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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
劇団編
52/91

8 女子会

公演まで一ヶ月を切った。元々有名なマチルダの最後の主演の劇と言うこともあり、世間の注目度も高く、イベントの出演やインタビューなどの仕事もアメリアとラウルもこなしていた。

二人は一般人と言うこともあり、マチルダは最小限に抑えてくれているようだが、断れないものもいくつかあるようだ。


この日もアメリアは午後からマチルダとカリンと三人でインタビューを受け、ラウルは稽古をしていた。


「アメリア、明日稽古後にご飯食べに行かない?」


「うん、いいよ」


インタビューを受けたあとにカリンから声がかかる。二人は年が近いため、仲良くなっていた。

この日はこれで予定は終わり、稽古を受けていたラウルと共に家へと帰る。


アメリアは明日の夕食が不要な旨をノアに伝えると、帰りに迎えに来てくれることになった。



明日になり再びラウルとアメリアは劇場へと向かう。この日は二人とも一日中稽古だった。劇をはじめから最後まで一通り行う稽古であり、終わったあとで余った時間で、一部抜き出して稽古が行われていた。


「今日はこれで終わり!二日休みでそのあとは、ハードスケジュールだから、みんなで頑張ろう!」


マチルダが声を張り上げた。同時にスケジュールも配られる。個別にスケジュールが組まれているが今まで以上に休みも少なく、夜も遅いこともあるようだった。


「アメリア、おまたせ」


アメリアとラウルがが支度をしているとカリンから声をかけられる。行く予定のお店の名前をラウルにからノアに伝えてもらう。


カリンに連れられて入店したのは、劇場の通りにあるおしゃれなレストランだった。予約をしているようですぐに案内をされる。コース料理をすでに注文していたようで、飲み物と前菜がすぐに運ばれてきた。


「エリーさんから他国の旅行者って聞いたけど、アメリアは劇が終わったら、この国を出るの?」


「うん、その予定だよ」


「そっか、今日誘っておいてよかった。これからすごく忙しくなるから」


次にスープと肉の煮込みが届く。アメリアとカリンとラウルは昼休憩も一緒にとるくらい仲が良く、アメリアの食の好みもある程度把握している。


「あのさ、変なことを聞くんだけど、ラウルと付き合ってるの?」


「ううん、ラウルは友達の幼馴染だよ。一緒に旅をしてるけど、まだ知り合ってそんなに長くない」


「そっか。付き合っている人はいるの?好きな人とか」


「いないよ、恋愛って言う意味だと好きな人もいない」


カリンは驚く。


「アメリアモテそうなのに」


「そんなことないよ、告白されたこともあまりないし。カリンは?」


「私好きな人がいるんだけど、色々と気がかりなことが多くて少し悩んでるんだよね」


「大丈夫?」


「うん、ごめんね、つまらない話して」


カリンはこれ以上は話さなかったため、アメリアも追求することはしなかった。


メインのステーキも食べながら談笑をする。デザートも食べ終わり席をたった。会計も済ませ、お店を出る。


「アメリア、このあと予定ある?」


何かに少し悩みながらカリンが聞く。


「一緒に住んでる人が迎えに来る予定で……」


アメリアが答えようとすると、男性二人が視界にはいった。


「ねえ、お姉さんたち。一緒にこのあと飲まない?」


「予定があるので……」


カリンが断るが男性は引かなかった。


「ないでしょ。さっき聞こえたよ。少しだけだからさ」


カリンが再度断るが諦めが悪いようで、男たちは引かない。カリンがかばうようにアメリアはカリンの後ろに居たが、アメリアは前に出る。


「このあと友人と合流するので、お断りします」


強くアメリアが言うが男は怯まない。通行人も揉め事を避けるように早足で去っていく。


「お姉さん、以外と気が強いんだね。いいよ。友達も一緒で」


「嫌です」


アメリアが拒絶すると、男はアメリアの肩をつかむ。すると、アメリアはバランスを崩し転んでしまった。さすがの通行人も警備員を呼んだ方がいいのではとざわめき始める。


「もう行こう」


通行人も集まってきており、二人のうち一人の男は諦めるように諭すが、もう一人の男は意地を張るように諦めない。今度はアメリアの手を掴み無理やり立たせようとする。


「お兄さん、その子に何の用?」


捕まれたアメリアの手を引き離し、アメリアを庇うように前に立つのはノア。


「ちっ、男かよ」


男はさすがに諦めたのか足早に去っていった。


「遅くなってごめんね。大丈夫?

膝、血が出てるね、足は捻ってない?」


地面に座り込んでしまっているアメリアにあわせてしゃがむノア。少し困ったようにしてると、回りに人だかりができていた。


「あの、どこかの役者さんですか」


状況を読まずに声をかけられ、苦笑をする。


「アメリア抱えて走れますか?」


カリンがノアに声をかける。ノアが頷きアメリアを抱える。カリンとノアがものすごいスピードではしりだし、最初は周りにいた人も追いかけようとしたが、すぐに引き離した。


少し走ると劇場の近くでカリンは足を止め、建物の地下へと入っていく。どうやらお店があるようだ。


ドアを開けると初老の店主が一人でカウンターに佇んでいた。


「あれ、カリン。髪の毛が乱れてるけど」


「ちょっと走ったの。避難してもいい?」


「いつもの追っかけかい?」


「うん、あと怪我してる子がいるんだけど」


ドアの近くにノアと抱えられたアメリアがいることに気づく。


「アメリア歩ける?」


「うん」


「救急箱とってくるけど、劇団の医者に念のためみてもらった方がいいなら連れてくよ」


カリンに聞く店主。


「うん、一ヶ月後に公演があるからその方がいいかも。足をひねってるかもしれないから」


軽く消毒をしたあと、店主とアメリアが劇団に向かうことになり席をはずす。店主が簡単なお酒を作っておいてくれた。

残されたノアとカリンが飲み始める。


「はじめまして、アメリアの同居人のノアと言います。怪我はないですか?」


「アメリアと同じ劇に出る予定のカリンと言います。大丈夫です。助けていただいてありがとうございました。

あとあの、敬語じゃなくて大丈夫です。私の方が年下なんで。多分」


「わかったー。普通に話すね」


ノアは笑うとカリンも笑顔を返す。


「お店案内してくれてありがとう」


「いえ、囲まれると解放されるまでに時間がかかるのと、アメリア怪我してたから早く消毒しないとって思って」


「ありがとう」


「あの、アメリアと同居されてる方はみなさん吸血鬼なんですか」


ノアが吸血鬼だということがわかるということは、カリンも吸血鬼。真剣な表情でカリンが聞く。


「いや、今五人でいるけど、男三人だけだよー」


「初対面で失礼なことを聞いて申し訳ないのですけど、お友達なんですか」


申し訳なさそうに聞くカリン。ノアは少し驚いた表情をしつつも答える。


「そうだね、幼馴染だよ。全員ではないけどね

でもね、色々あるよ」


「私、幼馴染がいてその相手が吸血鬼でないんです。でも、その人のことを気づいたら好きになってたんです……。しかも自分が吸血鬼であることを言えてなくて。近くに吸血鬼の友達もいないし、どうなんだろうって思って」


カリンが言う。ノアは少し困ったように話す。


「俺から詳しくは言えないんだけど、明日はお休みだよね、このあと俺たちのところ来ない?ラウルともう一人もお休みだから飲もうって話してるんだけど」


「いいんですか」


ノアが頷いたところで、店主とアメリアが戻ってきた。


「大丈夫?アメリア」


「うん、少し擦りむいただけ。足首もなんともなかったよ。もし腫れてきたらまた来てって」


「よかった、ごめんね、怖い思いさせて」


アメリアの怪我が酷くなくカリンは安堵していた。


「ううん、私があそこで無闇にきつくいったからいけなかったんだと思う。こちらこそごめんなさい」


「店主さん、アメリアを連れていってくださってありがとうございます。お酒も美味しかったです」


ノアが店主に向けてお礼を伝え、そろそろお店をあとにすることにした。

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