2 依頼
城に到着する。とてもではないが全貌を見渡すことはできないくらい広く、城そのものも立派な佇まいだった。
城壁に囲われており、門の前にいた門番はガルシオに気づき、礼をする。
そのまま城に向かい、中へと入っていく。階段で三階まで上がる。長い廊下がありそちらを進むガルシオに一行は着いていく。長い一本の廊下を挟むように部屋が並ぶ場所だった。
「ここは客室だ。五室自由に使ってほしい。今日はもう夜は遅いから明日、話をする」
ガルシオは該当の五部屋を指差し、一行から離れていった。
他に客人がいるかもしれないため、廊下で長話はせずに近くにあった部屋へと入り、話をすることにした。
部屋に入ると、みるからにふかふかそうなベッドが鎮座していた。奥にソファとテーブルがあり、調度品も華美ではないがとても高級そうだった。また、お手洗いやシャワー室もついている。
「なんかとんとん拍子で来ちゃったけど、明日どんな話されるんだろう」
ラウルの問いにザイアスが答える。
「おそらく誰かの護衛とかだろうな。俺たちが」
警備隊の副隊長が吸血鬼を探していることと、ハルモニアが王位継承権を巡って小さな内紛状態であるという現状から推察する。
「なんか直近であるのかなー、この国、吸血鬼はあまりいなそうだし、吸血鬼をあんな手段を取ってまで連れてくるって相当だよ」
「まあ、明日になればわかるだろう」
一行は適当に部屋を決め、各々向かった。
朝になった。
マリッサの部屋にノックがされる。答えると城に仕えているメイドだった。
「はじめまして、メイドのレイと申します
どなたにお声掛けをすればよいかわからず、突然お伺いして申し訳ございません」
丁寧に挨拶をされる。とりあえずレイを連れてザイアスの部屋へ向かう。訪ねたところすでにザイアスは起きていた。
朝食の準備ができているようで、その後ガルシアからザイアスとノアに話があるとのことだった。朝食を済ませ、ガルシアが待つ部屋へと案内される。
どうやら書斎のようで部屋の奥に、仕事用の机があり、ドアに近い方に来客用のテーブルなどがある部屋だった。一行はそこに案内される。
「改めて昨日は申し訳なかった」
ガルシアは席から立ち、深々と謝罪をする。
「いいえ、それより我々に話とは何でしょうか」
ザイアスが話を進める。
「五日後に、数年前になくなった前王のご子息、王太子殿下の即位式がある。それまでの護衛をお願いしたい」
「護衛の方はいらっしゃいますよね」
「もちろん、だが即位前に何があるかはわからないから念には念を入れたい」
「心当たりがあるのですね」
普段の護衛では心もとないと思う理由がある、そう思いザイアスが問う。
「ああ、前王の兄が代理をしているが、その后などが王太子殿下が即位することを反対されている。まあ、世間で噂されているほど争っているわけではないが」
「なるほど、ですが申し訳ないですが」
言いかけたところドアが開く。十代後半の青年だった。
「王太子殿下……」
「護衛の増員は不要です」
「あやつらが何を仕出かすかわかりませんので、念には念を」
「吸血鬼の方ですよね。我々が吸血鬼に助力を得たと知られたら問題になりかねない」
「でも、相手も吸血鬼を連れてこないとは言えません」
王太子とガルシオの二人で話が進んでいく。
どうやら騎士団で勝手に進めていた話だったあるようだ。人間よりはるかに身体能力がある吸血鬼を味方にしたのが知られると、あまり体面がよくない。そう王太子が主張する。
対するガルシオは、即位後は国王への叛逆となるため、今より罪は重くなる。そのため狙われることは減ると考えており、即位前の最後のチャンスである今、何かあると睨んでいる。
両者の言い分はもっともなため、話は平行線になる。
そんな中、ザイアスが折衷案をあげる。
「万が一、相手方に吸血鬼が居たら我々が対峙します。また、遠方を検知できるので情報だけ与える。それでしたら我々は助力します」
ザイアスが述べると二人は渋々同意した。
一度一行はザイアスの部屋へ集まった。
「今回はザイアスと俺でなんとかなるかなー」
「ああ」
「俺はいいの?」
ラウルが聞く。
「もし吸血鬼が雇われたとしても、一般階級の吸血鬼数人だと思ってる。それくらいだったらノア一人で問題ない」
「任せてー」
「戦うのはザイアスかと思ってた」
「俺はノアには及ばない」
詳しい話をガルシオとすることになり、ノアとザイアスのみ残り、ラウル、アメリア、マリッサは一旦部屋へと戻った。
王太子も職務に戻るため席を外す。
ガルシオからどう警備するか説明を聞く。高い城壁に囲われているおり、出入り口は四つ。ここに隊員を複数人おき、城の出入り口にも配置。あとは城の中と、王太子がいる部屋に配置しているという。
「非番の隊員はどこで過ごしてますか」
「警備隊の寮だ、有事の際は出てきてもらうがな」
「城にいてもらえますか?俺とノアは城の王太子殿下の部屋の近くにいます。何かあればお伝えできるかと」
連絡手段は口頭もしくは音などを使用したサインのため、近くにいてもらうことを要求する。
「全員は無理だが、承知した。吸血鬼か人間かはわかるんだよな」
「ええ、半径三キロくらいは気配などで、私がわかるので、吸血鬼が来たらノアが対応します」
二人の方針も伝えるとガルシアは言う。
「どの吸血鬼もそんなことができるのか」
「いいえ。おそらくもし吸血鬼が来たとしてもそこまでできる者ではないでしょう」
ザイアスは刺客として吸血鬼が送り込まれるとしても、能力を持っていない一般階級の吸血鬼だろうと推測する。能力持ちの貴族階級が、このような一国の運命を左右するような襲撃に加担するとは考えられないと。
そのような吸血鬼の事情はあまり話せることでもなく、説明は最低限に留める二人。ガルシオも察したようで深く聞くことはなかった。
「二人は夕暮れから日が昇るまでお願いできるか」
「ずっとでなくていいですか」
「ああ、襲撃は夜と考えている。王太子殿下の部屋には隠し通路があって地下にすぐに行ける。地下にも隠し通路があって城を抜けることができる」
「なるほど、逃げ道があるから城で出迎えるんですね」
「ああ。襲撃の事実があれば他国で保護もしてもらえるからな」
話はあらかたまとまり、この日の夜から二人は警備に加わることになった。ラウル、アメリア、マリッサにも話をしたところ、ラウルも念の為夜に行動ができるようにしてくれるとのことだった。
ザイアス、ノア、ラウルはいったん休むため部屋へと戻った。




