6 手付かずの山
朝になり、一行は酒場に集合する。
朝ごはんは学園があるマニフィでは高級品として扱われているパンとスクランブルエッグとサラダだった。美味しくいただき、本日の目的である山の散策へと向かった。
「結構歩いたねー」
山に向かう平坦な道を三十分ほど歩いたがまだ目的地にはまだ遠い。辺りに高い建物はないため、山は見えているがまだまだかかりそうだった。
三十分ほど歩き続けてやっと山の入り口に到着した。
「アメリアとマリッサは待ってるか?」
一時間以上歩いた疲れを気にしてザイアスが問いかける。
「大丈夫だよ」
マリッサが返すとアメリアも同意ともうで頷いた。二人の表情を見ても疲れは見えないため、一行は山の中へと入った。
長年人が近づいていないと言うことで、全く整備がされておらず、木や葉がそこら中に生い茂っていた。
そんなに高くない山であるが、歩きにくいため登るのに時間がかかっている。
すると、もともと休憩場だったのか広く空いたスペースが見えたため、一行は休憩をすることにした。
数分休憩をしたあと、一行は進もうとした。
「ちょっとまってー」
普段より大きな声でノアが止める。
三人は驚き足を止めた。
「ここから先は俺に行かせてくれない?」
「ああ、わかった」
ザイアスは事情を察したのかすぐに了承した。そして、ノアだけが歩みを進めた。
ノアが少し進むと今まで来た道と比べ物にならないくらい荒廃していた。
「ここでいいかな」
とつぶやきその場でしゃがむ。
「ねえ、聞こえているかな
僕はキミたちに危害を加えに来たわけじゃないよ」
と虚空に向かって声を発する。すると、大きなイノシシが現れた。
「キミたちは生きるために小麦畑を荒らしていたの」
「違うの?もうするつもりはない?探していただけ?」
「食料は吸血鬼が残していったからこまってなかったんだね。命が尽きる前に」
まるでイノシシと話しているノア。
「また、小麦を育てても荒らさないようにしてくれるかい」
「……ありがとう」
イノシシは山の奥へと戻る。その様子を見届けたノアも一行のところへ戻る。
「おまたせー」
「大丈夫?」
葉などが服に着き、枝に引っかかったのか皮膚が切れてしまっている様子のノアに心配そうに駆け寄るのはアメリア。その様子を見ながらザイアスは声をかけた。
「どうだった?」
「うん。もう山の近くに小麦畑を作っても襲わないって」
「そうか、良かった」
ザイアスは納得しているが、アメリアとマリッサは状況が全く分かっていない。不思議そうな顔をしていると、
「詳しくは戻ったら話そうかー」
とノアは少し困った顔をした。
特にこの場では追求することなく一行は宿へと戻った。