6 別行動
一旦ラウルの宿が近いところまで戻り、レストランに入って食事を取った。アルベールトが滞在する宿も近所にあるとのことで酒を購入し、宿へ向かう。
「一緒にお酒を飲むのも初めてだね」
買ってきたワインを開けながら、アルベールトは話す。
「そうだね、成人してからは会っていないから」
「手掛かりはあるの」
ラウルの事情を知っているらしくアルベールトは問うが、ラウルは首を横に降る。
「あの方たちとは何処であったの」
「だけど、元々マリッサと知り合いだった」
「なるほど、お父上のことはこちらでも探してみたことはあるけどわからない。でも陛下と仲がよろしいようだったからもしかしたらなにかご存知の可能性はある。なにかわかったら連絡するよ」
「そうか……ありがとう」
「アルはこのあとどうするの?」
「一旦実家に帰るよ、そのあとはまた家業かな。ラウルはこのままあの方たちと?」
「うん、そのほうが情報は集まりそうだから」
「そうだね、ザイアスさんは特に集まりそうだね。ノアさんはよくわからないけれど」
ザイアスは権力がある公爵家の子息。集まり情報も多い。ノアは、公爵家ではないため、ザイアスの情報量には劣る。
「いや、ノアは飄々としているけどかなり頭が回るから、少ない情報でもなにか気付いてくれるかも。でもザイアスも頭良いね」
アルベールトは別のワインを開ける。
「仲いいんだね」
「歳も近いから」
なんて言いながらラウルは笑った。
「女性二人とは仲いいの?」
アルベールトは興味ありそうにニコニコ笑いながらラウルに聞く。
「マリッサとはあの一件後にあって、仲良くしてもらってるし彼女と彼女のご実家には頭が上がらない」
サーカス団の団員がマリッサの実家にお世話になっていることを話す。
「そっか。お優しい方たちだね」
「それまでも、マリッサと遊んだりしてたときは心の支えだった。大変なことも多かったけど会ってるときはとても楽しかった」
マリッサが学園に行く前のことをラウルは懐かしそうに話す。
「アメリアさんとは?」
「アメリアとは最近は仲いいよ。最初は少し距離をおいてたから」
「なんで」
「なんか羨ましく思ったんだ。苦労とかと無縁で幸せそうなあの子が。でもそんなことはなかった。人ってそれぞれ葛藤して折り合いつけてるんだなって思った」
アルベールトは少し表情を暗くする。
「ラウル、辛いことがあったからってずっと辛い思いをしなくていいんだよ。サーカスの子たちにも笑っていてほしいでしょう?」
「ああ」
やさしい表情でラウルは返事をした。
「明日はどうするの」
日が変わりそうな位の時間にアルベールトは尋ねる。
「イチェスのことを調べると思う。その後行くかいかないかはわからないけれど」
「そっか、一緒に戻ろうて言おうと思ったけど、まあ帰省したときまた会えるよね」
ラウルは頷いた。明日に響かないようにこの日はラウルは宿に戻ることにする。
次の日になり、ザイアスとマリッサは観光案内所へ、ラウルとノアとアメリアは街で聞き込みをすることにする。
ザイアスとマリッサが観光案内所で尋ねるといくつか教えてもらえた。職人の街と呼ばれるところでガラス細工を始めとしたさまざまな工芸品を製作しているらしい。今は、薔薇祭りの前後一ヶ月は色々卸す影響で休みとのこと。
職人見習いや観光客用の宿もあるとのことだが、現在は休業中らしい。
二人は教えてくれた人に礼を伝えて、観光案内所を出た。
「今は行っても意味なさそうだ。ノアたちとも合流してどうするか決めたい」
とりあえず二人は宿に戻った。
他三人も戻っていたようだった。
「観光客が多いお土産屋さんに行ってみたんだけど、今はお休みらしいねー」
「観光客案内所の人も言ってた、お祭りの前後一ヶ月はお休みって」
「一旦俺たちは帰省して、その後向かおうと思うがそれでいいか。アメリアとマリッサは、俺がアメリアの家まで送る」
「そしたらさ、明後日戻るでもいい?アルもいるから」
「ここからリッシェは近いから構わない」
話はまとまり、明日ザイアスに連れられる形でアメリアとマリッサはリッシェに戻ることになった。
明日になり、鉄道に乗るために駅へ向かう。ラウルとノアも見送りに来ている。三人は鉄道に乗ってリッシェへと向かう。二時間ほどで到着し、アメリアの家へと向かう。
「俺の使用人にも声をかけておくから、何かあればすぐに伝えてほしい」
「ありがとう」
ザイアスとは家の前で別れ、アメリアとマリッサが家の中に入るのを見届け、再度サルザールトへ戻った。
事前にラウルがアルベールトのところへ向かい、事情を話していたため、四人で船でレヴォントレットに戻ることになった。




