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大好きなおばあちゃんへ  作者: 小松原 唯
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虐待の日々を乗り越えて

 

 ある日、2126グラムの小さな子供が産まれた。

 とてもか弱い産声をあげて頑張って呼吸をする。



「小松原さん、元気な男の子ですよ」



 産まれたばかりの赤ちゃんを抱き上げ、とても幸せそうな顔で微笑む母親である女性に手渡す。

 母親は受け取ると割れ物を扱うかのように慎重に頭を撫でる。



 僕は「(ゆい)」と名付けられた。



 一週間後。退院した母は僕を祖母の家へ預けるとそのまま蒸発した。



 無理やり押し付けられる形になったが、祖母はとても優しく面倒を見てくれていた。



 僕は生まれつき体が弱く毎月のように入院していた。

 それこそ小学校に上がるまでは家で過ごす時間より病院での時間の方が長いほどに。



 そんな僕が5歳の時

 祖母と一緒に買い物に出かけようとしていると祖母がこう言った。



「絶対に外でおばあちゃんって言うなよ」



 僕はよく意味が分かっていなかった



「え?なんでぇ?」



 そう返しても祖母は返事をしなかった。

 そのまま買い物へ行き、帰り道でこれからを決める出来事が起こる。



 祖母とふたりで歩いていると「あら、川田さんやないの」とすれ違いざまに祖母に話しかける女性がいた。

 女性同士の立ち話はとても長かった。



 トイレに行きたくなった僕は祖母に声をかける。



「おばあちゃん、僕トイレに行きたい」



 その瞬間、祖母の顔は眉間にしわを寄せとても怒っていた。

 女性との話を早々に切り上げ僕の手を引っ張っていく。



「痛い!おばあちゃん痛いよ!」



 祖母の手にはとても力が入っていた。そして連れていかれたのは人が通ることのない細い路地だった。



 パシン!



 その音と共に顔に鈍い痛みが走った。僕は何が起きたのかわからなかった。



「おばあちゃんって言うなって言うたやろ!」



 そう言って祖母は手を振り上げ僕の顔をめがけて振り下ろす。



 パシン!



 ようやく先ほどの痛みが叩かれたものだと理解した。



 頬を叩かれ泣きじゃくる僕に祖母は舌打ちをしながらその場を去っていく。



「待ってよぉ」



 そんな祖母の後ろを僕は黙って付いていくほかなかった。なぜ叩かれたのか、おばあちゃんと言ってはいけない理由はなんなのかもわからないまま。




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