19 秘密のおはなし
サシャに食料を届ける日に再び二人は小島へと向かった。小屋をノックして声をかけるとサシャは出てきてくれた。
「いつもありがとうございます。でもまだ……」
「決めるのはゆっくりでいいよー。今度アストラさんも話をしたいって。今度一緒に伺うけどいいかな」
アストラの話とは学園に入学してみないかという話。費用面などの話もあるのでアストラから直接したいとのことだった。
「はい。もちろんです。本当は私が行くべきなんですけどね……」
「無理は禁物だよー」
「ありがとうございます。あのマリッサさん、二人で話したいことがあるんですけど、海辺に行きませんか?」
「行っておいでー。俺は船で待ってるよ」
話がまとまったところで、ノアは船に戻り、二人は船からは少し離れた海辺へと向かった。
少し古くなった丸太のベンチがあり、そちらに二人は座る。
「あの、前に私と話してみたいって仰っていたと思うんですけど」
「はい。私の両親もシエラトエラ戦役で亡くなっていて、話しやすいかなって思って」
「そうだったんですね……」
「ごめんなさい」
謝るマリッサにサシャはたじろいだ。
「私、シエラトエラ戦役でご家族をなくされたのが原因かと思っていて、少しでも気持ちを共有できるかなって勝手に思ってました」
「いえ、謝らないでください」
「サシャさん、ありがとうございます。
捺しゃ産から話を聞くまで私、吸血鬼いえ純血種と呼ばれる吸血鬼に両親は殺されたと思ってました。でも、それも違うのかもしれないですね」
マリッサが話すと、サシャは動揺したのか肩が動いた。
「え、純血種に……?」
「俺たちは純血種だって叫んでました。三人組だったと思います。歳は20代くらいに見えました。私はその言葉を鵜呑みにするしかなかったけれど、私が恨む相手は違うのかもしれない事に気づきました」
「……」
言葉を発さないサシャをみて、マリッサは続けた。
「サシャさん吸血鬼なのに、こんな話してごめんなさい」
「いえ……、私も何も気の利いたこといえなくてごめんなさい」
サシャが申し訳無さそうにすると、マリッサは首を振った。
「私は犯人や動機を知りたいとずっと思ってます。怒りや悲しみをどこにぶつけたらいいかわからなくて。情報も相手が純血鬼ということしか分からなくて」
マリッサは話しながら色々な感情からか手を強く握りしめていた。爪が手のひらに食い込むくらいに。サシャもそのことに気づいていた。
「すみません、話やすいかもって言っておきながら、私ばかり話して」
「いいえ、お話し聞けてよかったです。あと当時の話をして信じてくれたのも師匠たち以外にお二人が初めてだったので、お会いできて良かったです」
「そう言っていただけると嬉しいです」
その後二人は他愛のない雑談をしていた。二人はは雑談をするうちに敬語が外れていった。
「ノアさんはどういう仲なの?」
「ノアは学園の時からの友達だよ」
「吸血鬼も一緒なの?」
「うん。始業時間が選べて、吸血鬼は夜からが多かったと思う。でも多分学園によって違うかな」
サシャは学園の話に興味津々だった。
「いいなあ、兄弟子たちもみんな学園出てるんだよね。でも勉強もできないし、なんせお金もないから今すぐは無理だけど。年齢制限ってないよね」
「私が通っているところはなかったよ。やっぱり十代から二十代が多かったけど」
「そうなんだ、良かった」
再びサシャは笑顔になる。
すると、そろそろ夕暮れが近づいてきたためか、ノアが迎えに来てくれた。
「ごめんねー、話途中に。
そろそろ暗くなるから戻るってー」
かれこれ数時間話していたようで二人は驚き顔を見合わせ笑った。
サシャを小屋へ送り届けて、ノアとマリッサは戻ろうとすると、サシャが神妙な表情でノアに耳打ちする。
「明日、お一人できていただけませんか」
ノアはサシャの意図を汲み、マリッサに気づかれないように頷いた。




