4 告白
体調が悪そうなザイアスをノアが連れて、ザイアス部屋へと向かった。部屋に入るとザイアスはベッドに横たわる。眠ると言われとりあえず眠らせることにした。
夜になり、ノアはザイアスを訪ねるが、具合は変わらないようだった。
ノアはザイアスの体調不良の原因がわかっているようで、
吸血鬼の栄養補給ができる血液パックを渡し、ザイアスも口にするが首をふる。
「珍しいね、いつもならそれで回復するのに」
血液パックを見ながらノアは言う。
「少し加減を間違えたみたいだ、体の節々が痛いのと力が入らない」
ザイアスは辛そうにしたままだった。
ノックの音がしたため、ノアが対応する。訪れたのはラウルだった。ラウルは部屋に入りノアと話す。
「ザイアスは大丈夫?後でアメリアが水とか持ってきてくれるけど」
夕食に来なかったノアとザイアスを心配してくれていたらしい。
「あんまり大丈夫じゃないかも」
正直にノアはラウルに伝える。
「アメリカかマリッサに頼んで血をもらわないと、回復まで遅くなりそう」
状況の深刻さはラウルにも伝わったようだ。
「俺の血ならいくらでもあげるけど、同性の血は今の状況だとあまり意味ないかもね、二人を呼んでくるよ」
栄養補給として飲む場合は異性の血を飲むことが多いようで、現状だとマリッサかアメリアに頼んだほうが良いと二人は判断する。
ノックの音がする。今度はアメリアが訪ねてきた。
「ちょうどよかったー。アメリア、申し訳ないんだけど、ザイアスに血をあげても」
「申し訳ないがマリッサにお願いしてもらえないか。
アメリアの血は飲みたく……いや飲めない」
ノアがアメリアに聞いている最中にザイアスが言葉を遮る。ザイアスが言い直すがアメリアにも聞こえたようでアメリアは持ってきた水をラウルに渡すだけで会話はせずに、部屋をあとにした。
「俺、マリッサに声をかけてくる。アメリアはノアに任せていい?」
「うん、ごめんね。お願い」
ラウルが席を外すと、ノアは壁によりかかりながら聞く。
「どうして」
先程のザイアスの発言に対してノアは聞く。声はいつもより低く、少し怒って見えた。
ザイアスは辛いのか言いにくいのか言葉を返さない。
「後でいいか、ノアも早く休んだほうがいい」
「……アメリア貰っちゃうよ」
「俺に聞くな」
ザイアスは体が辛いせいなのか顔色が酷い。ノアも思うところがあるのかノアも部屋を出ていってしまう。
ノアは知っていったのか出ていくタイミングでラウルとマリッサが入ってくる。
ノアはアメリアの部屋へ向かい、部屋に入れてもらう。
「ノア……!」
ノアに駆け寄るアメリア。
「アメリア、大丈夫?」
「うん、ザイアスは?」
「多分大丈夫だよ」
アメリアはノアを部屋に入れる。イスにノアが座りアメリアはベッドの上に座る。
「ザイアスになにかしちゃったかな」
「気にしなくていいよ、アメリアは悪くない」
「ノア?大丈夫?」
普段通りにしていたノアだが、アメリアに異変を気づかれる。ノアも顔色が悪く体調が悪そうだ。
「ごめんねアメリア。少し血をもらっていい?
あ、俺たちみたいな吸血鬼に血を飲まれても、吸血鬼にはならないから安心して」
声色にいつもの余裕はない。アメリアもその様子を察する。
「うん、どうすればいい?」
「そのままでいいよ」
ノアはアメリアの正面にしゃがみ、左腕の服をまくる。アメリアが腕を伸ばす。
「ごめんね、少し痛いよ」
手首に顔を近づけて、牙で軽く噛む。
「っ……」
痛みからか目をギュッとつぶる。傷口からは血が流れる。
傷口から血を吸うように飲むノア。3分ほど経ったあと、腕から口を離す。
「ありがとう。アメリア大丈夫?」
声色はいつもと同じに戻る。手首からはまだ血が少し出ているのを見て、ノアは傷跡を舐める。
「うん」
「傷はすぐ塞がるから」
アメリアの前にしゃがみ、まくった袖を戻す。
「首からだと思ってた」
「首が一番良いんだけど、痛いからね」
「大丈夫だよ?」
「……駄目だよ。我慢ができなくなる」
少し悲しそうな表情でアメリアを撫でる。
アメリアは首を傾げる。ノアはアメリアの疑問に答える。
「首からは色々あって、恋人同士とか夫婦とかが多いかな」
「そうなんだ」
「少しお話していい?」
こくんと頷くアメリアを見てノアが話し出す。
「座らないの?」
「アメリアの顔をちゃんと見て話したいんだ」
床にしゃかんだままの体制で、アメリアの眼を見て、柔らかく笑うノア。
「俺、アメリアが好きだよ」
「私もノアが」
「友達とか幼馴染としてじゃなくて、一人の女の子として」
アメリアの言葉を遮って話すノア。アメリアはそこまで話されてやっと意味を理解する。
「え……」
「気付いてなかったんだね」
ノアが少し寂しそうな表情をするのを見てアメリアが謝罪する。
「ごめんなさい」
「ううん。
これはザイアスたちにも秘密なんだけど、俺、婚約者がいるんだ。今は行方がわからないから一応だけど」
話が飛躍しアメリアは困惑するが次の言葉を待つ。
「最低なことを言ってるのはわかってる。
でも俺はアメリアが生きているうちはアメリアのことだけを想って側にいたい」
「……」
困惑するアメリアは言葉が出ない。
「困らせてごめんね。でも言ったことは本当だよ」
「少し考えさせて?驚くことがたくさんあって混乱してる」
「もちろん」
ノアはアメリアの頭を撫でながら、
「少しでも俺のこと意識してくれると嬉しいな」
柔らかく笑いながら、それだけアメリアに伝え、ノアは部屋をあとにした。
うつ伏せにベッドに横たわり枕に顔を沈めている。顔や耳も赤くなっている。意識をしていなかった相手に告白され、意識をしてしまうアメリア。
「ノア……」
告白されたと思いきや婚約者がいるとも言われ、アメリアは気持ちの整理に時間がかかると思った。
ぐるぐるといろいろな感情が駆け巡り、この日はアメリアはあまり寝付けなかった。




