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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
サルザールト編
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20 気持ちの矛先

2人はアストラたちと夕食を食べて部屋へ戻る。


「あとで救急箱借りて持っていくねー」


ノアが声をかけるが、マリッサはなんのことがわかっていないようだった。そんな様子を汲んだノアがマリッサの左手を指差す。


「え、いつ……」


「サシャさんと話してるときにぶつけたりした?」


マリッサは心当たりはないようだった。


「まあいいやー。

明日はブライトさんと隣街に買い出しに行ってくるね」


明日は小島に行く日ではない。小島に行かない日は二人は弟子たちの手伝いをしている。


「水仕事はできないだろうから、そういうのは帰ってきたらやるから残しておいてねー」


手早く消毒を済ませたノアは、マリッサの部屋を出た。

マリッサはベットで横になる。


「間違ってるって分かってるのに……」


小さくつぶやいて眠りについた。



「ブライトさん、無理言ってすみませんー」


ブライトは弟子の中でも最年長の男性。ノアとは年も近く、仲が良い。


「いや、サシャが無理いったんだろ。同じ吸血鬼だから話しやすいのかもな」


「無理にじゃないですよー、それにブライトさんだって吸血鬼じゃないですか」


「俺は年が離れてるからな」


「ブライトさんと俺だと数歳しか変わらないですよー。たぶんマリッサのことだと思います」


笑いながら二人は船に乗る。マリッサに知られないように秘密裏にノアがブライトに頼んでいた。


「マリッサもいい子だよなあ」


「ええ」


「お前ら付き合ってるのか?」


「いいえー」


「仲良さそうだけどな」


「仲は良いですよ、でも俺付き合ってる子がいるんでー」


船に乗りながら二人は談笑を続ける。


「今日夜一緒に飲まないか?」


「ええ、是非」


船は小島に着いた。ノアとサシャが話す間は、ブライトは船で待つことになっている。



「急に呼んでしまってすみません」


「大丈夫だよー。ブライトさんにこっそり送ってもらったからー」


小屋の中に招かれると、本題に入る。


「マリッサさんのこと、気にしてあげてほしくて。放っといたら無茶しそうで」


「もちろんだよ」


「あまり詳しく話せないんですけど、昨日話しをしたときにそう思って。

手のひら、傷が付くくらい握るくらいには辛そうで……」


「手の傷はその時のだったんだね。

大丈夫、マリッサと話してみるよ」


暗い表情から少し明るくなったサシャがお礼を伝える


「ありがとうございます」


「こちらこそ教えてくれてありがとうー。あと、アストラさん明日ついてきてもらって平気かな。もっとあとの方がいい?少し急ぎの話がしたいって」


「大丈夫です。でもお二人も来てもらえませんか」


「うん、行くよー」


手を振りながらサシャの家をあとにして、ブライトと一緒に街に戻る。別の街への買い出しも済ませてアストラの家へと戻った。



夕食を済ませて、ノアはマリッサの部屋へ向かう。


「傷どうかなー?」


「もうだいぶ治ったよ、ありがとう」


念のためみせてもらうと大分傷は塞がっていた。


「もう絆創膏とかは貼らなくて良さそうだねー」


「ありがとう」


「ねえ、マリッサ。なんか悩んでない?」


「え、ううん……」


返事はとても小さい声だった。


「俺の思い過ごしだったらいいんだけど。無理に話さなくていいけど、何かあれば力になるよ」


ベッドの端にマリッサ、その近くに椅子をおいてノアは話をする。

少し間が空いて、マリッサは口を開く。


「なにかしてほしいわけじゃないんだけど……」


「うん」


「私、どうしたらいいかわからないの。シエラトエラ戦役の犯人は純血鬼だと思っていたの。でも、サシャさんは、人間だったって言ってて」


詰まる言葉を待つノア。


「ずっと犯人を探してたの。復讐がしたくて。純血鬼なんて高貴な身分だから、きっと何もできないんだろうけど」


「マリッサ……」


「復讐なんて良くないって分かってる。分かってるけど、法で裁けないなら自分でやるしかないって思ったの。でもそれも違うかもしれないってサシャさんの話を聞いて思ったの。でも10年間そのために色々考えてうごいてたから、どうしたらいいかわからない」


「マリッサ、辛かったね。

亡くなったご両親が大好きだったんだね」


ノアはマリッサの手を取り話す。

その言葉にマリッサは涙を流す。


「うん、お父様もお母様も優しくて大好きだった……」


「マリッサ、復讐はやめよう?マリッサの手を汚す必要なんてない」


「復讐なんてしてもお父様もお母様も戻ってこないって分かってるけど……」


ノアはマリッサの横に移動して頭を撫でる。


「俺が犯人を探すよ。それで法できちんと裁いて貰えれば復讐なんてしなくて済むよね?」


「もし、純血鬼だったら……」


「詳しくは話せないけれど、心当たりはあるからもう少し待って?俺に任せてくれる?」


マリッサは頷く。頷くのを確認したノアはマリッサを再度撫でる。


「いつもごめんなさい。結局ノアに助けてもらってばっかりで」


「いいんだよー。

マリッサもラウルもザイアスもアメリアもみんないい子だから、幸せになって欲しい。俺の出来ることなら助けになるよ」


「ありがとう、でも無理しないでね」


なにか飲み物を取ってくるといい、部屋を一度後にするノア。

ノアが戻るとマリッサの涙も引いていた。


「私もみんなが大好きだから助けになりたいな。この旅についてきた本当の理由は純血鬼を探すためだったの。でもそれはもう必要がないからノアたちの助けになりたい。あと家のために色んなところを見てみたいな」


「頼りにしてるよー」


いつものように笑いながらノアはマリッサの部屋をあとにした。

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