17 ペンダント
イチェスは観光客よりもガラス細工を買い付けに来る商人が滞在することが多いらしく、宿も一人部屋が多いらしい。今夜の宿も一人部屋である。
アメリアが部屋で明日の用意などをしているとノックの音がする。
「俺だよー、アメリア」
突然の来訪のためノックをしながら声を出すノア。普段からマリッサとアメリアには、相手がわからないときに不用意に出ないでと言っているためである。
アメリアはノアだということに気づきドアを開ける。
「どうしたの?」
「少し話をしたいなって思って、もう寝る?」
「ううん、大丈夫だよ」
アメリアはノアを部屋へと入れた。
「これ、プレゼント。色がアメリアの目の色みたいで素敵だなあって思って」
先程見ていた陶器を渡される。
「ありがとう。グラデーションが綺麗だね」
アメリアも気に入ったようで、笑顔で受け取った。
ノアの用事は終わったようで、部屋をあとにしようとすると、机に置かれた小箱が気になったようだ。
「アメリア、これ何?」
「劇のお礼にってレヴァントゥレットの王様から頂いたネックレスが入ってるよ」
「少し見せてもらえないかな」
アメリアは箱を開けてネックレスを見せる。
「これは……」
ノアはネックレスを見ると何かを考えるように黙り込んだ。
「どうかした?」
「陛下は劇を演じてくれたことにとても感謝しているんだね、これ、大きな功績を上げた者に贈られるものだよ。できれば身に着けているといいよー。お守りになるから」
「教えてくれてありがとう、お守りになるんだ。シェーナにも教えてあげたかったな」
「んー、身に付けてたらカリンさんが気づくんじゃないかな」
「なら良かった」
どうやらある程度力のある、言い換えると貴族階級の吸血鬼であれば、気づくもしくは知っているらしい。カリンも貴族階級の吸血鬼のため気づくはずとのこと。
「私も付けておくね。なんかもったいなくて飾っておくつもりだったけど」
「それはもったいないかなー」
と言いながらアメリアはネックレスを箱から出した。
「ザイアスとラウルが驚くかもねー。いっぱい自慢しちゃいな」
笑いながら言うノアにつられてアメリアも笑う。
「そろそろ戻るねー。少し会えなくなっちゃうけどアメリア、気をつけてね」
「ノアも気をつけてね」
部屋を出る際に、おでこにキスを落としてひらひらと手を振りながらノアは部屋を出た。
「ずるい……」
キスをされたおでこを両手で抑えながら顔を赤らめ、アメリアは呟いた。
次の日になり、一行は一緒に朝食を取ることにしている。もうすでに出る準備を終えて、朝食の後はノアとマリッサは工房へ、三人はリッシェへ向かうことになっている。
「アメリア、それは……」
集合場所についたザイアスが、アメリアがしているペンダントを見て、挨拶も忘れた様子で驚いていた。すでにマリッサとアメリアが到着している。
「この間の劇のあとにレヴァントゥレットの国王陛下にいただいたの。昨日、ノアがつけておくといいって教えてくれて」
「ああ、そうだな。これは陛下と……俺にはわからないけどどなたかの力が込められている」
マリッサもペンダントを覗き込むが、何もわからない様子で首を傾げていた。
「私もよくわからないんだけどね」
なんてアメリアが笑っていると、ラウルも到着して同じような会話をした。
「そのペンダントは……陛下とどなただろう。俺は王族の方々は陛下と王太子殿下と姫様しかお会いしたことがないからなあ」
「王太子殿下とお会いしたことがあるのか?」
「うん、言ってなかったかもしれないけど、アルと俺は小さいときに殿下と遊んで頂いてたから。アルと俺の父上が陛下が学園に行ってたときに知り合ったみたいで」
「陛下はたまに学園に通ってたって聞いたことがある。常識の更新って仰っていたって父上が」
二人が話しているところに、ノアも到着した。
「おまたせー、あ、そのペンダント?凄いよね」
ザイアスとラウルが二人して頷く。
「マリッサにも何かあればよかったんだけど、俺は流石にそんな功績立ててないから」
ラウルがつぶやくように言うと、ノアがフォローする。
「ここでは俺がちゃんと守るから大丈夫だよー。まかせてー」
爽やかな笑顔で言うノアにザイアスは苦笑している。
「確かにノアがいれば安心だな」
ザイアスは苦笑しながらも、ノアのことを信頼している言葉をかけた。
全員揃ったので朝食を取りに、朝から開いている食事処へと向かった。




