3 刺客襲来
夜になり、ザイアスとノアはガルシオのところへ向かい、警備隊員に紹介された。ほどなくして、王太子の隣の部屋へ移動するよう伝えられる。同じ部屋の担当は若い隊員で複数人いた。
ガルシオから聞いた話を要約すると、王太子の部屋までくる刺客は少ないだろうと予測し、王太子の部屋まで刺客が来た場合ガルシオもしくは隊長が相手をする予定とのことだった。補佐する若い隊員もよりすぐりの面々らしい。
ザイアスは座り、目をつぶって集中をする。ノアは少し離れたところでいつでも戦闘できるよう若い隊員たちと待機をする。
会話は最小限のため、ゆっくりと時間は過ぎていく。
この日は何も起きず、朝を迎えた。
交代時にガルシオは、ザイアスに声をかける。
「俺たちの杞憂だと良いんだが」
「ええ、本当に。ですが何かあるなら即位する前でしょう。即位したあとだと問われる罪も重くなりますし。今であれば跡継ぎ問題とされてしまうだけで終わりますが、即位後だとそうではない」
「ああ」
身辺も護衛がいるようで問題はなく、食事に関しても毒見が行われているとのことだった。
そもそもこの国は前王の子供が王になるのが伝統のようで、国民ももちろん、当事者の前王の兄ですら王太子が即位することを望んでいるらしい。前王の兄の妃とその周辺の者という極小数が反対をしているとのことだった。
「今夜も頼む」
ガルシオに礼をしてザイアスとノアは部屋をあとにした。
即位予定の前日まで特に何も起きなかった。夜になり、ザイアスとノアはいつものようにガルシオのところへ向かうと出勤時の連絡伝達が始まる。。
「明日の即位式までが山場だと思う。気を引き締めろ」
この日は隊長自ら声をかける。どうやら人員も今までよりかけているらしい。
初日同様の部屋に移動し、ザイアスは一人で集中をする。
数時間が経ち、日が変わった。
「三キロ先、十数人の小隊二つの影あり。まだ動きはない。獲物はわからない」
ザイアスがガルシオと隊長に伝えると部屋にいる者たちの表情は変わる。
「念の為殿下を起こします、後非番の隊員も連れてきます」
ガルシオが部屋を出る。部屋にいる若い隊員も準備をする。若い隊員が外の警備担当に知らせに行く。
「念の為部屋にいるラウルを連れてきてもらえませんか」
隊長にザイアスが話すと、若い隊員がかわりに連れてくることになる。
ガルシオが戻ってくる。ラウルも連れてこられた。
「小隊が分かれてこちらに向かってきます。あとニキロ」
ザイアスは、大きめの声で言う。
「城に近づかれたら殿下を地下に案内する」
数十分後、外が騒がしくなる。剣がぶつかり合う音が続く。城壁の外のため部屋から視認をすることができない。事前に応援も出していたため、一時間位で音は収まった。
刺客を全員倒したらしく、警備隊員がどこかへ連れられていった。
「いいか、油断はするな」
隊長が低い声で話すと、若い隊員たちは気持ちを引き締める。
「ええ、油断させたタイミングが狙いどきですから」
ザイアスが再度目をつぶり集中した。
更に数時間が経った。そろそろ空が明るくなり始める。
夜勤が終了する少し前。
「来た。三キロ先に吸血鬼一人。おそらく城壁を跳んで中に入ってくる。深追いはしないように」
ザイアスが言うと、部屋にいる隊員たちの空気が引き締まる
。再度若い隊員が城前の隊員に知らせに行く。
数分後。
「城壁を超えた。向かってる方向的に城の正面の壁を登る。ノア、登ってきたら声をかける。時間差で吸血鬼が二人来る」
「了解」
ノアは窓のカギを開けておく。
「登り始めた」
ノアは窓を開けて体を乗り出した。捕まる場所もあまりないのにうまく登る吸血鬼を確認する。
そして次の瞬間その吸血鬼に向かって、約三階ほどの高さから飛び降りた。まるで飛び蹴りの姿勢で。そして吸血鬼にヒットすると吸血鬼は地面に落ちた。ノアはうまく着地する。その様子を見てた警備隊の面々は唖然とする。
吸血鬼はうまく受け身を取れず倒れ込んでいる。どうやら腰から落ちたようで、すぐに動ける様子はない。
「なんで……」
ノアは少し口角をあげたのみで何も返さずその吸血鬼を拘束した。
ノアは正面を向くと、どうやら追手が来ていたようだった。とりあえず向かってきた二人のみぞおちを蹴り上げ、持っていたナイフと剣を蹴り飛ばし遠くへ飛ばす。そして、体制を崩させそして最後に投げ飛ばし、行動不能にさせる。相手は為す術もなかった。
ノアは最後の二人を拘束し、地下牢のある場所へと連れていった。
ノアはザイアスたちがいる場所へと戻る。
そして朝を迎えた。この日は即位式まで警備を続けた。ラウルも念のため警備に参加する。
無事に即位式が終わり、正式に王太子は王となった。
即位式を見届け、ガルシオから声がかけられる。
「三人共ありがとう、ゆっくり休んでくれ。正式な礼は後ほど」
「礼には及びません」
ザイアスが答える。ザイアスの顔色が悪い事に気づいたガルシオは、これ以上は話をしなかった。
「部屋までお送りしましょうか」
「いえー、俺が送るので大丈夫です」
若い隊員の提案にノアは断り、ザイアスの部屋へと向かった。




