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リア充爆ぜろ委員会  作者: 桐生夏樹
第四条 女だらけの大運動会~部活対抗リレー(予選)~
21/47

第六項 ちゃんと跪きなさい。

 生徒会長は依然として私のバトンを受け取ろうとしない。


 生徒会長?

 リレーのルールは、ご存知ですか?


 前走者のバトンを受け取って走るんですよ?

 前走者のが渡そうとするバトンを()()()()()()()競技じゃ無いんですよ?


 生徒会長は混乱する私を尻目に、観客席に向かって合図をする。


「お前達、あの()()()()に例の物を。」


 すると、メイド服を着て白手袋をはめた女性2人が音もなくシュッと現れ、スリのように私からバトンを奪い取った。


 奪い取ったというか、「いつの間にか私の手からバトンが消えていた。」と言う表現を使った方が合っているかもしれない。


「えっえっ?!」


 メイドは私のバトンを手際よく、除菌スプレーで漏れなく丁寧に拭き上げた。


 なんですとっ?!

 そんなに私、汚いですか?

 恋に恋する15才の私からしてみると、地味にショックなんですけど。


 ――両手をお出しください。


 私にお願いする、もう1人のメイドさん。

 かわいい。


 思わず素直に両手を差し出す私。

 するとメイドさんは手際よく、私にビニール手袋を取り付けた。


 一方、バトンの除菌が完了したメイドさん。


 ――どうぞ。


 私にバトンを両手で手渡すや否や、2人の萌え萌えメイドさんは再びシュッと忍者のように消えてしまった。


 生徒会長は私に向かって、ビシッと指をさした。


「ほら、早くなさい。どんどん離されてますわよ。前走者からバトンを受け取らないと失格になってしまうのですよ!」


 ようやく生徒会長は、手を私に向かって差し出した。


 いやいや、アナタのせいでしょ。

 除菌して、手袋してから、次の走者にバトンを渡すリレーなんて聞いたことも無いし、見たことも無い。


 私が頑張って走った200mを返せ。


 だけれど気弱な私、そんなこと怖くて言えるわけ無い。


「あ、はい。」


 素直にバトンを生徒会長に手渡そうとする私。


 なのに。


「違う!」


 怒られた。

 言われたとおりにしたのに怒られた。


「なに突っ立ったまま手渡してるのですか? ちゃんと(ひざまず)きなさい?」


 ……え?


 貴族か。

 ルネッサンスか。


 念のために言っておくけれど、今はリレーの真っ最中。


 観客の視線が、熱く強く突き刺さる。

 こっち見ないでよーリレーを見てくださいよー……って、私もリレーをしてるんだった。見られても文句を言えないのだった。


 先頭グループは、どんどんじゃんじゃか先に行ってしまっている。


 ――リア充爆ぜろ委員会、トラブルかっ……?!


 (あお)る場内アナウンス。


 まあ、トラブルと言えばトラブルか。


 ここは、素直に生徒会長の指示に従おう。

 指示、じゃないな、ここまで来ると命令だ。


「あ、はい。」


 私は、右膝を地面につけ、バトンを差し出す。


「片手じゃ無く、両手で! 手のひらの上にバトンを載せなさい!」


 げ。

 まさか私の庶民人生で、跪いてバトンを両手で差し上げるシチュエーションがあるなんて思ってもみなかった。


「こ、こうですか?」


 うわー。

 これ実際にやると屈辱的だなあ。

 土下座レベルの屈辱じゃね?


「よろしい。さあ、行きますわよ!」


 満足気にバトンを受け取る生徒会長。


 もう、面倒くさいったら。


 生徒会長は、颯爽と振り返った。

 そして、前の走者を追う。追う。追いまくる。


 って、女子走りやないかい!

 両腕を外側内側交互にパタパタと振りながら、内股で走る。


 王道の女子走り。

 もしかしたら、これが皇族の走り方なのかもしれない。


 スタート前の生徒会長の意気込みは、一体なんだったのか。彼女、委員長に向かって胸張って「おまかせくださいっ」って、言い切ってたよね。


 ああそうか。


「おまかせください。」


 足が速いとは言っていない。

 嘘はついていない。


 やられた。

 前のランナーの差を縮めるどころか、どんどん開いていっている。


 あれで300m走れるのかな?


 そんな最中(さなか)、理亞ちゃんがニタニタと薄ら笑いを浮かべて、のほほんと私のところまでやってきた。


「うぃーす。由宇ちゃん。お疲れー。」

「まったく。理亞ちゃん、本気で走りなさいよね。」

「あはははっ! 由宇ちゃんに見せ場を作ってあげたんだよー。」

「そんな見せ場いらないって。」


 大体、理亞ちゃんが諸悪の根源じゃ無いか。


 エア聖火ランナー。

 理亞ちゃんが、ちゃんと走ってくれていたら、もう少しはマシになっているはずなのに。


 そんな私の気持ちをよそに反省する素振りを全く見せない理亞ちゃん。生徒会長が走っている様子を眺めながら他人事のように言った。


「つーか。ヤバいねこれ。ダントツのビリっけつじゃん。決勝進出は無いねー。」

「そうだねー。」


 まあ、しょうがないよね。

 決勝に出られないのは少し悔しいけれど、私は精一杯やったし後悔は無い。


 ――百々花!

 ――待ってるぞ!


 委員長!

 委員長の檄に生徒会長は過敏に反応する。


 ――零さまあああああっ!


 なんとっ!

 一気に生徒会長のスピードが上がったのだ。


 私たちは、そのスピードに目を疑う。むしろ私よりも早いんじゃない?


 生徒会長から、走った勢いで砂埃が舞い上がる。


 ――ドドドドドドドッ!


「うわっ! 生徒会長はやっ!」

「フォームは女子走りのままなのに、めっさ早い! ウケる!」


 手を叩いて喜ぶ理亞ちゃん。

 ちょっと私とは観点が違うようだ。


 前走者には大分離されていたのだけれど、どんどん距離が縮まっていく。


「あとは委員長が、どれだけ食い下がれるか。」

「だねー。そう言えば委員長、去年2~4走者、3人分走ったんだよね。」


 そうなのだ。

 去年は私たちが居なかったから、運動会には、委員長、生徒会長2人での出場だったのだ。


 それで第1走者を生徒会長、第2~3走者を委員長と言うハチャメチャなラインナップでリレー出場したらしい。


 色んな意味ですごい。


 理亞ちゃんも頷く。


「そう言ってたね。すごいよね。」

「えっと、200、300、400m、合計で700m。それで1位取ったんだよね。すごいよね!」


「それな。しかも決勝は体育会系の部活、と言うか現役陸上部も居たんだよね。」

「うん。つよつよだね。」


 そして、怒濤の勢いで生徒会長が300mを走りきり、いよいよ真打ち、委員長の登場である。

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