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少し終わりの近い春。  作者: がっちゃん
1/3

この世界の空気のまずさ。

仲間に無線をする、ヘルメットをとる。途端に視界が明るくなる。

「流石に黒くなっちゃったか、」

先月買い換えたばかりのヘルメットだ、しかし、まあそうなるであろう。

頭に水をかけると珍しく花の香りがした。

もうこんな季節なのか、早いな、などとつい無駄なことを考えてしまう。

そういえば、自分の名前は春である。

ご察しの通り、何というか、春という季節に生まれたので名前が春なのだ。

秋でも冬でも夏でもない、春なのだ。

なのに、皆は春という季節を知らない。

心地よい春風とともに、蒸気の脂っぽい香りが鼻腔に突き刺さる。

多分、移動用の列車か何かかだろう。

その時、目の前が真っ暗になって

「お前、生身だろ? 死にてーのか!」

そんな声が聞こえたような気がしたが、意識が飛んだ。

~~~~~~~~~十年前~~~~~~~~~~

「春!」

彼女が呼んでいる。

前を見るといつでも彼女がいて、彼女はずっと、後ろのぼくのほうを向いていた。彼女は美しく、凛としていて白く、自分から見るととてもかっこいい!

「***」

名前を口に出そうとすれば言えるかもしれない。しかし、それは恥ずかしいし、何となく自分が、彼女よりも下に見られてしまう気がして

そっけなく答えた。

そんな日常が続くのだと思っていたものだと思っていた。

が、しばらくして、彼女は死んでしまったらしい。

~~~~~~~~~現在~~~~~~~~~~~

ここはどこだろうか、と思いとりあえず周りを見てみる。

「あっ大丈夫か?」という何とも言えない暖かい声が聞こえた。

「誰?」

「私?、エキドナっていうの、」

どうやらエキドナという女らしい。見るからに機関士だろう。すこし濃い肌とメリハリのついた体、堀の深い、でも非常に整った顔立ち。身長は、自分が170ないくらいだから173くらいかな?なんて思った。

敵、ではないらしい。

「あんた、あんなとこでヘルメット外したら死ぬよ!何してんの?」

「ああ、ってそんなに死素量多かったか?」

死素量とは、生物が魂を燃やしている時または死んだときに出る物質で、特に戦争などの戦いが盛んなところなどに多い。しかしながら、あそこは野原だったはず。そういえば、蒸気のにおいがしていたような気がする。

(カタンコトン、カタンコトン)

コップの水が揺れていいる。

地震か?

「あんたは、うちの電車の煙にやられたのよ」

「うち?」

窓の外を眺めてみる、すると

「え?」

外に広がっていたのは、後方に流れていく木々と、

「なんだこれ、」

宙に舞うどくろと、光に当たり可視化された死素の色だった。

「っ、」

思わず息をのむ。

因みに列車は多分、人口石炭で走っているのだろう、きっとそうだ。

石炭は化石燃料だ、死素が出てもおかしくはない。しかし多すぎる。

「何故こんなに死素が漂って、」

彼女の目から光が消えた。

「私らの命燃やしてるんだから当然でしょ?」

後ろの扉があき、人が入ってくる。

「誰だ!」

「やっぱりもう限界か、仕方ない、捨てるか。」

彼女は外に放り出された。

「エキドナ!」

自分もこのままじゃまずい気がして外に出た。

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