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朝未だき
まだ明けきらない空を見ながら、煙草をふかす。
目を横にやると、長年胸焦がれている”あいつ”が気持ちよさそうに眠っている。
この光景を幾度となく見てきた。体は何回も重ねているのに、一度も俺のものにならない人…
まぁ、所謂”そういう関係”なのだろう。
無様だなぁ、自分。…俺がもし、思いを伝えたら”あいつ”は俺のものになるんだろうか。
不意に湧いた甘い考えに「っは」と嘲笑じみた笑いをこぼせば、静かな空気に溶けていった。
今更、伝えても思いは実らないし、この関係も崩れるな。
あいつに俺への愛情がなくともあの瞬間だけ、抱きしめてくれるなら俺はそれでいい。
微かに零れた涙はなかったことにした。
今日も俺は自分の気持ちに蓋をする
テーブルに”先に行く”とメモを残し、部屋を後にした。