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リア充爆ぜろ委員会  作者: 桐生夏樹
第一条 リア充爆ぜろ委員会
1/47

第一項 カップルを見たら、どんな手を使ってでも別れさせろ

 ――誰だ!

 ――彼氏って言ったヤツわああああああっ!


 ここは私立慶蘭(けいらん)女子高等学校。

 いわゆる最上級のお嬢様学校。


 私は、この春入学したばかりの高校1年生。

 西園寺(さいおんじ)由宇(ゆう)


 うちの学校は必ず部活に入らなければいけない校則がある。


 と言うこともあって、放課後、中学からの友達、風祭(かざまつり)理亞(りあ)ちゃんと一緒に、たくさんの部室が並んでいる部室棟まで部活探しに来た。


「はあ、ろくな部活無いなあ……」


 理亞ちゃんは、「軽音部」、「美術部」、「茶道部」と言った部室の表札を見ながら不満気に(つぶや)く。


 そんなこと言ったって何処(どこ)の学校も、こんなものではないだろうか。


 ちなみに私は軽音部に入りたかった。むしろ、高校に入ったら軽音部に入ろうと決めていた。


 中学の頃は体育会系の部活だったのだけれど、高校の文化祭での軽音部の演奏を見て、興味が湧いたのだ。


 「ねぇ。あそこに軽音部あるよ! 見に行こうよ!」

 「あー……そんな定番の部活なんてつまらないよ。つぎつぎ……!」


 けれども、理亞ちゃんは軽音部の部室には目もくれず、表札を眺めながら早足で進んでいく。


 文句を言いつつ、特に入る部活を決めていない理亞ちゃんと、付いてきているだけで何の決定権の無い私は、渡り廊下を渡って、いつの間にか別館まで来てしまったようだ。


 別館は薄暗くて、お化けが出そうな雰囲気を(かも)し出している。なのに理亞ちゃんったら、全然平気な顔でどんどん奥に進んでいく。


 ずんずん行ってしまう理亞ちゃんを呼び止めようと声をかける。


「ねーねー理亞ちゃん、どんどん先に行かないでよー!」

「行く行く! 絶対、こう言う所に、面白そうな部活があるんだよ! さあ、いこいこ!」

「ええー。絶対やめといたほうがいいよー。なんか怪しいよー。」

「うーん、だってさ。今まで見た、どの部活もイマイチなんだよねー。」


 それにしても、別館の雰囲気、とても不気味だ。

 夕暮れと言うのもあるけれど、蛍光灯は切れかかっていて、チカチカと不定期に点滅し、薄暗くて先がよく見えない。そして、人の姿は見当たらず、ただただ、部室のドアが並んでいた。


「薄暗い中に、整然とドアが並んでるのって、怖くない?」

「だーいじょうぶだって! さあ。いこいこ!」

「うう、嫌だなあ……ちょっと待ってよー。」


 理亞は、私の言うことには耳を貸さず、歩みを止める素振りが全くない。


 もう私は、お化けでも出てきそうな、おどろおどろしい雰囲気に、恐怖しかなかった。

 

 すると、理亞ちゃんが、いきなり()()()()歩みを止めた。


「やや?! なんだここ? リア充()ぜろ委員会……? ここ面白そうじゃない?!」


 どうやら、理亞ちゃんがお目当ての部活を見つけたらしい。


「何それ?! いやいやいや。爆ぜろとか、絶対ヤバいよ。怖いよ。やめとこうよ。」

「名前からして、ぶっ飛んでるよね。説明だけでも聞いていこうよ。」


 理亞ちゃんは嬉しそうに、私の右手を引っ張った。薄暗い部屋に似つかわしくない晴れやかな表情で。


 理亞ちゃんが、こうなったら、私に拒否権は無い。答えはYESしかないのだった。


「うう……イヤだなあ。」

「大丈夫だよー。いくら何でも殺されるわけじゃないんだから。」

「そーだけどさー。」


 ――コンコン


 理亞ちゃんは、部室のドアをノックした。

 しかし、中からは何の反応も無い。


「こんにちはー!」


 挨拶をする理亞ちゃんは、中から反応がないことを不思議に思い首を(かし)げて、再びドアをノックする。


 ――コンコン

 ――コンコン


「うーん……誰も出てこないな。すみませーん!」


 (ごう)を煮やしたように、理亞ちゃんは部室の中へ声をかけた。


 しかし、部室の中は、依然とシーンとしていて、理亞ちゃんの呼びかけに誰も反応することは無かった。


 反して私は、何も反応が無いことに安堵する。


「まだ誰も来てないみたいだね。さ、帰ろう!」


 ――カチャ


「あ、何かあいてるよ?」


 理亞ちゃんは、私の言葉を無視して、ドアの取っ手を(ひね)った。


 鍵はかかっていないのか、スッとドアが開く。理亞ちゃんは「しめたっ」と言う表情でニヤリと微笑み、隙間から中を覗いた。


 って、いやいやいや、マズいっしょ。間違いなく不法侵入だよ。


「ちょっとー。勝手に入っちゃマズいよー!」

「いーからいーから。すみませーん! 誰かいませんかー?」


 理亞ちゃんは躊躇(ちゅうちょ)無く、部室の中に足を踏み入れた。


「理亞ちゃん、怒られるからやめようよー。帰ろうよー。」


 声を掛けるが、ここで「はいそうですか。」と引き下がる理亞ちゃんでは無い。むしろ、私の言葉が耳に入っていないようだ。


 理亞ちゃんは部室奥に掛かっている額縁を見上げた。


「あ! 額縁に何か書いてある。なになに?


 =====

  リア充爆ぜろ委員会五箇条

 

  第一条.男女恋愛禁止

  第二条.男と話すことも禁止

  第三条.むしろ男とは2m以上離れろ

  第四条.カップルを見たら敵と思え

  第五条.カップルを見たら、どんな手を使ってでも別れさせろ

 =====


 ……うわー。すご。」


 なんですって?!

 これって、スゴいと言うか、絶対ヤバいヤツだ。


「それって私たちが来ちゃダメなところじゃない? だって理亞ちゃん彼氏いるし……」


 ――彼氏……だと?

 ――誰だ?!

 ――彼氏と言ったヤツわああああああっ!


「ひゃあ!」

「ひゃあ!」


 私が「彼氏」と言うキーワードを出すや否や、背後から大きな叫び声が聞こえ私たちは跳びあがって驚いた。

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