表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
劇団編
49/91

5 台本の読み合わせ

ラウルとアメリアが劇団のメンバと顔合わせをした日から一ヶ月が経った。この日から本格的に稽古が始まり、この日は一部に出演する全員が集まって台本の読みあわせをすることになっていた。


すでに両親が経営する劇団のマネージャをやっている兄と学園を卒業したばかりで劇団の運営を補佐しているマチルダの様子から始まる。

マチルダの父は劇団の運営を行っているが、母は劇団一の役者でマチルダにも役者になるよう勧めるがなかなかその道にはいこうと思えない葛藤が描かれる。

その後、大雨の日に公演があり、両親とマチルダの帰宅中に土砂崩れに巻き込まれ両親が亡くなり、マチルダが病院で目を覚ますまでが第一部である。


『兄さん、今日も帰りは遅いの?』


『ああ、今日から公演だから』


『そっか、気を付けてね』


『マチルダも父さんの手伝いか?』


『うん、追加公演を予定していて忙しいみたいだから』


ラウルとアメリアが台詞を言う。そこで一旦ストップがかかる。


「いいね、ふたりとも。はじめてとは思えないくらい上手だね」


マチルダが誉めてくれて、少し照れる二人。稽古を始めたときと比べ声量や滑舌も格段によくなっていた。休憩後、読みあわせは再開する。既に一部の終盤となっていた。


『今日もお客さんが喜んでくれたわ』


『そうだな』


『明日も頑張らないと』


『え……』


『マチルダ!』


『お父さん!お母さん!』



『お父さんとお母さんは!』


『……亡くなったよ』


『なんで……!』


『……』


『何で私じゃなかったの、私が死ねばよかったのに』


『そんなことを言うな、マチルダ』


『お兄ちゃんだって、みんなだって思ってる!スターなお母さんじゃなくて私が死ねばよかったって!

いつもあんなに楽しそうに舞台に出て、あんなに人を魅了してたのに……こんな急に亡くなるなんて』


『マチルダ、俺はお前だけでも生きててよかったって心から思ってるよ』


一部の読みあわせが一通り終了する。


「みんな凄く良かったよ。私が想定した通りだ。ただひとつ要望がある。アメリア、両親とのシーンだけど、もう少し自然にできない?」


「ごめんなさい」


「トーマスさんと私を本当の両親だと思ってくれていいわ」


母役のペトラが助言をくれた。もう一度両親とのシーンを読み合わせるが、最初よりさらにぎこちなくなってしまった。


「緊張してるのかな」


父役のトーマスがアメリアを心配してくれた。もう夕方頃になりこの日は解散となった。ペトラの提案で、兄役のラウルと父役のトーマス、母役のペトラのみ残って練習をするが、アメリアのぎこちなさは消えない。



「いい加減、真面目にやって」


五回目を終えたところで、部屋に低く冷たい声が響いた。声を発したのはラウルだった。


「こういう両親とのシーンは演劇だとしても堪えるんだ」


とだけ言い残し部屋を出てしまった。

ラウルにはなにも言えなかった。


ラウルが出ていってしまい残された三人。


「ごめんなさい」


「いいのよ、貴女あまりご両親と過ごしてこなかったの?あ、答えたくなければ答えなくて良いわ」


落ち込んで今にも泣きそうな様子で俯いているアメリアにペトラが声をかける。ペトラの問いに対して頷くアメリア。


「事故で母は亡くなり、父は行方不明と聞いています。事故の衝撃で記憶がなくなって、私は両親の顔も一緒に過ごした日々も覚えていません」


アメリアの返答にペトラもトーマスもかける言葉が見つからず、部屋は静寂に包まれた。


「ごめんなさい、両親とはどういうものかすら分からなかったのね」


「いえ、こちらこそこんな時間まで付き合わせてしまってごめんなさい」


練習は一旦中断することにして、アメリアが落ち着くまでペトラとトーマスは待つことにした。



一方ラウルは家に着いた。アメリアが不在だが、なにも言わないことに対して怪訝に思うザイアスとノア。マリッサは部屋で明日のアルバイトの準備をしていてその場にいなかった。


「アメリアはー?」


「あとでザイアスかノア、迎えにいってくれる?」


「それは良いが、なにがあった」


いつもアメリアと一緒に帰ってくるか、アメリアが遅い場合は伝えに一度家に戻ってきてから再度迎えにいくラウルに対して違和感を覚えたザイアス。

それに加え心なしかラウルの顔色が悪い。


「アメリアが両親とのシーンが上手くできなくて、何度も同じところをやって、ちょっと色々思い出して当たっちゃった。少し落ち着いてくる」


「少し話できるか?」


「……着替えたらザイアスの部屋にいくよ」


少し迷ってから答え、ラウルは自室へと向かった。その間ノアがアメリアを迎えにいくことになった。ザイアスもラウルを待つために自室へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ