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リア充爆ぜろ委員会  作者: 桐生夏樹
第四条 女だらけの大運動会~部活対抗リレー(予選)~
22/47

第七項 アンカーは委員長

 生徒会長から、アンカー委員長へのバトンリレー。その光景を目の当たりにして、生徒会長に向けて指をさす理亞ちゃん。


「あ、生徒会長が委員長にバトン渡すよ! バトンどころか両手で委員長の手を握りに行ってるやん。ウケる。」

「本当だ! 私の時は除菌までしたくせに!」

「あはは、それな。」


 バトンリレーと言うよりは、感動の再会と言う光景だった。生徒会長が、委員長に飛びつき抱きつくくらいの勢いで。


 それを委員長が優しくいなす感じ。


 まったくなー。

 生徒会長、私に対しては両手を除菌させて(ひざまず)かせてバトンを渡させたくせに。なんだこの格差は。


 と言うわけで、生徒会長からバトンを受け取った委員長。


「零様、頑張って! 愛してますわ!」

「ありがとう、行ってくる。」


 その光景は新婚カップルの朝の出勤時、新妻が旦那さんを見送っているようにみえた。まさしく、その空間は別世界だった。


 委員長は、生徒会長にウィンクして見せ、そのまま走り去った。


「零様、すき……」


 膝から崩れ落ちる生徒会長。


 めろめろである。

 生徒会長めろめろ。もう溶けそうである。


 一方、我が委員会の委員長。

 

 って。


「はっや!」


 理亞ちゃんが奇声をあげるのも無理は無い。


 委員長の長いハチマキ、それに長い黒髪が後ろにたなびく。


 早い。


 かっこいい。

 伸びた背筋、大きく手を振り大股で走る姿、綺麗なフォームに思わず目が釘付けになる。


 足が長いから、これがまた絵になるのだ。

 撮影禁止なのが悔やまれるくらい。毎日寝る前に、その映像を眺めたいくらいには美しい。


 制服なのが逆に良いのだな。

 スカートを蹴り上げながら走る、テレビドラマのようだ。


 青春である。

 これが、青春である。

 アオハルである。


 ――リア充爆ぜろ委員会、追い上げます!

 ――きゃー、かっこいい!


 黄色い声をあげる場内アナウンス。

 もう主観が入っているではないか。


 でも、わかる。

 委員長、かっこいい。


 ――リア充爆ぜろ委員会、4位の書道部を抜かしました!

 ――かっこいい!


 ――リア充爆ぜろ委員会、3位の美術部を抜かしました!

 ――かっこいい!


 もう、書道部と美術部が可哀想でならない。

 委員長の引き立て役としか見られていない。


 だけれど、それほどに鮮やかに軽やかに、彼女らのことを抜いてしまったのである。


 観客も一斉に委員長の姿を目で追っている。

 それはもう、一幕のショーを見せられているかのようだった。


 ペースは落ちない。いつまでも走れそうだ。

 むしろ、ずっと見ていたい。感じていたい。委員長の美しい走りは、そう思わせるには十分だった。


 そして、ついに。


 ――リア充爆ぜろ委員会、2位の軽音部を抜かしました!

 ――きゃあああああああっ!


 悲鳴をあげる場内アナウンス。

 そんな偏った実況で良いのか?


 まあ、観客も楽しそうだから大丈夫か。


 2位の軽音部を抜いたって事は……委員長が走る前の順位は5位、ビリだった。


 しかも、ものすごく差が開いていたのだけれど、あっと言う間に3人抜いてしまったのだ。


 と言うか、むしろ心なしか抜かれた側の軽音部のランナーが、委員長に見蕩(みと)れていた気がする。もっと言えば、委員長の流れる黒髪の匂いを嗅いでいたような気もする。


 いいなあ。

 私も委員長の黒髪をクンクンしたい。


 実は匂いフェチの私。


 ……コホン。


 私の性癖は置いておいて、委員長は、ひたすら走る。


 残り100m。


 抜けるか……?


 握りしめた両手に思わず力が入る。


「零さまーっ!」

「委員長、いっけーっ!!」


 生徒会長と理亞ちゃんの声が届いたのか、更に委員長のピードが増す。


 そして、ついに。


 ――リア充爆ぜろ委員会、吹奏楽部に追いつきました!


 場内アナウンスの興奮は止まらない。

 本部席を見ると、マイクを握りしめて立ち上がる放送委員の姿が見えた。


 早い。

 それにしても早い。


 空気抵抗を防ぐためか、プレッシャーを与えるためか、吹奏楽部の真後ろに委員長が付く。


 中々抜けない。


 粘る吹奏楽部。


 あと30m。


 うわあっ!


 最終コーナーを回ったところで、吹奏楽部がスピードを上げた。ラストスパートだっ!


 まだ余力を残していたのか!


 ――吹奏楽部早いっ!

 ――リア充爆ぜろ委員会を突き放します!


 日頃鍛えている吹奏楽部。

 その中でも一番早い走者だ。腿が高くあがっている。その足の速さにも納得だ。


 だけれど、我が委員長だって負けていない。


 吹奏楽部の背中に食らいつく。


 再び、吹奏楽部の真後ろに付く委員長。


 あと10m。


 だめかっ?!


 あと5m。


 あと3m。


 そして、ついに。


 ――並んだっ!


 場内アナウンスの叫び声に鳥肌が立つ。


 あと1m。


 息をのむ観客。そして、私たち。


 そして。


 ――ゴール!


 ……え、どっち?


 委員長と吹奏楽部、横並びでゴールテープが切られたみたいだけれど、どうだったのかな……


 両膝に手をつき息を切らす委員長。


 本部テント内では、先生達が集まってモニターを見ながら協議している。ビデオ判定でもしているのだろうか。


 生徒会長は、タオルを手に持ち委員長に駆け寄る。


「零様、これを。」

「ああ、百々花、ありがとう。」


「委員長、お疲れ様です!」

「素敵でしたわ、零様!」


 理亞ちゃんと生徒会長は委員長のことを次々に(ねぎら)った。


 本当に早かった。

 肉眼では吹奏楽部と委員長、どっちが早いか判断をつけることは難しいくらいの接戦だった。


「同着……ですかね。」

「いや。写真判定が行われているはずだから、もうすぐ結果が出るはずだ。」


 私たちは本部に注目して、リレーの結果を待つのだった。

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