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遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
劇団編
50/91

6 仲直り

ラウルがザイアスが待つ部屋にノックをした。ザイアスは返事をしてラウルは部屋へ入る。


「大丈夫か」


「少し冷静になったよ。アメリアには悪いことしちゃった。」


広い部屋に机と椅子がありそこにラウルは腰かける。


「両親とのシーンだけか?上手くできてなかったのは」


「うん。それだけなんかぎこちなかった。母親役の人に本当の両親だと思ってくれていいって言われてからどんどん酷くなってた。いい思い出がないとか事情があるのかもって冷静になって思った」


ザイアスは少し迷った表情を浮かべる。


「詳しいことは言えないが、アメリアにもそうなった事情がある。でも、事情があるからとアメリアを許してくれとは言うつもりはない。気になるなら本人に聞いてほしい」


「うん、アメリア戻ったら謝るね。俺が一方的に当たっちゃったから」


とりあえず、ザイアスと雑談をしながら待つことにした。



一方、迎えに行ったノアは、受付で事情を話し、アメリアたちがいる部屋へと案内される。


「ノア……」


「アメリア、大丈夫?」


「ごめんなさい、私が私たちをご両親と思ってなんて余計なことを言ったから」


ノアのことをアメリアの迎えだと思ったペトラは、ノアに向けて謝る。


「ペトラさんは悪くないです。上手くできなかった私が悪くて……。こんな時間まで一緒にいてくれて有難うございます」


ノアは会話を聞いて大体察したのか、ペトラとトーマスに話す。ノアもアメリアの事情は知っている。


「ご挨拶が遅くなって申し訳ありません。ラウルとアメリアと一緒に暮らしているノアと申します」


「マチルダがイケメンっていってたけど本当ね。想像以上だわ」


ノアは苦笑しながら続ける。


「こんなに遅くまでアメリアと一緒に居ていただけて有難うございます。アメリアは俺が連れて帰ります。お二人もお送りいたしましょうか」


「いや、大丈夫だよ」


トーマスが答える。一同は荷物をまとめて帰る用意をする。荷物をまとめながらペトラが聞く。


「アメリア、大切な人はいる?」


「今一緒に旅をしてる人は、私にとって大切な人たちです」


「両親とのシーンはその人たちを思い浮かべてみると良いかも。兄とのシーンは誰かを重ねているでしょう」


「有難うございます、明日からまた頑張ります。今日はご迷惑をおかけしてごめんなさい」


ペトラとトーマスに頭を深く下げるが、二人は気にしていないからそんなに謝らないでくれと戸惑っていた。


四人は劇場を出て帰路に着く。トーマスとペトラは逆方面とのことで、アメリアとノアは二人になる。



「ごめんなさい、わざわざ迎えに来てもらって」


「気にしないでー」


「ラウルに謝りに行きたいけど、どう謝れば良いのか分からない。私が今何をいってももっと嫌な思いをするかも」


両親を亡くして辛さを知っているラウルと、なにも覚えておらず辛さが分からないアメリアはある意味対局の存在だった。


「マリッサに話を聞いてもらうと良いよ、ラウルのことを俺たちより知ってるからー。ごめんね、良いアドバイスができなくて」


「ううん、ありがとう」


家について、アメリアはマリッサを探すが、三人とも部屋にいるようでダイニングには誰もいなかった。マリッサがいる部屋へと向かう。


「アメリア?」


思い詰めた表情のアメリアに対し、マリッサはなにかがあったことを察する。


先程あったことを一通り話すアメリア。そして、少し考えていたことも加えて話す。


「あのね、私は両親はいないけど一緒にいるみんなはとっても大切なの。

考えたくはないけどみんなのうちの誰かが亡くなったら、その事を思い出したくないと思った。それなのにラウルに同じことしちゃった」


「ラウルは事情を話せばわかってくれるよ」


「事情があっても傷つけた事実は変わらないと思う」


アメリアの言うことも間違っていない。


「私もね両親をシエラトエラ戦役で亡くしているけど、もしラウルの立場でもアメリアに怒らないよ。悪くないって思えるよ。アメリアは傷つけようとしてやった訳じゃないってわかるよ」


マリッサはアメリアに伝える。アメリアはマリッサの両親もシエラトエラ戦役で亡くなっていることを初めて知った。なにも言うことはできない様子だった。


「もしかしたらザイアスとかから、事情を知って謝りに来るかもね、ラウルが」


マリッサは笑う。


「私から先に伝えたいから行ってくる」


アメリアが部屋を出ようとすると、ノックの音がした。アメリアが出るとラウルだった。マリッサが自身が思った通りだと笑っている。



ラウルとアメリアは、ラウルの部屋へと移動して話すことになった。ラウルは椅子に座るようアメリアに勧め、自身はベッドに座る。


「ごめんなさい、ラウル。

思い出したくないこと思い出させて」


「いや、俺が大人気なかっただけだから。俺こそごめんね」


アメリアは否定するように首をふる。


「私は両親のことを覚えてないけれど、大切な人がもしいなくなっていたらそのことを思い出したくないなって思う」


「アメリア、ご両親のこと知らないの?

答えたくなかったら答えなくていいよ」


「事故で母が亡くなって、父は行方不明ってきいているよ。私もいたらしいんだけど事故の衝撃で、両親の顔もその前のこともなにも覚えていないの」


「記憶がないの?」


アメリアは頷き肯定した。


「……だからペトラさんが、自分達を両親だと思ってって言ってからどんどん酷くなってたんだ。

家族って言う存在がどういうものか分からなかったから」


ラウルは話を聞いて納得した。


「改めて、ごめんね」


「ううん、どんな事情があっても傷つけたことは事実だから。私、ラウルの事情を知ってたのに……」


「あのね、俺はアメリアのこと辛い思いをあまりしたことがないタイプだと思っていた。

ザイアスとノアは家の事情で色々自分の思うようにいかないことも多いだろうし、マリッサも両親を亡くしている」


ラウルはぽつぽつと話始めた。


「対してアメリアはいつもザイアスとノアに守られて、アメリアが嫌な思いをしないようにとか、なるべくアメリアの意向を汲むようにしているから、辛い思いをしたことなんてないと思ってた」


一呼吸をおき、ラウルは続ける。


「ごめんね、当たっちゃって。アメリアはなにも悪くないよ。もしそういう事情がなくても悪くないよ。俺がただ嫉妬みたいなことをして、当たっただけだから」


アメリアはふるふると首をふる。


「あのね、私は両親はいないけど一緒にいるみんなはとっても大切で、考えたくもないけどみんなのうちの誰かがいなくなったら、その事を思い出したくないと思ったの」


「例えば、その状況になってしまったとして、俺が思い出させることをしたら俺に怒ったり許さないとか思ったりする?」


アメリアは首をふる。


「ううん、ラウルのせいじゃない」


「そういうこと」


ラウルはいつもの無表情を崩して笑う。アメリアもはっと気付いたようで笑っている。


「あとね、俺も父上は行方不明なんだ。シエラトエラ戦役で亡くなったのは母上だけ。父上は一緒にいなかったから巻き込まれていない」


「だから旅に行きたいってザイアスに言ったの?」


行方不明の父親を探すため、アメリアは直感でそう思った。


「察しがいいね、そうだよ。ザイアスとノアは多分貴族の事情に詳しいから察していて、マリッサも勘づいてると思う」


「私も同じだから。両親のことを覚えていなくて、親戚とかもいなくて家族とかよく分からないの。だから世界中を回ればなにかわかるかもって思って。幸い私の髪の毛の色は珍しいから、気づいてくれるかもって。顔もわからないから他力本願気味だけど」


もうぎすぎすした雰囲気はなく、穏やかに会話をする。


「そっか、一緒だね」


アメリアが座っている椅子の前でしゃがむラウルはアメリアの頭を撫でる。


「うん、一緒に見つけよう」


アメリアは笑顔でラウルの目を見てきちんと伝える。ラウルは穏やかな笑顔を見せた。


既にノアとザイアス、マリッサが夜ご飯の支度をしてくれているようで、アメリアとラウルもダイニングへと向かった。


ご飯を食べ終わるとエリーが訪ねてきた。ラウルとアメリアが対応した。


「明日はお休みしてくださいとのことです。予定では第二部の読みあわせでしたが、カリンさんが体調不良で予定を変更しました」


「わかりました、ありがとうございます」


「お二人もゆっくり休んでください」


エリーが帰っていき、明日は全員休みとなったため、五人はダイニングで飲むことにした。


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