10 女子会
マリッサは朝早くに目が覚めた。顔を洗い身支度を整え、朝食に向かう。宿にはレストランも併設されており、朝食はそこで取れるようだった。
レストランに着くとザイアスが一足先に朝食を取っていた。マリッサは一緒に朝食を取ろうと、テーブルへ向かう。
「早いね」
「少し買い物に出かけようと思って。マリッサも予定なければ着いてきてくれないか」
「いいよ、夕方までなら。どこ行くの?」
「ミリア嬢に贈るヘッドドレスを買いに行きたい」
照れ臭そうに言うザイアスに対しマリッサが笑顔になる。
「いいね、行こう」
マリッサも乗り気のようで即答した。
朝食を食べ終え支度をして二人は街に向かった。
宿から少し離れた普段はあまり足を踏み入れない高級なお店に入り店内を見る。女性向けのお店で男性はザイアス一人。店内を回るとザイアスは気に入った色のヘッドドレスを見つける。花とリボンがあしらわれたデザインのものだった。
「綺麗な色だね。ザイアスの目の色と一緒」
「いいと思うか?」
「うん、華やかだしパーティ用のドレスとかと合うと思う」
ザイアスは購入を決めて、会計を済ませる。
昼時のため、昼食に向かった。手頃なレストランに入る。
「ありがとう、着いてきてくれて」
「ううん、いいの見つかってよかったね」
「ああ」
注文したものが届き食べ始める。
「アメリアとか私とかの誕生日プレゼントとかって一人で買うの?」
「いや、ノアと一緒が多いが今回は声をかけづらかった。ちょうどマリッサと行けてよかった。女性ならではの意見もあるかなと」
「うーん、役に立てたかわからないけど」
「いや、そもそも女性向けの店に一人で入りづらい」
ザイアスでもそんなことを気にするのかといいたげに、マリッサはくすっと笑った。
宿へと戻ることにすると、宿の近くで出かけていた様子のラウルに会った。
「どうしたの」
「いや、慰霊の日用に少し良いスーツを買いにいってた。今年は節目だからちょっとね」
「そうだね」
シエラトエラ戦役から十年。今年が節目の年になる。話を聞いていたザイアスも難しい表情を浮かべていた。
夕方になりアメリアとマリッサが出かける。ラウルが待ち合わせ場所である劇場まで送ってくれることになった。劇場に着くとカリンが待っており、ラウルは宿に戻った。
カリンが予約してくれているお店へと到着した。今回もコース料理のようだった。
二人は美味しいと言いながら食べ進め、三人で故郷の話や食事の話、趣味の話などで盛り上がった。
そして、女性三人も揃うと恋愛の話もなる。
「カリンは付き合ってる人いないの?」
話の流れでマリッサが聞く。随分打ち解けたようだった。
「いないよー。この間幼なじみに盛大に振られた。いや告白もしてないか」
あまり引きずっていないのか笑い話にしている様子だった。
マリッサとアメリアが不思議そうにしていると、
「いやね、私吸血鬼なんだけど相手が人間で、吸血鬼だって言ったらもう会いたくないって言われたの」
あまり周りに聞こえないように声を落としてカリンは話す。
「最初は悲しかったんだけど、私個人じゃなくて吸血鬼という種でしか見てもらえなかったって思ったら、なんかその人のこと興味なくなったんだよね」
カリンは続ける。
「吸血鬼じゃなければとも思ったけど、それは絶対変えられないから。あ、ごめんねつまらない話して」
真剣だった表情を崩す。
「ううん」
「ねえあの三人の中で誰が一番かっこいいと思う?」
笑顔で話をいきなり変えるカリン。興味津々そうだ。
「えー」
なんて言いながらもマリッサも楽しそうで、アメリアも楽しそうに会話をしていた。
食事を終えて店を出ると、ノアが迎えに来てくれていた。
「ごめんね待った?」
「ううん、前回怖い思いさせちゃったから早めに来ただけだよー」
アメリアが聞くとノアは答える。前回とはカリンとアメリアが食事に行ったときの帰りの話。
「カリンさん、このあとサイアスとラウルと飲もうって話してるんだけど来ない?もちろんアメリアとマリッサも」
ノアの誘いに乗った三人は宿へと向かった。
いつも通り飲みながら他愛のない話をして盛り上がる一行。
「みなさんいつまでいるの?」
はじめはザイアスとノアには敬語で話していたが、今は他の三人と同じように話すカリン。
「公演が終わるくらいまでの予定だ」
「三日後までいるなら、劇観に来てほしいな、初めての単独主役なの」
カリンがが主役で出演予定の劇がアメリアの劇終了後の三日後から公演とのことだった。マリッサとアメリアが決定権を持つザイアスを見つめている。
「ああ。初日公演ってチケット取れるものなのか」
「確保するよ」
「ありがとう、楽しみにしている」
口には出さなかったが、マリッサとアメリアは観に行きたかったようで、表情が明るくなった。
日が変わるくらいのときにマリッサとアメリアは自室へと戻った。
「カリンはアメリアが出る劇には出ないんだよね」
気になったようでラウルが質問する。
「うん、出ないよ。私くらいの年齢の役が姫様だけだから」
「なるほどー」
「アメリアに断られたら、私がって話があったけど、恐れ多くて断っちゃった」
と笑い飛ばすカリンに同意する三人。
「それにあのときのアメリア以上の完成度は私には正直無理。あの紅い眼が似合う人ってなかなかいない」
はっきりと断言すると、思い出したかのようにラウルが話す。
「なんかこの間城のパーティで少し話題になってたよね」
「側近の人が観に行ってあまりにも感動して、陛下にも伝わったって聞いたよー」
ラウルとノアがパーティできいた話を口々にする。今度はザイアスがカリンに尋ねる。
「姫様にお会いしたことあるのか」
「うん、姫様のお誕生日パーティで。歳が近いからって連れて行ってもらえたの」
「もしかしたら俺たちあったことあるかもねー」
そして盛り上がっているうちに日付をまたいだ。
ラウルが明日が早いため寝るとのことでこの日は解散となった。




