第3話 幽霊水路は濡れている その①
『柳川には幽霊が住んでいる』
その怪奇話を私は知っている。
そういった話を私が好きだからではない。有名だからだ。
だから知っている。その怪奇話を皆は知っている。
柳川には一本の川が、町を両断するように長々と流れている。
とてつもなく綺麗・・・とは言い難いが、他の町で見られるような緑 と黒が混じり合ったような濁った色ではなく、透き通った純粋なる水の透明色が見て取れるほどの綺麗さだ。
その川である。
その川の両側に“枝垂れ柳”と“枝垂れ桜”が延々と茂る水路沿い(地域)がある。
そこにいる。
幽霊が住んでいるのである。
夜中、月夜の下で風によって枝垂れた枝が女の髪のように動いて見えて幽霊女がいると勘違いしたとかそんなチャチな話ではない。
いるのだ。自然と、その場所に。そして取り憑くという。ごく自然にだ。
時は選ばず、昼だろうが夜だろうが取り憑いてくるというのだ。
その取り憑き方も様々だ。
例を挙げればきりがない程、そのレパートリーは多い。
その中で特に証言の多い取り憑き例は “濡れている” である。
―――雨の日・・・ではなく、晴れた日。快晴たるその日。
僕は“枝垂れ柳”と“枝垂れ桜”が延々と茂る水路沿いを歩いていた。
人通りはまばら。決して多くはない水路沿いであったが、それでも《《安心感》》があった。
“幽霊水路”と呼ばれる水路沿い。
そこを歩くことは地元の人間では誰もが嫌なことだ。
幽霊が住んでいる水路沿い。
そんな所を喜んで歩く人間と言えば観光客、もしくはオカルト好きの変わり者ぐらいなモノだ。
しかし、そんな彼らもいるだけで役に立つ。何かあったら助けを求めれる。
そういった安心感があるから、僕はその水路沿いへと僕は歩いて行くことが出来るのだ。
安心感と共に、僕は一歩、二歩と歩いてその水路へと近づ
カラン・・・・・・
と、音がなった。唐突に。
ドキリと心臓が鳴る。そして察した。
柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳
川川川川川川川川川川川川川川川川川
柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳柳
僕===3
いつの間にか幽霊水路を歩いていることに。