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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
ハルモニア編
62/91

5 復調


一方ザイアスたち。

マリッサに事情を説明して血を貰うことになった。アメリアと同様手首から貰うことになる。


ザイアスはなんとか起き上がり、座っているマリッサの手首を噛む。そして血を飲む。


十分ほど流れる血をサイアスは貰っていた。



「それ以上はマリッサが倒れちゃうから、あとは明日とかにして」


ラウルの言葉にザイアスが気づき、腕から口を離す。


「悪い、大丈夫か」


「ううん、痛くなかったよ」


ザイアスは心配そうにマリッサを見る。

マリッサもザイアスの顔をみると顔色は先程より良くなっていた。


「悪い、ラウル。マリッサを送り届けてくれないか。少し貰いすぎたから貧血気味だと思う」


「もちろん」


ラウルが答えるとマリッサを連れて部屋へ向かった。マリッサは特に問題はないようで、自力で歩くことができた。ザイアスの調子はあまり良くないため、再度休むことにする。



次の日の朝、朝食の時間となるが食堂には回復したノア、ラウル、アメリアしか来なかった。


「二人は?」


「ザイアスはまだだねー」


「マリッサも少し休ませてるよ」


ザイアスは回復せず、マリッサも昨日の影響がないとは言い切れないため、念の為部屋で休ませてるとのことだった。


朝食を食べているとラウルがアメリアに聞く。


「アメリアも顔色悪い?」


ノアがアメリアを見ると、


「ほんとだ。熱でもあるー?」


と、ノアはアメリアのおでこに手を当てながら言った。

アメリアは少し驚いたのか体が少しだけ跳ねる。


「ううん、大丈夫。少し眠れなかっただけ」


アメリアは少し動揺しつつも答えながら、朝食を食べた。



朝食を食べ終わり、各々部屋へ戻る。ラウルとノアは話をするためにノアの部屋へと向かった。


「ザイアスはどう?」


「朝、ザイアスのこと見に行ったけど、顔色がほんの少し良くなったくらいだねー。半日も力を使い続けるのを五日も連続でやれば辛くなるのも当然だよ」


「そんなに……」


当時の状況を詳しくは知らなかったラウルが絶句する。

吸血鬼がここまで能力を使い続けることはあまりないようだ。


「ザイアスの能力は索敵とかに向いているからねー。周囲三キロくらいなら音や人の気配がわかるみたいだから。匂いとかもわかるみたいだけど」


そのため、周囲の状況を的確に伝えることができたらしい。


「ペンダントのためなのは分かるけど、そんなに無理しすぎるといつか大変なことになるよ」


「ザイアスもわかってないわけじゃないと思うけどねー」


忠告するラウルに対して、少々困った表情を浮かべるノア。


「ごめんね、ザイアスに言うべきだね」


「いや、俺も同じこと思ってたから」


ノアに言っても困るだけなことに気づいたためか、ラウルはこれ以上は言わなかった。



話は変わり、マリッサの話になる。


「今日もマリッサに協力してもらうかも」


「マリッサは当分部屋で休ませておくね。

ザイアスがアメリアを拒否してるのはよくわからないけど……」


アメリアからもらうことができればマリッサの負担も少しは減らせると思うラウル。


「想像だけど、アメリアの血を一回もらったらもっと欲しくなるからじゃないかなー?」


「好きなの人の血って格別に美味しいっていうもんね。たしかにアメリアには説明しにくいとは思うけど、ちょっとあの言い方は可哀想だと思う」


「うん、ザイアスにも余裕がなかったんだろうけど。きっとザイアスも反省してるだろうし、これ以上はザイアスに任せるよー」


とノアが言うので、ラウルはこれ以上は何も言わなかった。



ラウルが部屋に戻ったあと、ノアは一度食堂に行き、何かをもらい部屋に戻る。そしてアメリアの部屋に向かうとアメリアは部屋にいた。


「どうしたの?ノア」


「アメリア、体調は大丈夫ー?くらくらしたりしない?昨日血を貰ったから今日は安静にしてて」


「うん、大丈夫」


アメリアの体調は変わりなく、すでにその影響はない。ただ昨日はノアのことを考えて眠れなかっただけだ。


「あまり眠れなかったみたいだから、これ飲んで少し休んでー」


先ほど食堂で頂いた、ホットミルクが渡される。


「ノアありがとう」


ノアからアメリアはホットミルクを受け取り、口をつける。落ち着いたのか、少しうとうとし始めた。

ノアは長いはせず、部屋を出た。



夜になり、ノアはザイアスの部屋へと向かう。


「まだあまり良くなさそうだね。マリッサ呼んでくるよ」


昨日より少し顔色が良くなった程度のようで、まだベッドで眠っている。


ノアはマリッサに声をかけに行ったが、眠っているようで、ラウルか自分に後で声をかけてもらうよう置き手紙をする。


そしてラウルのところへ向かいその旨を伝え、ザイアスのところへ向かってザイアスにも伝える。



「悪いな」


「俺はザイアスが目的を達成するために居るからねー。ほんとは護衛なのに今のところそんなに危なくないしね」


「それも含めて後で話がしたい。気になることがある」


「わかった。けど今は回復することだけ考えて」


ザイアスは頷き再度ベッドに横になる。するとラウルとマリッサが訪ねてきた。ノアは入れ替わるように、部屋を出た。


昨日と同じようにマリッサがザイアスに血を分け与えた。

ザイアスの顔色は少しずつ良くはなってるがまだ全回復とはいえなさそうだった。



次の日の朝。食堂には昨日同様アメリア、ノア、ラウルが集まった。席に座ると朝食が運ばれてくる。



「ザイアスは?」


「だいぶ良くなってきたよー。少し動けるようになったみたい」


この日もザイアスの様子を見に行ったノアが答えるとほっと安堵するアメリアとラウル。するとガルシオが現れた。



ノアと会話をする。


「まだ調子悪いのか、ザイアスは」


「ええ、すみません。長居してしまって」


「それは構わん。いくらでも居てくれ。

なにか必要なものがあればすぐ用意する」


「ありがとうございます」


「ザイアスはさすが吸血鬼という感じだが、ノアはすごい体術だな。鍛えてるのか」


「ええ。俺も一応護衛みたいなものなんでー」


「暇があればうちの若いのにも教えてやってくれ」


仕事があるようで、ガルシオは戻っていった。



「護衛?」


ラウルが疑問を口にする。


「うん、俺の家はそういう家業だからね。

今もザイアスの護衛だよ。名目上」


「仲良さそうだけど」


「もともと仲いいよー。だから俺に話が来たからねー。旅をするのに知らない人だときついからね」


なるほどと納得するラウル。


「だからザイアスが指示出してるのか」


「んー、それは性格的なものかなあ」


おどけたように笑ったノアだった。朝食を取り終え、各々部屋へと戻った。



その日の夜もザイアスはマリッサから血をもらうことになる。この日はだいぶ顔色も良くなっていた。


次の日になり、ラウルとアメリアはノアから、ザイアスがだいぶ良くなったから、明日みんなで話したいと言ってるということを聞く。

この日はマリッサの血も貰わなくて平気な状況となったようだった。


マリッサはこの日も念の為、あまり動かないように過ごした。



次の日の朝を迎える。ザイアスの部屋に一行は集まった。


「迷惑をかけて申し訳なかった」


集まってそうそうザイアスが頭を下げる。


「ザイアス大丈夫?」


「心配かけて悪かった」


ザイアスとアメリアはどこかぎこちなかった。おそらくザイアスがアメリアの血を拒否したことに影響するのだろう。



「次はサルザールトだ。リッシェの北にある国だ」


どうやらペンダントは埋まったようで、次に行く国が決まった。


「明後日にここは出ようと思う。

あと、二週間後、ノアとラウルと俺は一旦また実家に戻る」


「めずしいね、ラウルも?」


マリッサが尋ねる。


「うん、王様が回復されたからね」


実際は行方がわからなかったのが見つかったのだが、対外的には体調不良とされていたため、ラウルはこのような言い方をする。


「二人はリッシェのアメリアの家で待っていてほしい。あと、もう一つ伝えたいことがある。」


ザイアスはマリッサとアメリアの方を向き話す。


「婚約者が決まった。結婚は旅が終わってからになるが」


「おめでとう!ザイアス」


アメリアが満面の笑顔で祝福する。マリッサも祝辞を述べる。アメリアとマリッサは部屋へ戻ると、男性陣は話し込む。


「大丈夫?ザイアス」


「もう大丈夫だ、マリッサにも礼を伝えておく」


「そうじゃなくて」


ラウルが言いたかったことは体調のことではなかったようで、苦笑する。ザイアスもわかっていたのか、特に驚くことなく返す。


「いいんだ、これで。アメリアは俺のことなんとも思ってないことなんて、はじめからわかってたことだ」


ザイアスは悲しむ様子はなく淡々と、まるで自分に言い聞かせるようにいった。


「何度も言うけど、俺はあの子が幸せでいてくれればそれでいいんだ」


ラウルとはノアは何も言わず、ザイアスの言葉を聞く。



「俺は伝えたよ、マリッサに」


ラウルが言うがザイアスは首をふる。

暗に、アメリアに伝えればいいのにという意味も込められていた。それもザイアスに伝わったのか首をふって否定する。


「婚約者が決まっている以上、ただの自己満足になるだけだ。それに俺にはミリア嬢がいるから」


ザイアスの決意は固いようで、これ以上二人は何も言わなかった。



ラウルが部屋へ戻り、ノアとザイアスが話をする。


「そういえば、アメリアの血はなんで拒否したの?」


「我慢できなくなるんじゃないかと思ったからだ、あと……」


次の言葉は出てこなかったため、ノアが会話をつなげる。


「好きな人の血は美味しいっていうもんね」


ザイアスは先程は冷静だったが少し難しそうな表情をする。



「そういえば、なにか話があったんだよね」


黙ってしまったザイアスをみて、ノアが話を変えた。


「この旅、予定調和すぎないか」


狙ったかのようにぽんぽんと問題がおき、それを解決することによってペンダントの台座が埋まっていくことが気になるザイアス。


「そうだねー。危険はそんなにないし、上手いようにことは進んでるよね」


「俺もペンダントを完成させろと言われてるがなぜかとかまでは聞いていない。どういう理由なのかもしらないが」


「知ってる人はいないの?」


「ああ、父上も確かなことは知らないらしい。だが、アメリア、マリッサ、ラウルの同行が許されている以上、そんなに危険もないと思っている」


「まあ、今まで通りでいいんじゃない?この間の話もあるし少し警戒は必要かもしれないけれど」


この間の話とは反純血種のことである。


「まあそうだな」


警戒を全くしないわけにはいかないが、不必要に警戒をする必要はないと二人は判断してこの話は終わった。



「そういえばさ、アメリアに告白したよ」


「そうか」


「興味なさそうー」


なんて笑うノア。


「結果を聞くのも違うしな」


ザイアスは、むしろ一行全員に言えることだが、基本的に話してこないことは無理に聞くタイプではない。


「そうねー」


「だが……」


何かを言いかけたところでレイが来て、ザイアスの体調を確認しに来た。問題ないことを伝えると、午後にノアも含め少し時間がほしいと言われた。


特に話が戻ることもなく、ノアは一旦部屋へと戻った。

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