12 二人の旅行
次の日になり、四人が片付けをしていると誰かが訪ねてきた。ノアが玄関を開けて対応をすると、訪ねてきたのはエリーとマチルダだった。
「突然すみません。ラウルさんとアメリアさんはいらっしゃいますか?」
エリーが尋ねるとノアが二人を呼びに行く。
「どうされましたか?今、掃除をしてて部屋がホコリまみれで……」
「すぐ帰るから気にしなくていいわ。
これ、今日までに届いたファンレターよ。二人に渡さなきゃと思って」
マチルダが二人に手紙を渡す。
「ありがとうございます」
「あとこれね」
ダンボールを持った付き添いと思われる人が三人ほど入ってきて次々玄関先にダンボールを置いた。合計五個。
「こっちはお客様からのプレゼント。宛名が書いてあるから確認してね」
「こんなに……」
アメリアがダンボールを見ながら量に驚いている。
「それだけ応援したいと思ってもらえたの。誇っていいわ」
マチルダは満面の笑顔だった。
「このあとももし届いたらお送りしようと思いますので、ご住所を教えていただけますか」
アメリアはリッシェの家を、ラウルは実家の住所を教えた。
「受け取るまで時間がかかるでしょうし、食べ物はこちらで美味しくいただくわ。あと生花もこちらに飾るわ」
各国を旅しているという事情を知っているマチルダはが言う
「ありがとうございます、助かります」
「これはアメリアに。レヴォントゥレット国の方からよ」
マチルダがアメリアに小さい箱を渡す。アメリアが包装を丁寧に開けて箱を開くとネックレスだった。
「アメリアにはあまり話してなかったけど、最後の劇は二十年くらい前にレヴォントゥレット国との友好の証として公演した劇だったの。最終日だけワンシーンやらせてほしいって関係者の方に許可を頂いて。それで、何名か招待したの。感激したようで、もしリヴァイバル公演するときはアメリアで是非って仰ってたわ」
「ありがとうございます、お礼のお手紙を書きたいんですが届けてもらうことって出来ますか」
「ええ、もちろんよ。劇場へ持ってきてね。私からも御礼の品を贈るから一緒に送るわ」
「このプレゼントや手紙のお礼などもしても良いですか?」
今度はラウルがダンボールを指さして尋ねる。
「ええ、そちらは個人の方だから劇団を通さなくていいわ」
話は終わり、マチルダとエリーは帰っていった。
ダンボールをとりあえず二階の部屋へと運ぶ二人。ダンボールを置いて、一階で片付けを続けるマリッサとノアに合流する。
一階の片付けも終わる。残るは各自の部屋のみとなる。次の日は買い出しへ向かって必要なものを購入した。
買い出しを済ませた次の日はラウルとマリッサが泊まりで出かけたため、家にはノアとアメリアが残る。
「アメリアー、ご飯食べにいかない?」
夕食時になり、部屋で過ごしていたアメリアにノアが声をかける。食材が無くなっているため外食をする。
「うん、あとレターセット買いに行ってもいい?」
「いいよー」
飲食店が並ぶ大通りに向かい二人は足を進める。ご飯を食べたあと、レターセットを買いに雑貨店に寄る。
「マリッサの誕生日プレゼントも買いに行きたい」
「そうだねー、今年は何にしようかな」
二人は楽しそうにプレゼントを選んだ。
一方、マリッサとラウルはバスでニ時間ほどかかる場所へと向かった。バスを降りると大きい公園が見えた。
「きれいな公園だね」
マリッサが気付きラウルに話しかける。
「この国で有名な場所なんだって、後でゆっくり散歩でもしようか」
二人はまずは泊まる予定の宿へと向かった。それほど遠くなく、荷物を置いて公園へ向かう。この日は穏やかな陽気でお散歩日和だった。
観光地になっているようで、整備がされており季節の花なども咲いていた。
ゆっくり回ったあと近くのレストランで夕食を取る。そして再度宿へと戻った。この日は一部屋しか取っていないため二人で過ごす。
「マリッサ、お誕生日おめでとう。ちょっとそのままでいて?」
座ってるマリッサの後ろに周り、ネックレスをつける。
「ありがとう。こんなにいいもの頂いていいの?」
「うん、マリッサにはお世話になってるから」
「あのね、ラウル、言いたいことがあるの」
「どうしたの?」
ラウルは元いた椅子に座り直す。
「私、ラウルが好きなの」
一呼吸おき、意を決したようにマリッサはラウルの眼を見て伝える。少しの沈黙が流れたあと、ラウルは返す。
「ありがとう。でもごめんね。付き合ったりすることは出来ない」
「うん、私も実家のことがあるからそういうことは考えてなかったけど、私の中で整理を付けたかったから言いたかったの。困らせてごめんね」
マリッサの表情はスッキリしたのか晴れやかだった。
「困ってないよ。むしろ嬉しいよ」
「ありがとう」
「言うか迷ったけど、俺もマリッサのこと好きだよ」
ラウルが柔らかい笑顔で伝える。好きなのはラウルも一緒だったが、付き合うことは出来ないと決めていたため、伝えることを迷っていたようだ。
「ありがとう」
二人は気持ちは一緒だが、関係を進展させることをしないことを選んだ。
「ごめんね。結婚はできない以上、付き合ったりしないほうがいいと思ってる。俺が家を捨てる覚悟があればよかったんだけど」
付き合うこと自体はできるが、結婚となると話は全く違ってくる。家を捨てて駆け落ちをしないとできないのが現実である。覚悟さえあれば関係を進展させられたと考えるラウル。そんなラウルに対してマリッサは首をふり否定する。
「ううん、私もそれはできないから」
家業を継ぐ必要があるマリッサもそれをできないのは同じだった。
「我儘を言うけど、今まで通り仲良くしてくれると嬉しいな」
「もちろん」
マリッサはとびきりの笑顔で伝えた。
明日も出かけるため早めに就寝した。




