9吸血鬼たちの夜
三人が店を出ると通りの人は減っていた。
「アメリア、今日カリンさんもうちで飲まないか誘ったんだけど、少しどう?」
「ほんと?明日お休みだから少しだけいきたい」
会話をしながら借りてる家へ戻る。ドアを開けるとザイアスが出迎えてくれた。
「ただいまー」
「お帰り、遅かったな。そちらの方は?」
ノアとアメリアの後ろにカリンがいることに気付いたザイアスが声をかける。
「初めまして。アメリアとラウルと同じ劇に出る予定のカリンです」
「こちらがザイアス。
ちょっと一緒に飲もうかって。いいよね」
ザイアスを紹介したあと、ザイアスに向けて聞くノア。
「ああ」
三人が部屋に上がろうとしたときにザイアスがアメリアに声をかける。
「アメリア、怪我したのか」
「あ、うん。でも大丈夫だよ」
話してはいないが怪我に気づくザイアス。吸血鬼は血の匂いに敏感で、怪我などで血が出ているとすぐに気づく。心配そうにするザイアスにアメリアは笑顔で答える。
四人はザイアスとノアの部屋に向かった。ラウルもきて飲み始める。
「マリッサは明日早いからもう寝てるみたい」
一度部屋に戻ったアメリアが話す。
「そっかー。最近全員の休みあわないね」
「みなさん働いてるんですか」
「そうだよー」
ザイアスもカリンも人見知りをしないため、会ってから時間は経っていないが話は盛り上がる。一時間くらい経ったところでアメリアが寝ることになり、部屋へと戻った
「カリンさんは家は大丈夫?」
ラウルがワインを注ぎながら聞く。
「うん、一人暮らしだから」
「そうなんだー」
ワインを二本ほど空けたところでカリンが話す。
「あの、さっきノアさんには聞いたんですけど、みなさんに聞きたいことがあって……」
「どうしたの?」
少し話しにくそうにカリンは言葉を発する。
「初対面で聞くことじゃないと思うんですけど、みなさんって吸血鬼でなくて人を好きになったこと、ありますか。私、幼馴染の人が好きで……」
次の言葉がでないのを見て、ザイアスが答える。
「ある」
「どうしたか聞いてもいいですか」
「婚約者と結婚することにした。その子が大切なことは変わらないし、幸せになってほしいと思ってる」
「私もいつか決まる婚約者と結婚する予定なんで、付き合いたいとかは思わないんですけど一緒にいたいって思って……」
「うん、わかるよ」
今度はラウルがカリンに同意する。
「しかも嫌われるのが怖くて吸血鬼であることを言えてなくて……」
カリンが話すとラウルが吹き出すように笑ってしまった。カリンが驚いていると、
「ごめん、ついこないだまでの俺だなって思って」
「話したんですか」
「うん、凄く傷つけたと思う。自惚れじゃないけどその子からの好意も気づいていたんだよね。
好きだけど、一応貴族階級だから家を捨てることはできなかった」
ラウルは少し自嘲気味に話す。
「わかります。私は嫁ぐ立場ですけど、家に迷惑はかけられないとは思うんです。あと幼馴染に吸血鬼だって言わないと不誠実だなって」
「うん、俺もそう思って伝えた」
カリンは少し考えると、決心したように頷く。
「私も明日会うので伝えようと思います。ありがとうございます」
「ううん、もし何かあったらうちにおいで」
ラウルが優しく言う。
「ありがとうございます」
そのあとも話を続け、夜更け前にカリンは帰ることになり、ラウルが家まで送ることになった。部屋にはノアとザイアスが残される。グラスや空いたボトルを片付ける。
「ノア、俺に遠慮しなくていい」
「気付いてた?」
「ああ。でも、いや、今はなんでもない」
お開きとなりノアとザイアスは眠りにつき、帰って来たラウルも眠りについた。
次の日となりマリッサはアルバイトへと向かった。アメリアはマリッサを見送ったあとは、誰も起きてこなかったため、一人で過ごす。
ザイアスは夕方頃起き、アメリアと一緒に夜ご飯の準備をする。ノアとラウルも起きてきたところでマリッサが帰宅をする。
いつも通り夜ご飯を食べ、寝る時間になるまで五人で過ごし、アメリアとマリッサは早めに部屋へと戻った。
男性三人で話していると、玄関のチャイムが鳴る。ノアがドアを開けると、泣いているカリンがいた。ノアは昨日の会話を察して、家にあげる。ザイアスとノアの部屋へ案内する。
ホットミルクを作り、ラウルは部屋へ向かう。
「これ飲んで落ち着いて」
「ごめんなさい、ご迷惑お掛けして」
「大丈夫だよ」
ザイアスとノアは一度部屋を出て、ラウルとカリンが二人になった。
「吸血鬼は嫌いって言われました。もう会いたくないって。そういう人もいるのは分かってたのに。一人でいると涙が止まらなくて、突然お伺いしてごめんなさい」
「大丈夫だよ」
「でもこれでよかったんです。諦めもつきますし。私、100歳になるまで自由にしていいって両親にいってもらえて今は好きなことをしてるんです。自由って自分でいろんな選択ができて楽しいけど、辛いこともたくさんあるんですね」
カリンは涙は流れているが笑顔で言う。
「いいご両親だね」
「はい、自慢の両親です」
「今日もザイアスたち飲むみたいだけど、どう?」
「迷惑でなければ是非」
ザイアスとノアに声をかけ、この日も飲み始めた。
いつも通りワインを空ける。
「聞いてもいいか」
「うん」
唐突がザイアスがカリンに聞く。
「女性に贈り物をしようと思ってるんだが何がいいのかがわからなくて、流行のものとかないか?」
「婚約者に?」
ノアが聞く。
「ああ。あまり接したことがないし何がいいのか全くわからなくて困ってる。
あと婚約者予定。断られたら話はなくなる」
「大変失礼ですけど断られることはありますか?」
「正直ほぼない。手紙などで話をしているが一応両家の顔をあわせを行ってから婚約ということになってるが、知り合いだ」
「なら刺繍のはいったハンカチなどいかがですか?領地の名産品などは当主同士がお持ちになるでしょうし」
ザイアスは難しい顔をする。
「ハンカチって嬉しいのか」
「ええ、パーティなどで使うのでいくらあっても大丈夫です。親しい関係のようでしたら髪飾りやリボンもよいと思います。アクセサリーやドレスなどは婚約後がよいかと」
「髪飾りはどういう色が人気なんだ」
「婚約前でしたら相手に合う色を、婚約後はご自身の瞳や髪の色を渡されるかたが多いですね」
「友人に渡すのと結構違うんだな」
「そうですね、パーティなどで持っていけるものがいいと思います。やっぱり話題になりますし、プレゼントを身に付けないとか、プレゼントが似合わないものだと、不仲なのかとか変な噂が流れてしまいますし」
カリンは苦笑する。男性陣は感心するように頷く。
「なんか勉強になるねー、俺たち異性で吸血鬼の友達いないからね。こういう話聞かないよね」
「ああ」
「え、そうなんですか」
ノアの発言にカリンが驚く。
「昔から人気あったよね、あ、そっか。寄ってくる人はいたけどってやつ?」
ラウルが聞くとノアが苦笑する。
「そうだねー。ザイアスは凄かったよ」
「お前もな。あとアメリアもなんか気に入られてたな」
「吸血鬼の女性にですか?」
「そうだねー。アメリアは結構ビックリしてたけど」
ノアもザイアスも楽しそうに話す。ラウルもカリンも興味津々な様子だった。
「そりゃそうだよ。普通、憧れの異性の近くにいる、仲のいい同性なんて嫌がらせされるよ」
「そうですよね。アメリアは美少女だから許されたのかもしれないですね」
ひとしきり笑ったあと、一旦静かになる。
「あの、ありがとうございました。なんかたくさん笑ったら元気が出てきました」
「またなんかあったらおいで、あと一月くらいだけど」
ラウルが優しく声をかけるとカリンは再度お礼を伝える。
このあとも昨日と同じように朝方まで飲み続けていた。




