表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥かなる旅路で  作者: 星野すばる
劇団編
47/91

3 はじめての料理

ラウルとアメリアが家に戻ると、ザイアスが心なしか暗い表情をしていた。


「どうしたの」


「ちょっとねー、料理失敗しちゃって」


ザイアスの代わりにノアが答えた。ザイアスが立っている正面には濁った色のスープがあった。ラウルはスープをみて察する。


「ザイアスは今までキッチンに立ったことあるの?」


「入れてもらったこともない」


珍しく拗ねたように答える。主人は台所には立たない。ザイアスはまだ家を継いでいる訳では無いが、貴族はそう育てられている。


「偉いね。アルバイトして自分で稼ごうとしたり料理を作ろうとしたり」


「他の四人は普通にやってるんだ、誉められたことじゃない」


「いやさ、自分の当たり前を変えるのって大変だよ。それこそ大きな変化がないと」


ザイアスとラウルが話していると、アメリアがスープをよそい飲んでいた。気付いたザイアスが止めるが時はすでに遅かった。


「これおいしいよ。具材が焦げて色が濁っただけだよ。ありがとう、ザイアス」


アメリアが満面の笑顔でザイアスに伝える。ザイアスはアメリアをわしゃわしゃと撫でる。ラウルと近くで片付けをしていたノアも便乗して撫でていた。


部屋からマリッサが出て来て、その異様な光景をみて驚いている。


「え、なにがあったの」


一部始終を見ていたノアが教える。


「え、ザイアス料理したの?今度一緒に作ろうよ」


「助かる」


ノアがソーセージを焼いて、パンとスープを夕食として五人は食べた。



次になり昨日と同じ時間に劇場へと向かった。エリーに応接室へと案内される。明日から午前中は研修生と基礎稽古をして、午後は個人レッスン。あとは自由にしていてよいと言われ、スケジュールを渡される。


個人練習をする際も部屋を予約することになっており自由に使えるとのことだった。


この日は自由にして良いと言われたため、二人は部屋を借りて台本を読むことにした。劇は三部に別れており、この日は一部を読んで帰ることにした。


「目の前で亡くなったんだ……ご両親」


台本を読み終えたラウルが呟く。アメリアは読み終わったようだが黙ったままである。


「アメリア?」


「あ、ごめん。読み終わったよ」


「どうしたの」


「……私、演じられるのかなって思って」


「俺も自信ないけど、最初から上手くはいかないよ、一緒に明日からたくさん練習しよう」


実はサーカス団の時にたまに劇とサーカス芸を融合した公演を行ったことがあるラウル。アメリアより少し経験はある。


「うん、ありがとう」


この日は台本を読むだけで帰ることにした。


「一部を読むだけでももう夕方だね」


「そうだね、今日夜ご飯作ってくれるっていってだけど楽しみ」


アメリアは笑顔で言う。話をしていると家に着いた。家にはいるとトマトと思われる良い匂いが漂っていた。


「おかえりー」


「ただいま、ノア。いい匂いだね」


「ザイアスとマリッサがねー、ご飯作ってくれたんだよ」


出迎えてくれたノアと一緒にラウルとアメリアは玄関からキッチンに移動した。ちょうどザイアスがスープを煮込みながら適度にかき混ぜているところだった。玄関まで漂っていたのはスープの匂いだった。


「二人ともおかえり」


「ただいま、それはトマトスープ?」


「グラーシュって名前らしい。今日買い物に行ったら店員さんが教えてくれた」


「もうすぐで完成だからもう少し待っててね」


マリッサが教えてくれて、ラウルとアメリアはダイニングで待つように伝えられた。ほどなくしてノアが料理を運び全員がテーブルに着いた。マチルダからもらったソーセージとパン、ザイアスが作ったスープがテーブルに並ぶ。そして一同は食べ始めた。


「そういえば三人ともアルバイト決まったんだよー」


「みんな同じところ?」


ラウルが尋ねる。


「いや、ノアはカフェでマリッサがレストラン、俺が劇場の案内係」


「ノアもアルバイトするの?」


ザイアスの返答に対して質問をするのはアメリア。


「そうだよー。絵を描きながら空き時間にだけどねー。だから二人よりは働く時間は短いよー」


「劇場って俺らと同じ?」


今度はラウルが聞く。


「いや、別の劇場。ちょうど買い物の最中に声をかけられてそのままとんとん拍子に話が進んだ」


「ザイアス格好いいからねー、最初は是非役者にっていわれてたんだよ」


一行は夕食を食べながら話に花を咲かせる。


「このスープおいしいね。ありがとう。マリッサ、ザイアス」


アメリアは二人に笑顔を向ける。ラウルも同意のようで頷いていた。


食事が終わり、マリッサとザイアスが食器を洗う。ザイアスは食器もあまり洗ったことがなかったようで、進んで片付けを行っている。


「マリッサ、ありがとう」


「なにが?」


心当たりがないようで首をかしげるマリッサ。


「料理、教えてくれて。自分が作ったものがみんなにあんなに喜んでもらえて嬉しかった」


「また一緒に作ろうね」


「ありがとう」


片付けも終わり、二人はダイニングへ戻る。テーブルの片付けはノアがやっていたようだ。

ビールを飲みながら雑談をしてこの日は解散した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ