させられたことが、この事件の発端だった。

 そこからの展開は早かった。

 現状確認されていない未知の異能物品。その希少性、有用性、そして、危険性に期待を寄せる者はそれなりに多く、それを求める者たちは一子市に集った。

 異能者たちの争奪戦が始まる。



ミドルステップ

 一子市暦方山麓近辺の都市部にて、秘密裏に勃発した異能物品争奪戦。その幕に、一つの区切りが訪れようとしていた。

 一子市中枢。莫大な水の流れを湛えた一本の川を挟み、都心と古き街並みとを繋ぐ橋梁・・・・・・正午大橋。その橋脚から手すりを跨いで、“そいつ”は橋面へと戻り立った。その指先には、晴天の凍らせたかのような蒼さの透き通った石が一つ。

 ───そして、一拍遅れて橋に集った、幾名かの者共。いずれも使命を、あるいは欲望を胸に、この街に乗り込んだ異能者であり、猛者。

 争奪戦は、更なる激化の一途へと雪崩れ込もうとしている。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


NPC:藍魍 天地

 黒髪をもじゃもじゃと伸ばした、隆々筋骨な男。藍色の、袴のような裾の広いズボンだけを履き、上半身には何もつけていない。希代の鍛冶屋であり、今事件の渦中となっている「雷閃」を始めとした数々の異能物品を手掛けてきた。それらは今後、異能の世の表舞台に立ち、新たな騒動の火種となるだろう。


PCだけが遭遇判定に成功した場合

 風が流れ、木々が揺れ、葉と枝がこすれ合って騒然とざわめく山林。ざっ、ざっ、ざっ、と、定間隔的に響く、自然の物とは異なる擦過音が、何処かに聞こえていた。ただの登山者か、あるいは遭難者か。しかし、登山者にしては登山道やハイキングルートからは遠く、遭難者にしてはその音から察せられる足取りに迷いがなく、確固としている。

 茂みの緑をかき分け、土と木の根の茶色を踏み越えた先には、一人の大柄が歩いていた。藍色の袴のようなズボンだけを履いた、半裸の男。隆々筋骨な背に、もじゃもじゃとした黒髪を流した人物だった。

「おぉ!なんだお前さんは」

 近づけば、向こうもPCを気取ったようで、振り向く。やけによく通る声だった。


欄魍だけが遭遇判定に成功した場合

 風が流れ、木々が揺れ、葉と枝がこすれ合って騒然とざわめく山林。草木とその根を踏み分け、PCは、山の半ばを歩いていた。

 柔らかい地面に足から体力を吸い取られ、涼しい日陰でありながら頬を汗が伝う。疲労感に一息つき、身体を反らして、生い茂った木々の緑を見上げた。

 すると、視界の中央、山の斜面の上手に、一人の男が立っているのが見えた。

「よう、そこの!」

 男が声を張り上げる。

 奇妙な男だった。藍色の、裾の広い袴のようなズボンだけを履き、上半身には何も身に着けていない半裸の格好。肩の向こうでは、黒いもじゃもじゃとした髪が揺れているのが見える。

「こんな山ン中に何の用だい!」

 精悍な顔つきの男の声色はしかし、快活なものだった。


互いに遭遇判定に成功した場合

 風が流れ、木々が揺れ、葉と枝がこすれ合って騒然とざわめく山林。PCは道なき道を、草と木の根をかき分け踏み越えて歩いていた。地面は柔らかく、斜めであるがために、容赦なく体力を搦め取ってくる。

 ふと、開けた場所に出た。登山道にでも入ったのか、はたまた単に植物のない所か。

 木の幹に手をつき、項垂れた顔を上げる。

「おっ」

 一人の人間と目が合った。

 それは、奇妙な人間だった。大きな岩に腰かけた男。藍色の、裾の広い袴のようなズボンだけを履き、上半身には何も身に着けていない半裸の格好。剥き出しの背には、黒いもじゃもじゃとした髪が流れている。

「......なんだ!お前さんは!」

 男も驚いたようで、唇を尖らせて声を張り上げた。


PCが藍魍に異能物品を欲していることを伝えた場合

「ほーん。俺の作品が欲しいってえなら…くれてやる」

 欄魍は言葉を切り、ニヤリと笑って言った。

「ただし。...代わりに、試し切りに付き合って貰おうか」

 「雷閃」を持つキャラクターは、このNPCに「雷閃」を譲渡することができる。この場合、以降、このキャラクターとの戦闘に勝利したキャラクターは、このキャラクターが所持する任意の異能物品を獲得することができるようになる。 


アイテム

風塵刀:神力の聖酒、乱風

雨垂:神秘の宝玉、増幅。

大雲砦:神威の形代、呪詛:マジックミラー



NPC:黒い男

 黒い中折れ帽子に黒い外套、黒いスーツに黒い革靴の男。黒でない部分を挙げれば、帽子の下の整った顔と、帽子からはみ出た短い銀髪、袖から出た手だけであり、黒を身に纏った男と形容して差し支えないだろう。怪しい雰囲気だが、話しかけてみると飄々とした話しぶりである。どうやら異能者のようで、この男も「雷閃」を家中とした事件に関わる一人のようだ。しかし、その割には「雷閃」への態度が消極的・・・・・・

 その正体は秘密団体「暗穏堂」で最も有名なテロリスト「漆上 須彌」である。


PCだけが遭遇判定に成功した場合

 一子市中枢、流れる大河川の上に架けられた橋梁「正午大橋」は、一子市の交通の要である。絶えず車やトラックが行き交い、橋脚にぶつかって渦巻く水音と入り混じって、低い轟音が絶えず響く、その橋の、向かいの歩道に、一人の男が佇んでいた。

 それは、真っ黒い男だった。

「オヤ」

 向こうもこちらに気づいたようだ。顔を上げて眼を合わせて来、何事かを呟く。その表情は柔らかで、口元は薄く笑んでいたが、目線だけは鋭く、心中を見抜くような光を放っていた。

 一台のバスが通り、互いの視線が遮られる。一瞬の遮断の後の視界に、黒い男はいなかった。

「こんにちは。アナタもこっちですか」

 突如、背後から言葉を投げられた。慌てて振り向くと、真後ろには黒い男が立っていた。


黒い男だけが遭遇判定に成功した場合

「どうも」

 一子市枢、流れる大河川の上に架けられた橋梁「正午大橋」は、一子市の交通の要である。絶えず車やトラックが行き交い、橋脚にぶつかって渦巻く水音と入り混じって、低い轟音が絶えず響く、その橋を歩いていたPCは、突如、背後から話しかけられた。

 慌てて振り向く。すると、そこに立っていたのは黒い男だった。

「こんにちは。如何ですか、「雷閃」探しの調子は」

 その言葉だけで理解する。この男もまた、自分と同じように異能物品を求めてやって来た者であり、そして、恐らく異能者なのだ。立ち振る舞いから悪意や害意は見えず、何の狙いがあって接触したのかは分からないが、何らかの目的があるのだろう。

「そう警戒しないで欲しいですねェ」

 こちらの意向を見透かしたように、黒い男は呟く。やや呆れたような、僅かな諦念を孕んだ声色だった。


互いに遭遇判定に成功した場合

 一子市枢、流れる大河川の上に架けられた橋梁「正午大橋」は、一子市の交通の要である。絶えず車やトラックが行き交い、橋脚にぶつかって渦巻く水音と入り混じって、低い轟音が絶えず響く、その橋で、ある男と目が合った。

 それは、黒い男だった。

 奇妙な雰囲気。男の表情には、動きがなかった。男の柔らかく笑んだ口元に、鋭く周囲を観察する目線。それと絡み合い、互いを認識したのだろうが、それに対して男は驚くわけでも、失敗を悟るわけでも、こちらから目線を外すわけでもない。恐らく男は───

 直後、男は消えた。反射的に振り返ると、すぐ目の前に男が居た。

「あらら。随分と勘のいいヒトですねェ」

 男は呆れたように呟いた。



エンディング一  争奪戦覇者

 このエンディングは、シナリオ終了時、PCひとりが「雷閃」を獲得しているだけの時に発生する。

「ほー。成程なるほど、彼が争奪戦を制しましたか」

 男は双眼鏡を目から放し、すくりと立ち上がった。一子市都市部中枢である辰守区の、高層ビル群の一角───その頂点。ある一棟の屋上の、コンクリートの断崖に、男は腰かけていた。

「こう言っては何ですが・・・・・・順当な結果になってしまいましたねェ」

 摩天楼の吹き曝しの縁、空の上から街を見下ろすその男は、残念そうな口調とは裏腹に、楽し気に笑った。組織的な計画と、個人的な歓楽。どちらかが叶い、しかしもう一方は果たせなかったかのように。

「マ、いいでしょ。どうあれあの石ッコロ・・・・・・『雷閃』が最終的に誰の手に渡るかはもう───こっちで決めていますしねェ」

 そう残して男は、地上40mの屋上から消えた。一瞬だけコートが暴風にはためき、すぐにビル風の音に飲み込まれる。空中にも、地上にも。街のどこにも、その男の痕跡は遺らなかった。


エンディング二  四つの傑作

 このエンディングは、『NPC:藍魍 天地』が戦闘に敗北し、PCたちにアイテムが配布されるときに発生する。

 戦闘を終え、藍魍は地面へと倒れ込んでいた。天を仰ぎ、その大柄な手足を広げている。

「ふっ」

 突如、藍魍は息を零す。

「はははっ! はははははははっ!!」

 そして藍魍は笑い始めた。心底心地よさげに。腹の底から楽し気に。声を張り上げて、森中、空全体に響かせるように、笑い声を轟かせた。まるで、彼につられたように風が吹いて木々がざわめき、晴天を流れのはやい雲が過ぎて行った。

「はっはっはっはっはっは!! 楽しかった! こんなに体を動かしたのは久々だなぁ!!」

 手を顔に置いてそう言うと、藍魍はゆったりと上体を起こした。地べたにあぐらで座り直し、PCたちへと顔を向ける。

「持って行け。俺の作品・・・・・・今までの最高傑作だ。お前らなら、楽しく使ってくれんだろう」

 藍魍はニヤリと笑い、四つの品を差し出した。


エンディング三  奉納

 このエンディングは、シナリオ終了時、シナリオ令が「「雷閃」を巴大社に奉納する」の者が「雷閃」を所持しているとき発生する。

 一子市中枢、都市部の駅から数百メートル程度の場所に、巴大社は位置している。暦方山麓一帯のシンボル的な立場にあるその神社は、平日でも少なくない参拝者や観光客を迎え入れ、広い境内を賑わわせている。

 さて、街の喧騒と聖域の静寂を区切る大鳥居を潜り、PCは巴大社へと足を踏み入れた。まばらに落ち葉の混じった砂利道の脇を通り、現代的な造りと古風な造りの混じった社務所へと行き着く。窓向こうの巫女に話を徹すと、怪訝な態度を返されるが、青い輝石の高価そうな見た目が功を奏して神主が応じるという話に落ち着いた。

 十分ほどの後、狩衣に身を包んだ、神主と思しき人物がやって来た。

『雷閃』を見せると神主は驚き、どこで見つかったのかと尋ねる。どうやら神主も異能者のようで、巴神社の成り立ちについて知っているようだった。事情を聞き及んだ後、神主は立ち上がり、境内の奥、社の裏手にある小屋へとPCを連れた。

「ここが、異能に関わる奉納品の隔離場所です。この神社に宿る異能で封じてあります」

 そう言って神主は「雷閃」を受け取り、小屋へと安置して、戸を閉める。閂が落ちて、乾いた木の打ち付ける音が響いた。

「これできっと、あの輝石が戦いの火種になることは無くなるでしょう」


エンディング四  火矢

 このエンディングは、シナリオ終了時、エンディング二・三が発生している場合に発生する。

「なるほど」

 ある男は呟いた。

「そうですか。成程、成程・・・・・・」

 感慨深げに、何かを得心する言葉を零し、ついには笑いすら漏らす。

「ふふっ・・・・・・マッタク。こちらの思い通りにもならない」

 それは、真っ黒い男だった。黒い帽子を手で押さえ、黒い外套に、黒いスーツの裾を風に揺らし、黒い革靴を宙に放り出している。その男が座っているのは、地上40mのビルの上。一子市都心を展望できる、辰守区の高層ビル群の、コンクリートの断崖だった。

「「雷閃」は抑えられ、争奪戦はお流れ、混乱に乗じて動く計画はご破算・・・・・・ですか。ふふっ、これは───」

 そして、男は笑った。屈託なく、遠慮もなく、渦巻くビル風のうなりを掻き消すように笑った。

「面白い! ふう。やはり異能とは“こう”でなくては」

 そして男はビルから身を投げ、一瞬の風のなびきの隙間に掻き消えて、この街から姿を消したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ