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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
サルザールト編
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2 ジンクス


一方、ノアとマリッサはバスで東に向かう。二十分ほどで祭りの会場へと到着する。こちらの会場は薔薇園のようだった。広い公園に一面の薔薇が咲いていた。出店も少し出ており、薔薇にちなんだ飲み物や食べ物、アクセサリーなどが売られていた。

客もそこそこにいるようだった。


二人はは喉が乾いたため、飲み物を買う。薔薇を使った紅茶のお店だった。


「お二人共、ご観光ですか」


「はい」


「このお祭りは三日後からが本番なので、また来てくださいね」


「本番ですか?」


「ええ。今は、即位祭もやっているんでこちらは最小限ですが、三日後からは出店も増えますよ。最終日には薔薇占いもがあります。興味がありましたら予約していってくださいね」


お店は混んでいないため、店主の女性と話をするマリッサ。


「薔薇占いですか?」


「ええ、温室が五つあって、そこで占いをしてもらえるんです。御本人にあった色の薔薇も頂けて人気です。あと最終日は女性は花冠をつけてお祝いをします」


「素敵ですね」


「なのでお時間があるようでしたら是非いらしてください」


笑顔の店主から飲み物を受け取って、出店をあとにした。待っていたノアのところへ戻る。


ノアは、マリッサから店主と話した内容を聞いた。



「お祭り重なっちゃったから人が少ないんだねー」


「最終日、みんなで行きたいな」


「そうだねー」


途中で休憩を取りつつ広い薔薇園を一周した頃には夕暮れだった。二人は宿へ戻った。



全員が揃い、夕食を取れる場所へと向かった。三人は一日食べ飲みをしていたため、お酒とつまみのみにすることにしていた。


「なんか聞けたか」


「薔薇祭りは最終日が盛り上がるってことしか聞けなかった」


マリッサが店主から聞いた話を三人にも伝える。


「こっちもアズベールに近づかないほうがいいという話しか聞けてないんだよね」


ラウルがレモネード屋の店主から聞いた話を二人にもする。


「どっちも何もなしか」


「まあ、そう上手くはいかないよー、明日は逆に行ってみる?」


ノアの提案に乗り、この日とは逆のお祭りに行くことになった。



次の日になり、ザイアスたちは薔薇祭りへ向かう。

マリッサが聞いたような話を聞くくらいしか特に収穫はなかった。ノアたちもハルモニアの美味しい特産品を楽しんだが、特に何も起きなかった。


夕方になり昨日同様、レストランに集まる。


「薔薇が綺麗だった」


「料理とお酒美味しかったよー」


両グループともお祭りを楽しんだようだった。


「明日は最終日だし、全員で即位祭にいくー?」


「ああ、最終日のほうがきっかけはありそうだ」


ノアの提案にザイアスも同意する。


「お祭りじゃないのかなあ」


マリッサが呟きに対して、ザイアスが答える。


「時計塔がみえたくらいしか情報がないんだ。おそらく方角的に首都から南だとは思う」


首都から少し離れたところに時計塔がそびえ立っている。首都以外ももちろん見ることはできるが、ザイアスは、方角から考えると首都方面と考えているようだった。


「祭りでなかったら終わったら、南、リッシェの方の町にも足を伸ばしてみたい」


サルザールトの南にリッシェは位置する。サルザールトの首都とリッシェの間にもいくつか町はある。



次の日になり、全員で即位祭にむかう。最終日とのこともあり、人は前二日より少し多かった。


一行は出店が並ぶ道を進む。



「鞄を返して!!!」


若いと思われる男性の声がした。振り返ると、鞄を取ったと思われる男性がこちらへ向かって走ってくる。周囲の人は見届けはするが吸血鬼の可能性もあるためか関わらない。警備員も何人か巡回しているため、任せようといったところか。

ただ運が悪かったのか警備員は近くにいない。


ラウルがマリッサの、ザイアスがアメリアの前に庇うように移動する。ノアが前に出て、走ってくる男の足を引っ掛け、転ぶタイミングでうまく鞄を取る。


「なんだ……!?」


男が転び驚きの声を上げる。ノアはザイアスに鞄を渡し、男を拘束する。


「この人、引き渡してくるねー。

あそこの喫茶店で待ってて貰っていいー?」


ザイアスにそう話し、さっさと男を連れてノアは移動した。男も抵抗する気もないようで、とぼとぼと連れられていった。



「お前は何なんだ……」


失意している男が呟く。


「吸血鬼だよ、残念だったね」


ぶつぶつと言うが、抵抗をする気も無いようだった。



「ありがとうございます」


ザイアスから鞄を受け取り、若い男性がザイアスに礼を言う。


「いえ、礼はノア……さっきの者にお願いします」


「一緒に待っててもいいですか」


「ええ」


先程ノアが指を指した喫茶店へ向かう。祭りの会場へと入ったばかりの場所だったので、近くに喫茶店があった。

喫茶店に向かい、席に案内される。


「良かった……!」


若い男性は席に座るとすぐに鞄を開けて何かを確認した。



「すみません。私はカサイルと申します」


一行も名乗ったところで、話をする。


「大切なものが入っていたんですか?」


「ええ、よくわかりましたね」


ラウルがカサイルに聞いた。


「この国は吸血鬼も多いから、鞄を取られたとしてもあまり取り返そうとする人、少ないと思ったんで」


「ええ、ここの通りで盗られてあの中に入られました。おそらく追ってくると思わなかったのか、人に紛れればそのまま逃げられると思ったのでしょう。出口もいくつがありますし」


祭りの中では自己防衛のため大金を持ってくる人は少ない。しかし通りであればそれなりに持っている可能性もあるが、通りには各店舗の警備員や警察も巡回している可能性があるため声を上げ続ければ、捕まる可能性が高い。


「なるほど」


「これは彼女に渡す大切なものなんです」


カサイルは、小箱に入った女性の手のひらくらいの大きさの赤の薔薇のガラス細工を見せてくれた。所々スワロフスキーが散りばめられていた。


「綺麗……」


マリッサが感嘆な声を上げていると、


「これで彼女にプロポーズをしようかと思っているんです。あ、もちろん指輪も用意しています」


一行が首を傾げていると、


「観光の方でしたか、すみません。僕の育った場所では赤い薔薇のガラス細工を渡すとプロポーズが成功するというジンクスがあるんです。それと、彼女も外国に住んでいるんですけど、薔薇が好きで前に薔薇祭りに来たときもとても楽しそうだったので」


照れくさそうに笑うカサイル。


「素敵ですね」


ラウルが言う。


「ええ。少しでもジンクスに縋りたいのもありますし」


今度は自信なさげに返す。


「きっと大丈夫です。鞄を取り返すくらい勇敢さもあって、彼女さんのことを大切になさってるカサイルさんなら」


アメリアがカサイルの目を見て笑顔で伝える。


「あとは自信を持ってください」


マリッサが続けて伝える。


「ありがとうございます」


自信の無さはどこかに消え力強く二人に礼を伝えた。

カサイルは鞄をがさごそと探っている。



「これ、お二人にどうぞ」


アメリアとマリッサはチケットらしきものを受け取る。


「最終日にアイトスという名前の温室で行われる占いの予約チケットです。私はそこで勇気を貰ってから、夕方にプロポーズしようと思っていたんです。でも、貴女たちに勇気をもらって僕には不要なので、せめてものお礼です」


二人はお礼を伝えて素直に受け取った。



「ごめんねー、待たせたー」


ノアが戻ってきた。カサイルが気付き席を立ち深々と礼をする。


「鞄取り返していただいてありがとうございました」


「怪我とかないですか」


「私は大丈夫です、貴方は?」


「大丈夫です」


ノアと話したあと、ノアも飲み物を注文し席についた。二人は自己紹介をする。カサイルはさきほど話したガラス細工の薔薇の話をする。


「すみません、お礼らしいことが何もできなくて」


「気にしないでください、あの二人が素敵なもの頂いたみたいなんでー」


ノアがアメリアとマリッサの方を向いて言う。


「いえ、それは私が押し付けたようなもので」


「なら、教えてほしいことがいくつか。ここから南に行った街ってどんなところですかー?」


「サルザールトで、と言うならば、首都と同じように薔薇が有名です。あとガラス細工や工芸品が有名な町もあります」


「サルザールトって全体的に観光が盛んなんですか?」


ノアとカサイルが話していたところラウルが尋ねる。


「ええ。周りも友好国なのとバスと鉄道が頻繁に運行している点とレヴォントレットへの最短ルートということもあり盛んです」


「そうなんですねー。気をつけておいたほうがいいことってありますかー?」


「これと言って特にないかと。吸血鬼が夜は多く出歩くので夜はあまり出歩かないほうがいいくらいですね」


これはどこも同じと言えるので、特段無いようだった。


「ありがとうございます」


ノアは聞きたいことは聞けたのかお礼を伝えた。


お昼時になったため、一旦喫茶店を出る。


「何もお礼できずにすみません」


「いいえー。色々教えて頂いたんで助かりました」


「薔薇まつりの最終日はいらっしゃるときいてますがまた、お会いできると嬉しいです」


予定があるとのことでカサイルとはここで別れた。一行は即位祭に向かい、出店のツマミとお酒、ステージの音楽を楽しんだ。終了のアナウンスが流れ、最後に花火が打ち上がり、一行はレストランへ向かった。



「カサイルさんのことかなあ」


マリッサが話を切り出す。この場では口に出さないが、ペンダントのことである。


「違うと思うなー」


ノアはザイアスの意見を促すようにザイアスを見る。


「おそらくな。個人的な話な点と十年くらい前に起きたことでないからな」


ラウルは納得したようだが、アメリアとマリッサはあまりしっくり来ていないようだった。


「今までのペンダントの条件は十年くらい前に何かあったというのが共通点だ」


「たまたまじゃないの?」


偶然と言うには重なりすぎている気もするが、アメリアが言う。


「レヴォントレットでも色々あったからねー」


「それについては、後でいいか。推測も多いからもう少し確信を得てから話したい」


マリッサとアメリアは頷く。



「とりあえず、薔薇祭りに明日は行くか。話をして情報を集めるしかない。明後日は少し街を歩きたいからまた二手に別れよう」


食事も取り終わったため、宿に戻った。

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